脊柱側弯症の概要
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側弯は構築性(骨のねじれ・回旋を伴う恒常的変形)と機能性(筋・筋膜など機能原因で可逆的)に大別。
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構築性の約80%が特発性(原因不明)。女性優位、思春期発症が多数。側弯症は痩せ型で筋肉量が少ないヒトに多い。
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典型パターン:構築性は『胸椎右凸+腰椎左凸(S字)』。機能性は左右どちらかのC字が多い。
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進行の順序:矢状面(フラット化)→前額面(側屈)→水平面(回旋)。
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評価の要点:前屈で肋骨隆起(Adams前屈テスト)。成長スパート期は間隔を空けずに経過観察。
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治療の目的は「進行予防」(装具も手術も)。Cobb角や成長状況で方針を決定。
分類と疫学
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構築性側弯症:骨形状変化と回旋を伴い自動矯正困難。
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内訳:特発性≈80%、先天性(神経筋・脳性麻痺など)≈10%、後天性(骨折・脊髄損傷など)≈10%。
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機能性側弯症:姿勢・筋緊張・脚長差など機能的要因で生じ、矯正可能性あり。
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特発性(AIS):家族歴に注意。85%前後が女性、**思春期(小4〜中3)**で進行しやすい。
変形の順序
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矢状面のフラット化:腰椎屈曲優位→胸椎過伸展→全体の平坦化。(座位姿勢で顕著)
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前額面偏位:胸椎が右へ偏位しやすく胸椎右凸が生じることが多い。(心臓が左にあるため右に動くと覚える)
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水平面回旋:凸側への回旋(胸椎右凸なら右回旋)。通常のカップリングと異なる。
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簡易評価:前屈で凸側肋骨隆起(リブハンプ)を確認。腰椎側弯は胸椎の代償として現れやすい。
腰椎は代償的に側弯すると考えられており、最初に生じる胸椎の問題にアプローチすることが重要とされています。
矢状面の誘導:L2前弯をつくる
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目標は**脊椎S字(胸椎屈曲+腰椎前弯)**の再獲得。
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実践キュー:
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一般に「L3最前方」が“普通の良姿勢”とされるが、側弯ではL2を最前方に意識すると腰椎前弯が入りやすい。
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肋骨下部を軽く前方に押し出す意識でL2近傍の前弯を誘導。
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座位の日常指導:骨盤を前傾、腰はL2前弯を保つ。うつむく時は胸椎から屈曲する習慣へ。
多裂筋を核にした筋戦略
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下位腰椎では、脊柱起立筋群と比べ多裂筋の筋断面積比が大(腰椎安定化の主役)。
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どちら側を鍛える?
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腰椎は左凸(右側屈)が基本パターン。理屈では左(凸側)多裂を想起しがちだが、実際に脂肪変性しやすいのは凹側(多くは右)。
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脂肪変性は不可逆なので、若年期から凹側多裂の“使えない状態”を作らないことが重要。
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等尺性の例(右多裂を狙う):
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右股関節外転+腰椎を軽度左側屈=右腰多裂を等尺収縮。痛みのない範囲・呼吸同期で短時間反復。
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目的:L2近傍の前弯と、凹側の機能低下予防(将来の脂肪変性リスク低減)。
評価のポイント
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Adams前屈テスト:前屈で凸側肋骨隆起をチェック。
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回旋の逆カップリング:胸椎左側屈で右回旋(特発性)という“通常と逆”の回旋を把握。
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腰椎の側弯は代償位であることが多く、胸椎への介入が上流対策。
発症時期と経過観察
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AISの多くは思春期型。身長の伸び=進行リスク。
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二次性徴期(女児≈10歳〜/男児≈11.5歳〜)は特に要観察。
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症状が乏しく通院中断しがち。少なくとも数か月ごとにX線で経過確認を説明。
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**成長終了後(Risser 4–5相当)**は進行しにくいが、重度例は成人後も進行し得るため定期確認。
治療の考え方
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保存療法適応:概ねCobb角20–50°。
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装具療法(アンダーアーム/ミルウォーキー等)+運動療法。
- 装具で最も効果が高いとされるのはゲンシンゲン装具(シュロス式装具)
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装具は原則終日(体育・入浴以外)。骨端線閉鎖まで継続。
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手術適応:**Cobb角≳50°**で保存の効果が乏しい場合。
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ゴールは進行抑制(完全矯正ではない)。意思決定は年齢・骨成熟度・カーブ型・美容面・QOLを総合評価。
リハビリの視点
1) 呼吸パターンの修正(シュロス概念の要点)
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まず整えるべきはアライメント(変形を軽減できる姿勢を作る)。
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その姿勢から狙った胸郭方向へ深呼吸し、吸気でリブケージを拡げ、回旋ベクトルを矯正方向へ。
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呼吸ごとに矯正力を積み上げるイメージで反復。
2) 運動パターンの促通(胸椎屈曲)
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四つ這いで骨盤前傾→腰椎伸展を確保し、両手で床を押して胸椎屈曲を反復。
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座位でも骨盤前傾を意識し、うつむく動きは胸椎から。日常で**生理的弯曲(胸椎屈曲・腰椎伸展)**を再学習。
- 椅子を斜め右向きに配置、胸椎のみ左回旋で正面を見る=胸椎右回旋の軽減をねらう。
よくある質問(Q&A)
Q1. 姿勢体操だけで治りますか?
A. 機能性なら改善が期待できますが、構築性は進行抑制が主目的。装具や手術適応の見極めが重要です。
Q2. どのくらいの頻度で受診すべき?
A. 成長スパート期は数か月ごとのX線評価が目安。医師指示に従ってください。
Q3. 装具は何時間つけるの?
A. 原則終日(体育・入浴時を除く)。骨成熟が進むまで継続が基本です。
Q4. 痛みがないのに治療が必要?
A. 痛みは乏しいことが多いですが、変形は進行し得ます。定期経過観察と適切な介入は必要です。
Q5. スポーツはやっていい?
A. 多くは可。ただし装具装着の可否や種目・強度は主治医と相談。左右差を助長しにくい補強を併用。
Q6. 家族歴があると発症しやすい?
A. 家族性の関与が示唆されています。きょうだいも定期チェックを。
Q7. 成人後は進行しない?
A. 軽中等度は進みにくい一方、重度カーブは成人後も進行の可能性あり。定期確認を。
最終更新:2025-09-15














