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仙腸関節障害のリハビリ治療

仙腸関節障害(仙腸関節炎)のリハビリ治療に関する目次は以下になります。

仙腸関節の概要

仙骨と腸骨から構成される平面関節で、前方は前仙腸靱帯、後方は骨間仙腸靱帯と後仙腸靱帯により強固に連結します。

上後腸骨棘には多裂筋の浅層部が付着しており、仙腸関節上で大殿筋と連なるようにして付着しています。

仙腸関節は平面関節のために剪断力を受けやすく、産後などで靭帯に緩みが生じると周囲の関節包などにストレスが生じやすくなります。

仙腸関節障害は慢性腰痛症の約10%ほどを占めており、若年から中年者までの女性に多いといった特徴を持っています。

仙腸関節②
仙腸関節靭帯

仙腸関節は動くのか?

仙腸関節は平面関節ではありますが、関節面は非常に不規則な形状をしており、それらがはまり込んでいるために可動性は乏しいのが特徴です。

仙骨が腸骨に対して前屈する可動域は約1.3度、後屈する可動域は約1.7度、距離にすると約1-2㎜と非常に僅かなものです。

そんな僅かな動きで何に貢献するかというと、歩行時に体幹重量と床反力が収束する際に負担を分散する作用を担っています。

関節内には滑液が存在しており、動きもあるために動的関節に属しますが、70代以上では80%が骨結合していると報告されています。

このことから、高齢になるほど仙腸関節障害は少なくなり、若年から中年者に発症しやすいことがわかります。

仙骨

仙腸関節に痛みが起こる理由

関節に痛みが起こる状態というのは、正常よりも動きが乏しくなっている場合か、動きが過剰となっている場合です。

仙腸関節には多裂筋浅層部と大殿筋が付着していますが、これらの筋肉に攣縮が存在すると動きは乏しくなります。

反対に、産後などは靭帯が緩むことで仙腸関節の動きが大きくなり、それが結果的に周囲組織に過負荷を与えて炎症を起こします。

そうすると後仙腸靭帯や関節包の疼痛閾値が低下し、軽度のストレスで容易に痛みが生じたり、多裂筋が攣縮するようになります。

炎症が消失したあとには周囲組織に瘢痕拘縮が残り、本来の関節運動が行えずに組織をまた痛めてしまうといった悪循環に陥ります。

産後の緩み以外にも、転落などの強い外力で損傷する場合や、非対称な動きで微力な外力が加わり続けることにより起こることもあります。

仙腸関節障害の症状

仙腸関節の関節前方にはL2-S2、関節後方にはL4-S3の感覚神経が分布しているため、下肢に波及するような関連痛が生じる場合も多いです。

主な症状としては、片側の腰痛や殿部痛、下肢痛などが出現します。

日常生活での痛みについては、車を長く運転できない、椅子に長く座れない、痛みがある側を下にした横向きで寝れないなどの訴えがあります。

仙腸関節は歩行時の並進運動を担う滑膜関節なので、循環不全に陥っているとスタートペイン(歩き始めの痛み)を起こします。

多裂筋と仙腸関節障害の関係性

腰椎の多裂筋浅層部は後仙腸靱帯および上後腸骨棘より起始して、第1-3腰椎の棘突起に停止しています。

そのため、腰多裂筋に攣縮が生じると仙腸関節はロッキングされ、動きがなくなることで周囲への負担を高めてしまうことにつながります。

仙腸関節モビライゼーションで腰痛や臀部痛が楽になるのは、腰多裂筋の攣縮が改善することで関節の動きが改善することに由来します。

滞っていた血流も促進されるために即時的に効果が現れやすく、治療後にとても楽になったと訴える患者も多くいます。

仙腸関節障害を確認するテスト

仙腸関節の機能障害を確認する方法として、①SLR、②Fabere、③Fadirfの3つのテストがあります。

SLRは、患者にベッド上で仰向けとなってもらい、検査者は下肢を伸展した状態で股関節を屈曲させて可動域を評価します。

Fabereは、仰向けの状態から、膝関節90度屈曲、股関節90度屈曲の位置から、ゆっくりと股関節を外転外旋させて可動域を評価します。

Fadirfは、膝関節90度屈曲、股関節90度屈曲の位置から、鼠径靭帯に対し直角方向に内旋内転を加え、そのときの抵抗を評価します。

これらの3つのテストに制限が認められる場合は、仙腸関節の機能障害を疑うことができます。

多裂筋のリラクゼーション

患者にはベッド上で側臥位をとっていただき、施術者は患者の正面に立ちます。

多裂筋の付着部である上後腸骨棘付近に圧を加えながら伸張していき、その後にゆっくりと緩めます。

この作業を場所を少しずつ移動しながら圧痛が消失するまで繰り返していき、多裂筋が十分に緩んだところで治療は終了とします。

伸張操作の方法以外にも、患者に骨盤を引き上げるように指示して多裂筋の収縮を繰り返すこでもリラクゼーションを図ることはできます。

後仙腸靭帯と仙腸関節障害の関係性

腰多裂筋と同様に重要な組織が後仙腸靭帯であり、この靭帯に瘢痕拘縮が存在していると仙腸関節は本来の動きができません。

瘢痕拘縮が起こる原因は前述したように炎症であり、産後などの過剰な可動性によって引き起こされる場合が多いです。

後仙腸靭帯が硬くなったり、癒着を起こしてしまうと、関節を動かした際にギシギシとした擦れる音が聞こえるようになります。

治療には後仙腸靭帯を伸張させることが必要なため、仙腸関節を引き離すように力を加えながらアプローチしていきます。

仙腸関節の過剰な可動性を修正する

産後の仙腸関節の緩みが痛みの引き金になりやすいことは説明しましたが、それを予防するための効果的な方法が骨盤ベルトの使用です。

ホルモンの影響で出産に備えた骨盤は周囲靭帯が非常に緩くなっており、その状態は産後もしばらくは続いています。

靭帯の緩みが戻るまでの間は骨盤ベルトを使用することにより、靭帯が伸び切ってしまうことを防ぐことができます。

骨盤の周囲筋をトレーニングすることでも仙腸関節の緩みは改善でき、周囲筋の中でもとくに重要なのが骨盤底筋群になります。

骨盤底筋群は立位でお尻をキュッと締めるような動きをする筋肉で、その動きは仙腸関節を締める方向にも働きます。

鍛え方としては、仰向けで膝を曲げた状態から、お尻を上げる運動(ヒップリフト)を中心に実施していきます。

産後に仙腸関節が開くような姿勢(骨盤の後傾した座位)は、靭帯の緩みを助長させることにつながります。

なので、とくに普段の姿勢には気をつけるように説明し、骨盤底筋群を働かせた姿勢を定期的にとるように指導してください。

おわりに

仙腸関節は非常に動きの少ない関節のため、正常な動きとは異なる外力が強制されると、関節は正常とは異なった位置にはまり込みます。

そうすると自力でその状態を外すことは困難となり、これがいわゆるロッキングされた状態となります。

AKAなどの仙腸関節モビライゼーションの手技は、このように動きが制限された状態を解除することで効果を発揮します。

改善しない仙腸関節障害というのは、関節内に炎症が存在している場合であるため、消炎しない限りは改善が望めません。

このことを念頭に置きながら、どこまでアプローチしていくことができるかを見極めていってください。


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The Author

中尾 浩之

中尾 浩之

1986年生まれの長崎県出身及び在住。理学療法士でブロガー。現在はフリーランスとして活動しています。詳細はコチラ
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