TFCC損傷(三角線維軟骨複合体損傷)のリハビリ治療

TFCCとは?

三角線維軟骨複合体(TFCC)損傷のリハビリ

  • TFCC(triangular fibrocartilage complex:三角線維軟骨複合体)は、手関節の尺側で手根骨と尺骨を結び、衝撃吸収安定化を担う線維軟骨と靭帯の集合体。

  • 受傷場面:手関節の捻挫、テニスのフォアハンド・ゴルフ・重量物の把持、転倒時の手関節背屈強制など。

  • 見逃しやすい理由:単純X線では異常が出ないことが多く、尺屈や前腕回内外での尺側痛が持続するのが手掛かり。

構造と治癒性

  • 中心部:無血行、辺縁部:15–20%が血行あり。
    辺縁損傷は自然治癒期待中央損傷はデブリドマン(清掃)適応になりやすい。

  • 役割は膝半月板に類似(荷重分散・安定化)。

Palmer分類と治療の大枠

Class 1(外傷性・新鮮断裂)

  • 1A 中央裂孔:デブリドマン中心

  • 1B 尺側付着部:まず保存、必要なら修復

  • 1C 遠位(辺縁):保存が第一選択

  • 1D 橈側付着部:修復術 or デブリドマン

Class 2(変性断裂)

  • A–B:摩耗主体 → 保存

  • C–E:穿孔や周辺靭帯/月状骨変性を伴う → デブリドマン+必要に応じ修復

  • **尺骨突き上げ症候群(ulnar impaction)**が背景に多く、尺骨短縮術(関節外)が検討されることも。
    ※いずれもまず3か月程度の保存療法
    で経過をみてから手術適応を判断。

保存療法の実際(共通)

  • 安静・装具:短母指対立装具+手関節軽度背屈位での固定を短期使用。

  • 負荷コントロール:回内外・強い尺屈・体重負荷動作を回避。

  • 疼痛管理:アイシング短時間、必要に応じNSAIDs(医師指示)。

  • 徒手/運動:遠位橈尺関節(DRUJ)を乱さない疼痛可及範囲の掌背屈、手指腱滑走、前腕筋群の過緊張緩和。

  • 復帰基準の目安:安静時痛なし、掌背屈・把持の痛みなしでの日常負荷が可能。

手術後リハ(代表例)

デブリドマン後

  • 固定:6–8週(術式・所見で前後)

  • ROM:術後7日以降、無痛域で掌背屈から開始 → 痛みなければ軽い抵抗を段階追加。

  • 注意強い回内外は遅らせる。生活では腕の使用を極力抑える。

修復術後(例)

  • 術後~7日:スリング+冷却・挙上、手指屈伸のみ

  • 7日~2週:手関節ギプス固定、肘屈伸OK前腕回旋は不可、抜糸

  • 2~8週:脱着式装具で愛護的掌背屈/回旋は回避

  • 8~12週:必要に応じ装具除去、固定ピン除去(指示に従う)

  • 12週~全可動域を疼痛なしで拡大、ダンベル・チューブで前腕・把持筋を強化

  • 復帰:ROM・筋力の左右差が問題ないレベルで段階復帰(競技は医師と相談)

臨床でのコツ

  • 鑑別:尺側手根伸筋腱鞘炎(ECU)、月状三角靭帯損傷、尺骨突き上げ、DRUJ不安定性。

  • 誘発:尺屈・握り込み・回内外での痛み再現。尺屈+回旋負荷で症状が増悪しやすい。

  • 装具位置:軽度背屈・橈屈位で痛みが和らぎやすい例が多い。

  • 進め方:痛みが引くほど回内外と握力強化を遅らせる(再燃予防)。


よくある質問(Q&A)

Q1. レントゲンで「異常なし」と言われましたが?
A. TFCCはX線に写りにくく、MRIや関節鏡が診断に有用です。臨床症状と誘発動作で疑いを持つことが大切。

Q2. 保存で治りますか?
A. 辺縁損傷や軽症は保存で改善する例が多いです。中央穿孔や反復再燃はデブリドマン/修復の対象になりやすいです。

Q3. いつからスポーツ復帰できますか?
A. 目安は術後12週以降。ROM・筋力・痛みが基準を満たしたら段階的に。ラケット・クラブ系は回内外負荷に十分配慮。

Q4. 再発予防は?
A. 握力の段階負荷、前腕回内外のフォーム是正、グリップの太径化手関節の過尺屈を避ける道具設定が有効です。

Q5. 尺骨が長いと言われました
A. 尺骨突き上げが背景だと変性が進みやすく、尺骨短縮術を含む外科的選択肢が検討されます。まずは3か月の保存が一般的です。


最終更新:2025-10-05