腰部コンパートメント症候群の概要
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病態:脊柱起立筋・多裂筋などが**過緊張 → 筋内圧↑ → 血流↓**となり痛む状態。
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典型像:円背(胸椎後弯)がある高齢者に多く、前かがみ/長時間立位で悪化、反らすと軽快。
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圧痛:筋損傷のように一点の強い圧痛が出にくく、両側性で広がる痛みになりやすい。
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関連痛:上殿皮神経の絞扼で上殿部痛を伴うことがある(原因は殿部ではなく胸腰筋膜側)。
どう見分ける?(臨床的な手掛かり)
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悪化:前傾姿勢(洗面動作・荷物を持って前屈)、長時間立位。
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軽快:腰椎伸展位に戻す/ベッドで休むと速やかに軽くなる。
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触診:立位で脊柱起立筋が膨隆・板状の硬さ、押しても鋭い圧痛は乏しいことが多い。
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片側or両側:両側・びまん性に出やすい(筋損傷は片側限局が典型)。
赤旗(発熱、安静時・夜間痛、進行する神経脱落、外傷直後の激痛・腫脹など)があればまず医療機関へ。
合併:上殿皮神経障害
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機序:過緊張した起立筋が覆う胸腰筋膜を上殿皮神経が貫通→滑走不全/絞扼。
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所見:腸骨稜上の点状圧痛+上殿部への放散。
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対応:脊柱起立筋のリラクゼーションと腸骨稜周囲の軟部組織滑走改善が鍵(殿部だけ揉んでも抜けにくい)。
リハビリの戦略(3本柱)
1) こわばった筋・筋膜をゆるめる(即時軽減+再発予防のベース)
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徒手:脊柱起立筋/多裂筋に対する軽圧の持続圧・シアリリース、胸腰筋膜のスライド改善。
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自分でできるケア
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ポジショニング:背臥位で膝立て、**軽い後傾(骨盤ロッキング)**で起立筋の張力を下げる 30–60秒×数回。
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呼吸:口すぼめ呼気6–8秒×6呼吸(肋骨前突を抑え、起立筋の代償を減らす)。
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温熱:温罨法で血流促進(低温やけどに注意)。
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2) 装具の活用(活動中の過緊張を抑える)
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コルセット/軽量サポート:外出や立ち仕事時のみ一時的に使用し、依存は避ける。
→ 目的は姿勢保持の補助と筋内圧ピークの回避。
3) 形態(円背)への介入と運動再学習
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胸椎の可動性:胸椎伸展・回旋のモビライゼーション、壁スライド+プラス(前鋸筋/下部僧帽筋)。
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骨盤制御:ドローイン(腹横筋)+骨盤前後傾の小振幅コントロール。
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多裂筋の賦活:四つ這いでニュートラル脊位を保ちつつ対側上肢下肢挙上(各10回×2–3)。
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股関節戦略:ヒンジ(殿筋主導の前屈)再学習で「腰で曲げる」を減らす。
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日常アップデート:洗面は片足前出し+股関節ヒンジ、荷物は身体近くで持ち、長時間立位は1h毎にリセット。
典型的な処方例(目安)
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頻度:週1–2回の理学療法+毎日5–10分のホームケア。
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期分け
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初期(1–2週):痛み/筋内圧の軽減(徒手・ポジショニング・装具)。
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中期(3–6週):胸椎/骨盤コントロール+多裂・殿筋の協調。
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後期(>6週):立位耐性の漸増、仕事・家事動作への課題特異的練習。
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やりがちなNG
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強い前屈ストレッチの反復(内圧↑で増悪)。
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長時間の前かがみ作業を連続(休憩なし)。
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コルセット常用(筋抑制→依存)。
よくある質問(Q&A)
Q1. どのくらいで良くなりますか?
A. 個人差はありますが、1–2週間で張りの軽減、3–6週間で立位耐性の改善が目安。姿勢・動作の見直しと併走が前提です。
Q2. マッサージだけで治りますか?
A. 一時軽減はしやすいですが、胸椎可動性・骨盤制御・呼吸を組み合わせないと再燃しがちです。
Q3. 痛いときは反らして良い?
A. 反らすと楽になる型が多いですが、痛み0–3/10の範囲で短時間に。鋭痛や下肢放散が出る角度は避けます。
Q4. 装具はいつ外す?
A. 痛みが落ち着き、日常動作でニュートラル保持ができてきたら段階的に。屋内は外す→外出時のみ など。
Q5. 上殿部が一番痛いのですが?
A. **発生源は腰背部(胸腰筋膜)**であることが多いです。腸骨稜上の滑走改善+起立筋の緊張低下が必要です。
最終更新:2025-10-07

