腰腸肋筋(iliocostalis lumborum)

腰腸肋筋の概要

腰腸肋筋の起始停止

  • 脊柱起立筋群は腸肋筋・最長筋・棘筋の3列で構成(各列に腰/胸/頸などの区分)。腸肋筋は最外側列で、胸郭外側へ張る張力で体幹を支える。

  • 腰腸肋筋は腸骨稜・仙骨・胸腰筋膜から起こり、第6–12肋骨の肋骨角へ停止。

  • 作用:胸腰椎の伸展(両側)同側側屈(片側)。姿勢保持や荷重下での体幹スタビリティに寄与。

  • 座位では過活動になりやすく、胸椎の伸展不足や骨盤後傾を代償しがち。胸最長筋や深部伸筋群(多裂筋)との協調が重要。

基本データ

項目 内容
支配神経 脊髄神経の後枝
髄節 主に腰~下胸レベル(文献により広く表記される)
起始 腸骨稜外唇仙骨胸腰筋膜
停止 第6–12肋骨(後面/肋骨角付近)
栄養血管 肋間動脈、腰動脈
動作 胸腰椎伸展同側側屈(必要に応じ抗回旋の安定性にも関与)

注:腸腰筋は股関節屈曲・腰椎前弯の増強に寄与し、直接の「脊柱伸展筋」ではありません。座位姿勢の目標は腰椎中間位を保ち、腸腰筋・深部伸筋・最長筋がバランスよく活動することです。

触診のコツ

  • 被覆:表層は広背筋・下後鋸筋。これらは体幹伸展の主動作ではないため、自動伸展時に深層で縦に硬く盛り上がる帯が腰腸肋筋の目安。

  • ランドマーク上位腰椎レベルの脊柱起立筋最外側縁。うつ伏せで軽く体幹を反らしてもらうと、縦走する膨隆を触れやすい。

  • 鑑別:内側の胸最長筋は棘突起寄り、外側の皮膚直下で横方向に張るのは広背筋


ストレッチ

  • 仰向けに寝て、右腰を伸ばしたいときは、膝を左肩のほうへ運ぶ。右腰~下位肋骨の外側が伸びる角度を探して止める。20–30秒×2–3回。

  • 座位ラテラルフレックス+前屈:伸ばしたい側と反対側へ側屈しながら前屈を加える。痛みのない範囲で実施。


筋力トレーニング(選択的に)

  • スフィンクス~小可動域バックエクステンション:うつ伏せで胸椎から“長く”起こす意識。腰の過伸展や殿筋の代償に注意。

  • バードドッグ:四つ這いで対側上肢・下肢挙上保持抗側屈・抗回旋課題として外側列の協調に有効。

  • サイドベンド(軽負荷):同側側屈をゆっくりコントロール。痛みが出る角度は避ける。


トリガーポイント(TP)

  • 主訴:腰背部外側〜腸骨稜上に出る局所の鈍い痛み・張り、時に同側殿部や下位肋骨への放散。

  • 誘因:長時間の立位や前屈み作業、片側に体重をかけた姿勢、側屈を繰り返す家事・スポーツ。


クリニカルメモ

  • 猫背+骨盤後傾胸椎伸展不足では、腰腸肋筋が代償的に働きやすい。**胸椎可動化・股関節戦略(殿筋群)**の併用が有効。

  • 持続立位・前屈作業での疲労性疼痛は、ヒンジ(股関節)の使い分け訓練と呼吸—腹圧の再教育を。

  • 急性腰痛では痛みを増悪させない小可動域の等尺性から開始。


よくある質問(Q&A)

Q1:腰腸肋筋が硬いと腰痛になりますか?
A:一因になり得ます。特に多裂筋との滑走不全胸椎可動性低下の代償で過活動になると痛みを助長します。

Q2:座り方のポイントは?
A:骨盤を中間位に置き、胸郭を“上へ長く”。腰腸肋筋の持続的緊張に頼らず最長筋・多裂筋・腹圧で支える感覚を。

Q3:どの種目で鍛えればいい?
A:バードドッグ小可動域バックエクステンション。痛みがある場合は等尺性から始めて段階的に。

Q4:殿部に痛みが出るのはなぜ?
A:腰腸肋筋のTP関連痛殿部尾側へ放散する典型パターンがあるため。殿筋そのものの障害と鑑別を。

Q5:ストレッチで痛みが増える
A:角度を浅くし、呼気優位で実施。鋭い痛みやしびれが出る場合は中止して専門家へ。


最終更新:2025-10-07