脊椎の構造と付着する筋肉について

脊椎(頸椎,胸椎,腰椎)の可動域および構造について解説していきます。

脊椎の構造

脊椎は、①頸椎(5)、②胸椎(12)、③腰椎(5)、④仙椎(5)、⑤尾椎(3-5)の五つ(32-34椎)より構成されています。

脊椎側面

脊椎は、矢状面においてS字状の弯曲を持っており、。これを生理的弯曲といいます。生理的彎曲は、さらに第1次弯曲と第2次弯曲に分けられます。

胎児の時期には、脊椎はC字状の弯曲(後弯のみ)であり、これが成人になってもそのまま残っている部分を第1次弯曲といいます。これには、胸椎後弯と仙骨部弯曲が含まれます。

第2次弯曲は、乳児から幼児の時期に形成されるS字弯曲の前弯部分です。これには、頸椎前弯と腰椎前弯が含まれます。

仙椎は30歳までに、尾椎は20歳代後半から骨癒合します。

脊椎が弯曲している理由

脊椎は弯曲することによって、真っ直ぐな状態に比べて10倍(弯曲数の2乗+1=3の2乗+1=10)あるとされています。

そのため、姿勢の変化によって弯曲の数が減少すると脊柱の強度は低下することになります。

一方、弯曲の度合いが強くなると脊椎にかかる剪断力が増加することになるため、痛みを増強させる原因になる場合があります。

生理的弯曲の角度

胸椎後弯角は第4胸椎下縁と第12胸椎下縁のなす角度で測定します。正常値は20-50度です。

腰椎前弯角は第12胸椎下縁と第1仙椎上縁のなす角度で測定します。正常値は46-60度です。

仙骨傾斜角は第1仙椎上縁と水平線のなす角度で測定します。正常値は25-45度です。

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脊椎の可動域を図解

1.脊椎屈伸

図で確認すると胸椎と腰椎は同じ程度の可動域にみえますが、実際は胸椎が12椎もあるのに腰椎は5椎しかありませんので、どれだけ動作が大きいか理解できるはずです。

反対に、胸椎は12椎もあるのに可動域が乏しいことがわかります。

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2.脊椎側屈

側屈は頸椎が最も大きな可動域を有していますが、C1-C2である環軸関節は側屈動作を行えないところがポイントです。

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3.脊椎回旋

回旋動作に関しては、腰椎が群を抜いて可動域が小さくなります。これは、捻り動作に対して腰椎が弱いことを意味しています。

また、頸椎は環軸関節が47度の可動域を有しており、頸椎回旋の実に50%以上を担っています。

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第1頸椎(環椎)の概要

頸椎(atlas)は脊椎の最上部にある椎骨で、後頭骨と環椎後頭関節を、軸椎と外側環軸関節および正中環軸関節を構成します。

環という漢字には輪の形といった意味があり、丸い円形の形を成しており、軸椎の歯突起が突き刺さるようにして環軸関節は形成されます。

環椎上面
上関節窩 【関節】環椎後頭関節
歯突起窩 【関節】正中環軸関節
下関節窩 【関節】外側環軸関節
前結節 【停止】最長筋上斜部(一部)
後結節 【起始】小後頭直筋
横突起 【起始】肩甲挙筋(一部),上頭斜筋(一部)
【停止】頚板状筋(一部),下頭斜筋
横突孔 【通過】椎骨動脈,椎骨静脈
椎骨動脈溝 【通過】椎骨動脈,後頭下神経
外側塊 【起始】前頭直筋
起始する筋肉
肩甲挙筋、前頭直筋、小後頭直筋、上頭斜筋
停止する筋肉
頸板状筋、下頭斜筋、最長筋上斜部

※赤文字の筋肉は起始・停止の一部のみを環椎にもつ

第2頸椎(軸椎)の概要

軸椎(axis)は頸椎の2番目にあり、環椎と環軸関節を、第3頸椎と椎間関節を構成します。環軸関節は全脊椎間の関節で最大の回旋可動域を誇ります。

軸椎側面
歯突起 【関節】正中環軸関節
上関節面 【関節】外側環軸関節
下関節面 【関節】椎間関節
横突起 【起始】肩甲挙筋(一部),中斜角筋(一部)
【停止】頚板状筋(一部),頚最長筋(一部)
起始する筋肉
肩甲挙筋、中斜角筋、大後頭直筋、下頭斜筋
停止する筋肉
頚最長筋、頚棘筋、頚板状筋、頚半棘筋、多裂筋、回旋筋、最長筋垂直部

※赤文字の筋肉は起始・停止の一部のみを軸椎にもつ

第3-7頸椎の概要

頸椎は7個の骨が前彎を示すように連結していますが、第1頸椎と第2頸椎のみは他の下位頸椎と形態がまったく異なります。

第3-7頸椎はほとんど同じ形状をしとり、上下の脊椎間にて椎間関節を構成しています。頸椎は胸椎や腰椎と比較してやや可動域が大きいのが特徴です。

第3頸椎以下は、前方の椎体と後方の椎弓から形成されます。下図は第7頸椎になります。

第7頸椎上面
椎体 【停止】頚長筋垂直部
前結節 【起始】前斜角筋(一部),頭長筋(一部),頚長筋上斜部
後結節 【起始】肩甲挙筋(一部),中斜角筋(一部)
【停止】頚腸肋筋(一部),頚最長筋(一部)
起始する筋肉
僧帽筋中部線維、小菱形筋、前斜角筋、中斜角筋、頭最長筋、頚棘筋、頭半棘筋、頭板状筋、多裂筋、回旋筋、最長筋垂直部
停止する筋肉
胸半棘筋、多裂筋、回旋筋

※赤文字の筋肉は起始・停止の一部のみを頸椎もつ

第1-12胸椎の概要

胸椎は基本的な椎骨の形状をなしていますが、棘突起が長いことが特徴です。下図は第7胸椎になります。

第7胸椎上面
肋骨窩 【関節】肋椎関節(肋骨頭関節)
横突肋骨窩 【関節】肋椎関節(肋横突関節)
起始する筋肉
頚最長筋、頚板状筋、頚半棘筋、胸半棘筋、大菱形筋、僧帽筋中部・下部線維、頚長筋、広背筋、小菱形筋、大腰筋、小腰筋、頭最長筋、頭半棘筋、頭板状筋、胸棘筋、頚棘筋、多裂筋、回旋筋、上後鋸筋、下後鋸筋
停止する筋肉
胸棘筋、胸最長筋内側、胸半棘筋、多裂筋、回旋筋

※赤文字の筋肉は起始・停止の一部のみを胸椎にもつ

第1-5腰椎の概要

腰椎は体重を支えるためにとても頑丈な構造をしています。その特徴は、下部にいくほどに増していきます。

しかしながら、最も障害を受けやすい部位であり、椎間板症や椎間関節障害、椎間板ヘルニアなどのあらゆる障害を引き起こします。

腰椎の横突起は肋骨突起と呼ばれ、肋骨が退化して腰椎に結合したものをいいます。腰椎下部は仙骨に連結します。下図は第5腰椎になります。

第5腰椎上面
肋骨突起 【特徴】胸椎では肋骨にあたる
【起始】大腰筋深頭(一部),回旋筋(一部)
【停止】胸最長筋(一部),腰方形筋(一部)
副突起 【起始】胸最長筋(一部)
【停止】胸最長筋内側
乳頭突起 【起始】多裂筋(一部)
起始する筋肉
広背筋、大腰筋、小腰筋、胸最長筋、胸棘筋、下後鋸筋、多裂筋、回旋筋、横隔膜腰椎部
停止する筋肉
胸最長筋、多裂筋、回旋筋、腰方形筋

※赤文字の筋肉は起始・停止の一部のみを腰椎にもつ

仙椎・尾椎の概要

仙椎は5椎ありますが、成年では骨化してひとつの骨(仙骨)になります。仙骨と第5腰椎は椎間関節を腰仙関節と呼びます。

また、仙骨は寛骨と仙腸関節を構成し、連結として骨盤を形成します。

尾椎は3-5椎ありますが、こちらも成年では骨化してしまっており、ひとつの骨(尾骨)となります。尾骨は仙骨と癒合しており、仙尾連結(仙尾関節)と呼びます。

1.前面から見た仙椎・尾椎
仙骨正面
2.後面から見た仙椎・尾椎
仙骨後面
上関節突起 【関節】腰仙関節
耳状面 【関節】仙腸関節
仙骨尖 【関節】仙尾関節
前仙骨孔 【通過】仙骨神経の前枝
【起始】梨状筋(一部)
尾骨 【停止】骨盤底筋群(一部)
後仙骨孔 【通過】仙骨神経の後枝
起始する筋肉
大殿筋、広背筋、梨状筋、胸最長筋、腰腸肋筋、多裂筋
停止する筋肉
骨盤底筋群

※赤文字の筋肉は起始・停止の一部のみを仙椎・尾椎にもつ


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The Author

中尾 浩之

中尾 浩之

1986年生まれの長崎県出身及び在住。理学療法士でブロガー。現在は整形外科クリニックで働いています。詳細はコチラ
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