膝関節の痛みの原因となりやすい膝蓋下脂肪体の治療方法について、わかりやすく解説していきます。
膝蓋下脂肪体の概要
膝蓋下脂肪体は膝蓋骨の下方に貯留している組織で、膝蓋大腿関節(膝蓋骨と大腿骨の間)の滑りを良くし、クッションとしての役割を持ちます。
膝蓋下脂肪体が損傷する原因としては、膝関節の変形や下肢のアライメントが崩れることで、脂肪体の滑りが悪くなることによる影響が大きいです。
具体的には、内反変形(O脚)や下腿外旋症候群(脛骨の過外旋)、膝蓋骨周囲組織の拘縮などがあります。
内反変形や下腿外旋になると膝関節外側のスペースが減り、膝蓋下脂肪体が内側に追い詰められ、それが滑りを阻害する原因となります。
膝蓋下脂肪体が膝痛の原因かを確認する
膝関節の痛みは内側に発生することが非常に多く、その理由として膝蓋下脂肪体が内側に偏移し、硬くなっていることが挙げられます。
膝蓋下脂肪体は大きい塊ですので、どの場所が損傷しているかを調べるためには、指で押して圧を加えながら確認していくことが大切です。
圧痛を確認するときの注意点としては、膝関節は必ず伸展位に保持しておくことが大切です。
理由としては、屈曲位では膝蓋下脂肪体は膝蓋骨の裏に流れ込んでしまうため、組織をしっかりと圧迫することができないためです。
圧痛検査は膝蓋骨の下方を押しながら確認していくとよいのですが、膝蓋骨の裏に入り込んでいる組織までは圧迫が難しいです。
そのため、私は膝蓋骨を下方に押し下げた状態から、皿の裏に母指を挿し込むようにして圧痛や硬結がないかを確認しています。
立ち上がるときに痛いのも膝蓋下脂肪体
椅子から立つときに膝が痛いと訴える患者は多いですが、それも膝蓋下脂肪体の滑走不全(摩擦による痛み)が影響していきます。
立ち上がるときは大腿四頭筋が収縮し、膝蓋骨を大腿骨に押さえつけて安定させるため、その影響で膝蓋下脂肪体への摩擦は強くなります。
そのために痛みが発生しやすいわけですが、脂肪体がガチガチに硬くなっている重症例では、他動的に屈伸させるだけでも痛みを訴えます。
膝蓋下脂肪体が原因の膝痛を治すためには、①膝蓋下脂肪体の柔軟性を向上する、②自由に動けるスペースを確保することの2つが必要です。
膝蓋下脂肪体の柔軟性を向上
硬くなっている組織を柔らかくする方法として、単純に膝蓋下脂肪体をダイレクトマッサージするだけでも効果はあります。
ただし、膝蓋骨の裏に入り込んでいる組織に関しては、指先で圧を加えることが難しいためにあまり効果が期待できません。
そういった深部の組織を柔らかくするためには、超音波治療器を使用することが個人的にはお勧めです。
具体的な設定としては、周波数1MHz、強度1.0W/cm2、照射時間率50%、照射時間10分間で実施することが多いです。
患者には仰向けをとってもらい、膝蓋骨を押し下げながら、確実に損傷しているポイントに照射できるようにすることが大切です。
自由に動けるスペースを確保する
膝蓋骨の動きを阻害する因子として、脂肪体が硬くなる以外にも、膝関節の変形や下肢アライメントの崩れ、周囲組織の拘縮などがあります。
個人的には、内反変形や下腿外旋を徒手的に矯正することは無理だと思ってるので、周囲組織に対して集中的にアプローチしています。
具体的には、膝蓋上包の柔軟性を確保してパテラセッティングを行うことと、膝蓋支帯を柔らかくすることに重点を置いています。
膝蓋上包とは膝関節を包んでいる膜の上側のことで、中間広筋の深層線維が分岐した膝関節筋が付着しています。
膝蓋上包が硬いと膝蓋骨の動きが悪くなり、結果的に膝蓋下脂肪体の滑りを悪くすることにつながります。
そのため、中間広筋を指でつまみ上げるようにして動きを引き出し、その後にパテラセッティングを行うことで滑走性を改善させます。
膝蓋支帯は膝蓋骨を囲んで安定させている組織で、内側を内側膝蓋支帯、外側を外側膝蓋支帯といいます。
外側膝蓋支帯は外側広筋と連結し、内側膝蓋支帯は内側広筋と連結し、それぞれが適度な緊張を保つことで膝蓋骨は安定しています。
しかし、内側広筋は萎縮しやすく、外側広筋との張力バランスが崩れることで膝蓋骨は外側上方に偏位しやすい傾向にあります。
それに伴って外側膝蓋支帯は硬くなっていくため、膝のお皿を内側に動かすようにしながら膝蓋骨の柔軟性を確保していくことが大切です。
膝蓋支帯以外にも膝蓋腱の硬さなども影響を与えるため、どの部分が硬くて動かしづらいか、痛みがあるかを確認しながら実施してください。