要旨
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仙腸関節(SIJ)の安定には**形態拘束(フォームクロージャー)と力拘束(フォースクロージャー)**の両立が必須。
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形態拘束はニューテーション位で最大化、カウンターニューテーションが持続すると不安定化しやすい。
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力拘束はインナーユニット(多裂筋・腹横筋・骨盤底筋群・横隔膜)+**筋スリング(アウターユニット)**の協調で達成する。
1) 仙腸関節の形態拘束(フォームクロージャー)
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ニューテーション:仙骨前傾+腸骨後傾。SIJの締まりが増し、片脚立位や歩行での荷重伝達が安定。
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カウンターニューテーション:仙骨後傾+腸骨前傾。緩みが増え、後仙腸靱帯にストレス → 慢性化で疼痛源に。
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慢性の仙骨後傾位は片脚立位困難・トレンデレンブルグ傾向を招きやすい。
介入の要点
・ニューテーション方向への誘導(骨盤後傾過多・肋骨前突の是正)
・胸郭‐骨盤のアライメント再学習(過伸展や過屈曲の抑制)
2) 力拘束(フォースクロージャー)を担う筋
インナーユニット(深層・安定化)
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多裂筋:椎骨間のセグメント安定化。胸腰筋膜を介してSIJへ張力供給。
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腹横筋:腹圧上昇→胸腰筋膜張力↑→SIJ圧着。
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骨盤底筋群:腹圧の底面。
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横隔膜:呼吸に伴う圧制御の上面。
→ いずれかが低機能だとアウターユニットが代償過緊張になりやすい。
アウターユニット(筋スリング)
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後縦スリング:脊柱起立筋。
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多裂筋不全の代償で起立筋が過膨隆→疲労性腰痛。
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後斜スリング:広背筋 ↔ 胸腰筋膜 ↔ 大殿筋。
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腸腰筋短縮や大殿筋機能不全で広背筋・ハムが代償。SIJへの剪断増。
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前斜スリング:外腹斜筋 ↔ 内腹斜筋 ↔ 股関節内転筋群。
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過緊張で腹部・内腿の圧痛。腹横筋の底上げが前提。
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側面スリング:中殿筋・小殿筋 ↔ 腰方形筋 ↔ 内転筋群。
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機能低下で骨盤の左右傾き/トレンデレンブルグ歩行。
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3) 実践:評価と介入の流れ
評価(例)
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片脚立位保持・骨盤水平、Trendelenburg徴候。
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仙骨前後傾の終末感(ニューテーション誘導で安定感が出るか)。
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インナーユニットの呼気保持下ドローイン可否。
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スリングの圧痛/短縮(大殿筋起始、広背筋外側縁、内転筋、腰方形筋)。
介入(例)
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呼吸+腹圧
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口すぼめ呼気6–8秒で肋骨前突を抑制 → 腹横筋ドローイン10秒×10。
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仙骨ニューテーション誘導
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四つ這いで骨盤わずか前傾+下腹部軽緊張を保つロッキング。
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後斜スリング再学習
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ブリッジで殿主導(腰反らさない)→ 反対側上肢の下制/内転を加える。
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側面スリング強化
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サイドブリッジ・クラムシェル(骨盤前後傾のブレを許さない)。
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前斜スリング調整
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内転筋の軽伸張+外腹斜筋と協調するパロフプレス。
※疼痛急性期や神経症状がある場合は無理をせず医療判断を優先。
よくある質問(Q&A)
Q1. 仙腸関節は“入れる・戻す”操作が必要?
A:まずは姿勢・呼吸での圧支持とニューテーション方向の自己誘導で十分に安定化が図れます。徒手は補助的に。
Q2. 起立筋の張りが強いのですがストレッチで良い?
A:ストレッチ単独では戻ります。腹横筋・多裂の賦活→殿筋の主導化を同時に行うと張りが持続的に低下。
Q3. 片脚立位がフラつきます。最優先は?
A:中殿筋と大殿筋。サイドブリッジやクラムシェルに**呼気保持(腹圧)**を組み合わせましょう。
Q4. 改善までの目安は?
A:軽度なら2–4週で立位安定の自覚が出やすい。慢性・妊娠後・肥満合併は8週以上の再学習が必要なことも。
最終更新:2025-10-07





