胸最長筋(longissimus thoracis)

胸最長筋の概要

胸最長筋の起始停止

  • 脊柱起立筋群の最長筋列の胸部ユニット。脊柱のやや内側寄り(起立筋の中央列)を縦走し、胸椎の伸展同側側屈に強く関与。

  • 体幹後面では表層を広背筋・下後鋸筋などが覆うため、分層して触れるのがコツ。

基本データ

項目 内容
支配神経 脊髄神経の後枝
髄節 T1–L5(胸・腰髄の後枝による分節支配)
起始 仙骨背面・腸骨稜後部・腰椎棘突起/棘上靱帯・胸腰筋膜(浅頭)+**腰椎副突起(付属突起)**など(深頭)
停止 胸椎横突起第2–第12肋骨(肋骨角付近の縁)、一部胸腰筋膜深葉
栄養血管 後肋間動脈・腰動脈(背側枝)
動作 胸腰椎の伸展(両側)同側側屈(片側)、姿勢保持

触診のコツ

  1. 体位:伏臥位。肩と殿をリラックス。

  2. ランドマーク棘突起から指2–3本外側に縦の盛り上がり。起立筋の中で最も太く膨隆しやすいのが胸最長筋。

  3. 収縮テスト:被検者に軽い胸椎伸展または同側側屈を指示→内外2条の帯状に硬くなる(内側:最長筋,外側:腸肋筋)。

  4. 鑑別:さらに外側の縦走は腸肋筋、表層の斜走は広背筋


姿勢・クリニカルメモ

  • 胸椎後弯の増強(猫背)では胸最長筋が延長・出力低下に陥りやすい。

  • 後弯の減少(フラット背)では胸最長筋や脊柱伸筋群の過緊張が背景にあるケースが多い。

  • 介入は胸郭可動性(前額面・水平面)の改善+腹圧/呼吸の再教育と伸筋群の再学習をセットで。


ストレッチ

  • 座位前側方リーチ:椅子で足をやや開き、体幹を前屈+反対側へ側屈しながら両上肢を遠くへ伸ばす。20–30秒×2–3回。

  • 注意:腰から反らず、胸椎を丸める意識。痛みや放散症状があれば中止。

筋力トレーニング

  • 胸椎ミニエクステンション:座位で胸郭を“上に長く”→胸椎だけをわずかに伸展(腰の過伸展は避ける)。

  • ボールプレス伸展:座位で前方のボール/壁を前押しし、胸椎の伸展—肩甲帯下制を同時に作る。

  • バードドッグ:四つ這いで対側上肢・下肢挙上保持(抗側屈・抗回旋で最長筋列を賦活)。

トリガーポイント(TP)

  • 主訴:胸椎〜背部中央の鈍痛・こわばり、肩甲間部への横走性の張り感、深呼吸や伸びでのつっぱり。

  • 誘因:長時間の猫背座位・PC作業、前屈位からの繰り返しの起き上がり、重い物を胸前で持つ動作、背部の冷え。


よくある質問(Q&A)

Q1:起立筋どうし(腸肋筋・最長筋)の狙い分けは?
A:棘突起からの距離で判断。最長筋は内側寄り腸肋筋は外側。収縮テストで同側側屈を加えると差が出やすい。

Q2:デスクワークでの実用ケアは?
A:1時間ごとに胸椎の前額面運動(左右側屈)と胸郭回旋を小さく数回。座面を高めにして骨盤中間位+胸郭を高く

Q3:腰に痛みが出る…やって大丈夫?
A:痛みゼロ域の小可動域から。腰に痛みが出るなら胸椎主導の課題に限定し、殿筋群・腹圧の再教育を優先。

Q4:呼吸との合わせ方は?
A:伸展は吸気、ストレッチは呼気を基本に。肋椎関節の滑走がつき、胸最長筋の過緊張を抑えやすい。

Q5:広背筋と張りが混ざる
A:広背筋は上腕骨へ斜走。胸最長筋は肋骨・横突起に縦走肩の動きを止めて胸椎だけを動かすと鑑別しやすい。


最終更新:2025-10-07