股関節が痛む場所と原因について

要点サマリ

  • 股関節は臼蓋の前方被覆が浅いため、骨頭は前方へ不安定になりやすい。

  • 不安定性は「姿勢・配列」と「遠心性で張られ続ける筋」の組み合わせで痛みを生む。

  • 代表パターンは①伸展/外旋での前方不安定、②前捻増大に伴う内股+後方痛、③内転荷重(臼蓋形成不全)での側方痛


① 伸展・外旋での前方不安定(前方偏位)

  • 背景:臼蓋前方の被覆が浅く、**股関節伸展(+外旋)**で骨頭が前方へ滑りやすい。

  • 誘因姿勢

    • 骨盤後傾:相対的に股関節が伸展位になりやすい

    • 骨盤前方位(立位・歩行):これも相対的に股関節伸展を強める

  • 痛みの出かた:前方しわ部(鼠径部~ASIS内側)の張り・刺す痛み。

  • 関与筋:遠心性で張られ続ける股関節屈筋(腸腰筋、とくに大腿直筋は二関節筋のため攣縮しやすい)。

  • 対応

    • 伸展エンドレンジで止めない歩行/立位(一歩幅を少し狭く、後ろ脚を蹴り過ぎない)

    • 腸腰筋・大腿直筋のソフトリリースと等尺性活性(痛みない範囲)

    • 骨盤中間位の意識、腹圧(軽いブレーシング)で前方シフトを抑制


② 前捻角増大に伴う内股(内旋)+後方痛

  • 背景大腿骨前捻角が大きいと、安定化のために**内旋位(内股)**をとりやすい。

  • 力学:内旋位が続くと、外旋筋群が遠心性で張り続け後方の鈍痛/刺痛。

  • 要注意筋梨状筋(外旋+股関節屈曲位では外転補助)。内転位傾向の歩行で過緊張しやすい。

  • 対応

    • 立脚で骨盤の左右ブレ・内転位を減らす(歩幅をやや広げる/つま先正面

    • 深部外旋筋(外旋六筋)の低負荷トレ:クラムシェル(内転しない幅・反動なし)

    • 梨状筋は強いストレッチ一辺倒にしない(痛みの再燃に注意)。まずは荷重ライン修正と軽い収縮‐弛緩


③ 内転荷重(臼蓋形成不全)と側方痛

  • 背景:**臼蓋外上方が浅い(形成不全)**と、内転位荷重で骨頭が外上方へ逃げやすく不安定。

  • 所見トレンデレンブルグ徴候(立脚で対側骨盤が落ちる)→股関節は内転位に。

  • 痛みの出かた:大転子周囲~側方のうずき/荷重で増悪。進行すると変形性股関節症のリスク上昇。

  • 対応

    • 中殿筋・小殿筋の機能回復(側臥位ヒップアブダクション、立位でのウェイトシフト練習)

    • 歩行はステップ幅を掌一枚ぶん広く、膝は内へ折れ込まない

    • 早期は炎症コントロール優先(過負荷動作の一時制限、アイシング・荷重調整)


評価のヒント(現場で30秒)

  • 痛む方向:伸展終末で鼠径部→①前方不安定。内股歩きで後方殿部→②外旋筋過負荷。片脚立位で骨盤が落ち側方痛→③内転荷重。

  • セルフチェック:鏡の前でつま先正面・膝正面・骨盤水平を意識してスクワット5回。痛みが軽ければ配列改善が鍵


リハの組み立て(共通原則)

  1. 痛みを出す配列をやめる(伸展エンド/内転位/過度の内旋位を避ける)

  2. 遠心性で張られ続けた筋を落ち着かせる(局所の摩擦を避け、軽い持続圧・呼吸併用)

  3. 不足しているスタビリティを足す

    • 前方不安定:腹圧+殿筋群のタイミング

    • 内股傾向:深部外旋筋のコントロール

    • 内転荷重:中殿筋の支持性/骨盤水平保持

  4. 歩行・立位の再教育一歩幅・つま先方向・膝の向き


Q&A

Q1. ストレッチだけで良くなりますか?
A. 一時的な軽減はありますが、配列(荷重ライン)修正と筋の再教育を併用しないと再発しやすいです。

Q2. 痛みが強い時のNGは?
A. 終末伸展での強い蹴り出し、深い外旋ストレッチ、内転位での片脚荷重は悪化要因になりやすいです。

Q3. どの筋をまず鍛える?
A. 病型で異なりますが、迷ったら中殿筋の等尺性→立位での骨盤水平保持から。配列が整うと疼痛も下がりやすいです。

Q4. サポーターやテーピングは有効?
A. 短期の荷重ライン補助には有効。並行して歩容・筋機能の介入を進め、徐々に卒業を目指します。


最終更新:2025-10-08