踵骨下脂肪体損傷のリハビリ治療

踵骨下脂肪体の概要

足底の痛みの原因|踵骨下脂肪体

  • 踵骨下脂肪体(heel pad)は踵骨足底面のクッション。歩・走・跳での衝撃吸収を担います。

  • **強い圧縮ストレス(オーバーユース/着地衝撃/急性打撲)**で微細損傷→炎症と踵部痛が発生。

  • 代表的な踵部痛である足底腱膜炎と症状が類似。正確な鑑別が治療成否を左右します。


足底腱膜炎との鑑別ポイント

踵骨下脂肪体損傷

  • 主訴:踵中央の圧痛、立位・歩行・着地での荷重時痛

  • 典型:足底腱膜の伸張(つま先立ち・母趾背屈)では痛みが増えにくい

  • 打撲歴・固い路面での長時間立位/ランが誘因になりやすい

足底腱膜炎

  • 主訴:内側踵骨棘付近の圧痛

  • 典型:朝の一歩目の強い痛み足趾背屈・つま先立ちで増悪

  • 下腿後面のタイトネス(腓腹筋・ヒラメ筋)を伴うことが多い

※実臨床では併存も少なくありません。圧痛点、発痛動作、既往(打撲/過長距離ラン)を組み合わせて判断。


評価(例)

  • 圧痛:踵中央〜やや外側寄りの軟部組織を縦横にピンチング→局所痛なら陽性。

  • 荷重テスト:片脚立ち/かかと着地の軽いスティッキングで痛み再現。

  • 足底腱膜負荷テスト(Windlass):母趾背屈で痛み誘発が乏しければ脂肪体優位。

  • 歩容観察:接地が強いヒールストライクCOP後方・外方偏位

  • 可動域:足関節背屈・外反の制限(屈筋支帯・下腿三頭筋・後脛骨筋・長腓骨筋のタイト)をチェック。


リハビリテーション戦略

1) 痛みの鎮静(急性〜亜急性)

  • 相対安静:ラン・跳躍・硬路面長時間立位は回避。

  • ヒールリフト/クッションパッド:踵を5–10mm挙上し、踵接地の圧縮を軽減

  • テーピング(ヒールパッド集約テープ)

    1. 母趾球外側(第5中足骨頭付近)から開始

    2. 踵後方を巻くように引き、

    3. 反対側前足部へ戻す(U字/X字を重ね脂肪体を中央へ寄せて下方に“盛る”
      → 立位で痛みが軽減すれば適合。

2) 再発予防(機能再建)

  • 可動域の是正

    • 背屈制限:腓腹筋・ヒラメ筋のストレッチ、距腿関節モビリゼーション

    • 外反制限屈筋支帯のリリース、腓骨筋群の滑走改善

  • 荷重線(COP)の修正

    • ヒールストライクを静かに接地時間を分散(足趾〜前足部の活用)

    • 軽い前傾+膝・股のクッションで踵一点集中を回避

  • シューズ選択

    • 踵部のクッション性・ヒールカップ保持が高いモデル

    • 磨耗で外側が削れる靴はCOP外方位を助長→早めに交換

  • 段階的復帰

    • ウォーク → ジョグ(ソフトサーフェス)→ 走距離・跳躍の10〜20%ずつ増量


ありがちな落とし穴

  • 痛いまま走り続ける(慢性化)

  • 前足部ばかり意識し過ぎて別部位を過負荷

  • 固いミニマルシューズでの長時間立位・移動

  • テーピングを痛みが減っても外さない(萎縮や依存につながる)


受診の目安

  • 休息とパッド・テーピングで2〜3週間改善しない

  • 安静時痛・夜間痛、広範な腫脹・発赤・熱感

  • 明らかな打撲直後からの歩行不能(骨折・骨挫傷の鑑別が必要)


よくある質問(Q&A)

Q. 朝の一歩目も痛いのですが、脂肪体ですか?
A. 朝の強い一歩目は足底腱膜炎の典型。併存も多いので圧痛点とテストで切り分け、両方を視野に治療します。

Q. 市販のヒールカップは効果ありますか?
A. 有用です。踵中央のクッション増脂肪体の保持に役立ちます。靴のヒール部の安定性も併せて確認を。

Q. 走るのはいつ再開できますか?
A. 無痛の歩行・片脚着地が可能→ソフト路面で短時間ジョグ距離と強度を漸増。痛みが出たら1段階戻すが原則。

Q. ふくらはぎのストレッチは必須?
A. 多くの例で背屈不足=踵過負荷に直結。腓腹筋・ヒラメ筋の伸張は高優先度です。


まとめ

  • 踵骨下脂肪体損傷は踵中央の荷重時痛が主。

  • 足底腱膜炎との鑑別を外さず、圧縮ストレスの軽減+可動域・COP修正で再発予防。

  • テーピング/パッド→ROM改善→動作最適化→段階的復帰の順で確実に。


最終更新:2025-10-05