構築性側弯症のリハビリ治療に関して説明していきます。
脊柱側弯症の概要
脊柱側弯症は大きく分けて、『構築性側弯症』と『機能性側弯症』(非構築性で一次的なもの)の2つに分けられます。
構築性側弯症とは、骨そのものの構造的な側弯を指し、脊椎の補正ができない捻れによる回復不能の側弯症を含んでいます。
機能性側弯症とは、筋・筋膜のインバランスなど機能的な問題による側弯を指しており、矯正がまだ可能な状態ともいえます。
構築性側弯症とは
構築性脊柱側弯症の割合は、原因不明の特発性が80%、先天性(神経筋疾患や脳性麻痺など)が10%、後天性(骨折や脊髄損傷)が10%です。
特発性は遺伝子の関与が疑われる側弯症(家族性)で、約85%が女性に起こり、その90%が思春期に発症します。(発生率は人口の2〜3%)
構築性側弯症のほとんどは『胸椎右凸・腰椎左凸』のS字曲線を描いています。それに対して機能性側弯症はC字曲線が多いです。
特発性は『痩せ型で筋肉量が少ない女性』に多く、家族性である場合が多いため、親族に側弯症がいないかの確認も必要となります。
変形の順序
構築性側弯症は、①矢状面(前後)、②前額面(左右)、③水平面(回旋)の順序で、下記のように進行していきます。
- 【矢状面】脊椎の生理的な弯曲がなくなる(フラット化)
- 【前額面】胸椎が右へ移動(左側屈)する
- 【水平面】胸椎が右回旋する(左側屈している場合)
まずは脊椎のフラット化ですが、腰椎屈曲のモビリティが高い場合は、座位にて腰から潰れるように屈曲します。
それを補うようにして胸椎は伸展位となり、結果的に脊椎がフラット化していくことになります。
胸椎がフラット化すると、胸椎が左右へ変位しやすくなり、心臓が左にあるためなのか多くの場合は右に移動します。(胸椎右凸)
最後に胸椎が右回旋しますが、これは正常の動き(カップリングモーション)とは反対になります。
通常では『胸椎が左側屈すると左回旋』しますが、構築性側弯症では右回旋しており、反対方向に捻れることが特徴です。(理由は不明)
構築性側弯症では腰椎左凸(右側屈)となりますが、腰椎は代償的に側弯すると考えられており、最初に生じる胸椎の問題にアプローチすることが重要とされています。
特発性側弯症の発症時期
特発性側彎症(dolescent Idiopathic Scoliosis:AIS)は発症時期により、①乳幼児型、②学童期型、③思春期型に分類されます。
種類 | 発症年齢 | 予後 | 備考 |
乳幼児型 | 0-3歳 | 良好 | 80%以上が自然治癒 |
学童期型 | 4-9歳 | 最も不良 | 80%以上は悪化していく |
思春期型 | 10-15歳 | 不良 | 50%前後が悪化していく |
特発性の90%は『思春期型』が占めることから、小学校4年生から中学校3年生までの間は注意深く観察しておく必要があります。
多くの場合は学校検診で指摘されて来院されるケースが多いので、痛みなどもなく、生活上の問題がありません。
そのために通院しなくなってしまうことも多いので、最低でも数ヶ月に1度はX線写真で経過をみるように説明することが大切です。
側弯の進行は『身長の成長』とともに進行するため、二次性徴(女児で10歳~、男児で11歳半~)の時期に進行する可能性が高くなります。
裏を返せば、成長が止まってからの進行はほとんど無いため、15〜16歳までが経過観察をすべき時期といえます。
ただし、重度の側弯症を発生している方に関しては、成人してからも進行する可能性があるので定期的な経過観察を要します。
特発性側弯症の治療
特発性側彎症は急激に進行していく可能性があるため、逐一、動向には注意を払いながら、変形の抑制、早期治療に配慮します。
一般的には、Cobb角が20-50度以内が保存療法の適応となります。
![]() |
保存療法では、ミルウォーキー型やアンダーアーム型などの装具療法および運動療法が適用となります。
ミルウォーキー型 | アンダーアーム型 |
![]() |
![]() |
引用元:株式会社協和義肢製作所
装具の着用は、体育や入浴以外の時間は就寝時も含めて24時間の着用が原則となります。
着用期間は、腸骨骨端線が閉鎖する20歳前後とされています。
Cobb角が50度以上の重度側彎に対しては、保存療法での改善はほとんど見込めないため、手術療法の適応となります。
治療の目的として、装具療法も手術療法も、第一は『側彎の進行予防』であることを理解しておく必要があります。
日本側彎症学会では、整体やカイロプラクティック、ヨガ、マッサージなどは、側彎角度の改善に関して医学的な根拠は無いとの立場をとっています。
また、理学療法などで多用されている筋力強化、運動療法、徒手矯正なども、側弯症の改善には関与しないとしています。
そのため、側弯症のリハビリを担当する場合は過度な目標を立てず、進行予防を目的として多角的にアプローチしていくことが求められます。
特発性側弯症の運動療法
まずは矢状面(脊椎のフラット化)に対して、生理的弯曲(胸椎屈曲・腰椎伸展)を引き出すアプローチを行います。
運動の方法としては、四つ這いにて骨盤を前傾させて腰椎伸展位に保持し、両手で床を押すようにして胸椎屈曲運動を反復します。
![]() |
四つ這いのポジショニングができるようになったら、次は対側の上下肢を挙上することで腰多裂筋を鍛えていきます。
![]() |
普段の姿勢を意識することも大切で、座位では腰椎屈曲位とならないように骨盤を前傾させたポジションをとります。
可能なら下を向くときは胸椎から屈曲させる意識を持つようにし、日常生活の中で生理的弯曲を引き出していきます。
![]() |
次いで前額面ですが、体幹の下方部(腰椎)からアプローチするのが原則であり、凸側(多くは左側)の下部脊柱起立筋を強化します。
方法としては、膝立ち位で左下肢を外側に伸ばして、少し下肢を浮かせるように意識することで左側の脊柱起立筋群を収縮させます。
![]() |
土台部の筋肉を強化することによって正中位への姿勢保持能力を促進し、不均衡を均衡へと転換していきます。
エクササイズでは、脊柱正中位を越えて大きく動かすことで、運動負荷を高めて筋肉を徹底的に鍛え上げます。
これにより、厚みのある強固な筋による枕(筋肉シリンダー)を作り出すことが可能となります。