鎖骨骨折のリハビリ治療

鎖骨骨折の概要

鎖骨骨折

  • 発生:転倒で肩から落ちる・肩を強打する・手をついて転倒する、コンタクトスポーツなど。

  • 頻度:全年齢にみられ、若年者で多い骨折。

  • 転位パターン

    • 内側(中枢)骨片上後方へ(胸鎖乳突筋・僧帽筋の牽引)。

    • 外側(末梢)骨片下内方へ(上肢の重み+大胸筋等)。

  • 脆弱部:横断形状が丸→三角に移る中央1/3移行部(ここに約8割)。

鎖骨部の脆弱ポイント


解剖の要点(機能)

鎖骨

  • 連結:内側端=胸鎖関節、外側端=肩鎖関節。

  • 役割:上肢を体幹から“張り出し”させるスペーサー/筋付着の母床/血管・神経の保護/烏口鎖骨靱帯経由で肩甲骨支持。

  • 付着筋(抜粋):胸鎖乳突筋、僧帽筋、三角筋(鎖骨部)、大胸筋(鎖骨部)、鎖骨下筋。
    三角筋・大胸筋の収縮は転位・短縮を助長しやすい。


症状と所見

  • 疼痛・腫脹・変形、肩の挙上困難、皮膚テント状突出(皮膚壊死リスク)。

  • 神経血管評価:鎖骨下血管・腕神経叢の圧迫/損傷に留意(しびれ、脈拍低下、蒼白は要緊急)。


画像と分類(ざっくり)

  • X線:AP+15°頭側撮影で短縮・粉砕・転位を評価。

  • 分類:部位(外側端・中央1/3・内側端)と転位/短縮/粉砕で治療方針を決める。


治療方針

保存療法(第一選択になりやすい)

  • 適応:転位が小さい/短縮が軽度/皮膚・神経血管安全。

  • 固定三角巾8の字(鎖骨)バンドなど(快適性と皮膚トラブルを考慮し選択)。

  • 目安:若年で約6–8週、高齢では12–20週かけて骨癒合。

  • 注意過度の制限は拘縮の原因。痛みの範囲で早期から肘・手首・手指は可動

手術療法(プレート/髄内釘など)

  • 代表適応

    • 開放骨折/皮膚テントで皮膚壊死リスク

    • 神経血管合併

    • 高度転位・粉砕短縮≥2 cmが疑われる中枢1/3骨折

    • 浮遊肩(鎖骨+肩甲骨頸部)、ハイパフォーマンスアスリート など

  • 利点:整復保持が確実、早期機能回復が期待。

  • 留意:創合併症・プレート違和感・二次手術(抜釘)の可能性。


リハビリテーション(フェーズ別)

原則:**痛みと画像所見(仮骨形成)**に応じて段階的に。鎖骨回旋を大きく伴う動作(高挙上・水平内転)は初期に制限

フェーズ 期間の目安 目的 主要介入
安静期 0–4週 疼痛管理/二次障害予防 三角巾/鎖骨バンド、手・手関節・肘の可動頸部・胸郭の軽い可動、呼吸練習、周囲筋のやさしいリリース超音波など物療
可動期 4–8週 肩の可動回復(無痛域) 振り子運動、肩甲骨セット、肩屈曲・外転は**~90°まで**から、水平内転は回避、等尺性(痛みなし)
筋力回復期 8–12週以降(癒合進行後) 機能回復・再発予防 チューブ/ダンベルの低負荷で三角筋・僧帽筋下部・前鋸筋、姿勢/胸郭モビリティ日常動作拡大
競技復帰 12–16週以降 スポーツ特異性 プライオメトリクス、コンタクト前の段階的復帰基準(疼痛0・左右筋力/可動域の対称性・競技動作テスト合格)

初期に避ける動作:肩屈曲>90°水平内転(抱きつく動き)、強い胸筋/三角筋収縮、うつ伏せ腕支持。
姿勢・呼吸:固定に伴う前胸部短縮を防ぐため胸郭ストレッチ深呼吸を早期から。


予後と合併症

  • 多くは良好に骨癒合。

  • 遅延癒合/偽関節:中枢1/3で**≥2 cm短縮**や粉砕・喫煙などでリスク上昇。

  • 短縮変形:外観差・肩の疲労感・上肢長の見かけ差。

  • 皮膚壊死(テント)・神経血管障害・気胸(稀)は緊急対応


自主トレの例(痛みゼロ域で)

  • 毎日:肘・手首・手指のフルROM、握力スポンジ、頸部の軽可動。

  • :振り子、壁這い(~90°)、肩甲骨の上方/下方回旋エクサ、胸椎伸展ストレッチ。

  • 姿勢:座位で胸郭を高く、肩は軽く下げ外旋で安定化。


よくある質問(Q&A)

Q1. いつから腕を上げていい?
A. 目安は**~4週:~90°**まで、8週以降に痛みなく段階的に拡大。主治医の許可とX線の仮骨状況で調整。

Q2. スポーツ復帰の目安は?
A. 非接触系:8–12週接触系:12–16週以降が一般的。疼痛ゼロ、左右筋力と可動域の左右差≦10%、競技動作テスト合格が条件。

Q3. 鎖骨バンドは必ず必要?
A. 快適性や皮膚トラブルを考慮し、三角巾単独を選ぶ施設もあります。医師の方針と患者の装着許容性で決定。

Q4. 偽関節といわれた…手術は必要?
A. 症状(痛み・筋力低下・機能障害)が軽ければ経過観察も。症状が強い/機能障害が残る場合は骨接合術を検討。

Q5. 眠る姿勢のコツは?
A. 上半身を少し起こす・患側に枕や抱き枕で支持・腕は体幹前で軽支持。うつ伏せや患側圧迫は避ける。

Q6. 早く治すコツは?
A. 禁煙十分なたんぱく質/カルシウム/ビタミンD/K、過負荷の回避、指・肘・肩甲骨の早期可動

Q7. 要受診のサインは?
A. 指先のしびれ・蒼白・冷感、強い拍動痛、皮膚の極端な突出/色調悪化息苦しさ(気胸疑い)。


最終更新:2025-09-08