内側広筋(vatus medialis)

内側広筋の概要

内側広筋の起始停止

内側広筋の起始停止2

  • 大腿四頭筋の内側成分。筋腹は最も遠位・低位に位置し、**膝関節の終末伸展(TKE)**で強く働く。

  • **共同腱部(垂直線維=VML)**と、膝蓋骨内側縁〜内側膝蓋支帯へ向かう斜走線維(VMO)に区分され、VMOが膝蓋骨の内方牽引・内側傾斜を担い外側偏位を抑制する。

  • 遅筋線維が相対的に多く(持久特性)、不活動(臥床・疼痛抑制)で萎縮しやすい

基本データ

項目 内容
支配神経 大腿神経
髄節 L2–4
起始 共同腱部(VML):大腿骨粗線内側唇
斜走線維(VMO)広筋内転筋腱板を介した大内転筋腱 など
停止 共同腱部:大腿四頭筋腱 → 膝蓋骨 → 膝蓋靱帯 → 脛骨粗面
斜走線維膝蓋骨内側縁/内側膝蓋支帯
栄養血管 大腿動脈
動作 膝伸展(とくに終末域)、膝蓋骨の内方安定(内方グライド・内傾)
筋体積 555 ㎤
筋線維長 7.7 ㎝
速筋:遅筋(%) 47.4:52.6

運動貢献度(目安)

膝伸展 1位 2位 3位 4位
総合 中間広筋 外側広筋 内側広筋 大腿直筋

終末伸展域では**VM(とくにVMO)**の寄与が重要。


触診のコツ

  • 体位:仰臥位または長座。**終末伸展運動(TKE)**を軽く誘導。

  • 触診膝蓋骨内上方〜内側厚み・膨隆を確認。外側広筋より線維角が小さく、収縮で膝蓋骨が内側へ引かれる感触。

  • 視診TKEで内側の膨らみが出にくい/左右差が大きい → 萎縮・促通低下を疑う。


大腿中央の断面図

大腿中央の断面図|内側広筋

  • 前区画(伸筋群)内で縫工筋と筋間中隔が内側境界。

  • この筋間中隔は滑走不全の温床になりやすく、内側膝痛の一因に。徒手リリース+滑走訓練が有効なことがある。


ストレッチ

  • 狙い:大腿四頭筋全体。VMOにわずかに内方テンションをかける配置がコツ。

  • 方法(例):側臥 or 立位・長座で

    1. 股関節:軽内旋+外転膝:屈曲(必要なら軽内旋)

    2. 踵を殿部外側へ引きながら体幹を後方へ(痛みのない範囲)

  • 注意腰椎過伸展膝蓋骨前面圧痛が出る角度は回避。


筋力トレーニング(まずは促通)

  • クワッドセット(タオル押し潰し)TKEでVMを等尺促通

  • SLR(膝伸展位):骨盤中立で滞空1–2秒

  • 短アークTKE(ミニボール/ロール下)終末域で数秒保持

  • VMOバイアス軽いヒールアウト・膝蓋骨内方誘導タップなどで内方トラッキングを意識

目的は**“筋力”より“点火”。痛み期は低負荷・高頻度**で“入る感覚”を優先。

トリガーポイント(TP)

  • 主訴:膝蓋骨内側〜膝前内側の鈍い痛み・階段下降時の膝前面痛・膝蓋の引っかかり感。

  • 誘因:スクワットや階段、立ち仕事での反復膝伸展、他の四頭筋との出力アンバランスや膝蓋骨の外側偏位を補おうとした過活動。


歩行時の筋活動(概略)

  • 遊脚終期(TSw)頃から立ち上がり、荷重応答(LR)で遠心に働き膝の折れ(膝折れ)を抑制

  • 外側広筋(外方トラッキング)と拮抗協調して膝蓋骨軌道を安定させる。


よくある場面・鑑別

膝折れ(giving way)

  • VMの促通低下/萎縮伸展制限拮抗筋(ハム・外側広筋)過緊張などで起こりやすい。

  • 高齢・肥満では転倒リスク↑TKE等尺+荷重位再学習を優先。

膝蓋骨不安定症・PFPS

  • 外側広筋・外側支帯のタイト+VMの弱化外上方偏位が典型。

  • VMO促通+外側組織の柔軟化+股外転/外旋筋の再教育トラッキングを正常化


Q&A

Q1:VMOって本当に別筋?
A:解剖学的連続構造の一部だが、線維角と停止が異なる機能的区分として扱うと臨床的に有用。

Q2:TKEで全然入らない
A:**痛み抑制(AMI)**の可能性。疼痛コントロール→電気・振動・タッピング→荷重位ミニスクワットで順に促通。

Q3:ニーイン・トゥーアウトを安定させたい
A:VMO促通に加え、**股外転・外旋筋(中殿筋・深層外旋群)**の協調を必ずセットで。

Q4:スクワットで膝前が痛い
A:深屈伸の角度・速度・つま先位置を調整。外側支帯の柔軟化VMOプレアクティベーションを入れてから実施。

Q5:ストレッチで膝前が突っ張る
A:膝蓋骨前面圧が強すぎ。**股関節位置(内旋・外転)**を微調整し、痛み手前で静的保持に変更。


最終更新:2025-10-07