この記事では、腰方形筋を治療するために必要な情報を掲載していきます。
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腰方形筋の概要
腰方形筋は腰椎の両側にある長方形の深層筋で、後面を広背筋、脊柱起立筋、内腹斜筋、腹横筋に覆われています。
骨盤から起始して腰椎の肋骨突起に停止しており、骨盤を介して股関節を上げることが出来るため、股関節挙筋とも呼ばれます。
また、第12肋骨にも停止部を持っていることから、努力呼気時に第12肋骨を固定する作用も担っています。
腸骨稜から前上方に走行しているため、両側が収縮することで腰椎の伸展、片側が収縮することで腰椎の側屈が起こります。
基本データ
項目 |
内容 |
支配神経 | 腰神経叢 |
髄節 | Th12-L3 |
起始 | 腸骨稜の内唇 |
停止 | 第12肋骨、L1-4(又は3)の肋骨突起 |
動作 | 腰椎の側屈、伸展、第12肋骨の下制 |
筋体積 | 25㎤ |
筋線維長 | 5.8㎝ |
筋連結 |
大腰筋、横隔膜、最長筋、腸肋筋 |
運動貢献度(順位)
貢献度 |
体幹伸展 |
体幹側屈 |
1位 | 脊柱起立筋 | 外腹斜筋 |
2位 | 腰方形筋 | 内腹斜筋 |
3位 | 半棘筋 | 腰方形筋 |
4位 | 多裂筋 | 脊柱起立筋 |
腰方形筋の触診方法
写真では、触診側の骨盤挙上運動を反復することにより、収縮する腰方形筋を筋腹で触知しています。
表層には内腹斜筋や腹横筋が覆っていますので、体幹の屈曲や回旋の動きが入らないように注意しながら深く押圧して実施してください。
トリガーポイントと関連痛領域
腰方形筋のトリガーポイントは停止付近に出現し、痛み(関連痛)は腰部から殿部にかけて放散します。
腰痛の原因として、腰方形筋のトリガーポイントは極めてよく見られるため、圧痛の有無については確認しておくことが必要です。
両側の腰方形筋の硬結が長期にわたって存在すると、痛みよりも腰椎の運動制限が目立つようになります。
それは結果的に殿部や大腿の筋肉の負担を増加させ、殿筋やハムストリングスにトリガーポイントが形成される原因となります。
アナトミートレイン①:DFL
腰方形筋はアナトミートレインの中で、DFL(ディープ・フロント・ライン)に繋がっています。
腰方形筋は両側が収縮することで腰椎の伸展に作用しますが、DFLに属することから身体の伸展系を制限する役割も担います。
アナトミートレイン②:LL
腰方形筋はアナトミートレインの中で、LL(ラテラル・ライン)にも強く関与しています。
腰方形筋は腹斜筋や腹横筋の深層に位置しているため、LLの腹筋群とは筋膜的に直接の接続はありません。
しかし、腰方形筋は純粋な体幹側屈に作用するため、DLL(ディープ・ラテラル・ライン)として非常に重要な役割を担います。
ストレッチ方法
四つ這いで片手を足首の方に伸ばします。
横腹あたりがしっかりと伸ばされているのを感じながら実施してください。
筋力トレーニング
片手にダンベルを持ち、持った側と反対側に上体を曲げます。
腰方形筋の収縮が入っていることを確認しながら実施することが大切です。
関連する疾患
- 筋・筋膜性腰痛症
- 骨盤の歪み
- 第11肋骨・12肋骨骨折
- 脳卒中後遺症 etc.
筋筋膜性腰痛症
腰方形筋はDFLに属していることから、身体の伸展系の動きを制御することに貢献しています。
そのため、腰痛患者で体幹伸展時に痛みが強いケースでは、しばしば腰方形筋の滑走障害が生じています。
腰方形筋が原因となる筋筋膜性腰痛は、第12肋骨付着部を中心としたストレッチングにて軽快する場合が多いです。
骨盤の歪み
腰方形筋は、歯科医師などのように斜め姿勢で作業をする職種や脊椎側弯症、脚長差などで問題を起こす場合が多いです。
長期間の不良姿勢は腰方形筋を短縮させてしまい、骨盤の高さが左右で違うといった姿勢変化をもたらします。
治療では硬結が生じやすい停止部付近(腸骨稜上)をほぐすことが有用です。