関連痛はなぜ起こるのか
内臓の痛みは、内臓の壁にある自由神経終末が感知して発しています。しかし、内臓の痛みを感じる神経は皮膚などに比べて密度が低いため、どこで痛みが生じているか特定しにくく、深部に鈍い痛み(押されるような痛み)を感じるのが特徴です。
この内臓の痛みが、同じ神経路を通過する別の体性感覚(皮膚や筋肉の感覚)と脊髄内で混線することで、実際の臓器とは離れた部位に痛みを感じる「関連痛」が起こります。また、内臓からの侵害刺激が交感神経や運動ニューロンを介して反射を引き起こし、筋肉の攣縮(過緊張)や血管の攣縮(血流障害)を誘発することで、さらなる痛みの原因となることもあります。内臓由来の痛みは、姿勢を変えても変化しにくいことや、食事や月経などに関連して変動することが特徴です。
チャップマンの反射点(圧痛点)について
内臓の圧痛点は、「チャップマンの反射点」をもとにしています。これは、内臓の機能障害が体表の特定のポイントに現れる「内臓のツボ」のようなものです。


治療(マッサージ)のポイント
反射点は非常に敏感になっていることがあるため、指を1本やさしく置き、ごく軽い圧をかけることから始めます。圧痛が認められる部位に対して、軽く回転させるようにマッサージを加えることで交感神経系の緊張を抑え、痛みが和らぐ場合があります。原則として、前面の反射点を治療した後に、後面の反射点を治療します。
内臓の位置と特徴まとめ
① 肺
- 役割: ガス交換(O₂取り込み/CO₂排出)。人体には約3〜4億個の肺胞があり、総面積は100〜140㎡にのぼります。
- 位置: 鎖骨上~第6肋骨付近。肺尖(頭方)は第1肋骨の約3cm上まで達し、前面は第6肋骨付近、後面はT1〜T12に位置します。
- 関連痛: 頚部~肩周囲。上肺野や胸膜の刺激、またはパンコースト腫瘍などでは、肩から上肢にかけて痛みが出ることがあります。左肺上葉の機能障害が左肩や僧帽筋への関連痛を引き起こすこともあります。
- 圧痛点: 第3-4肋間隙、第4-5肋間隙。
② 心臓
- 役割: 全身循環のポンプ。
- 位置: 胸骨の裏側にあり、前面は第2〜第6肋骨の間に位置します。
- 関連痛: 胸骨後部〜左胸、左上肢内側、顎・背部。左肩および腕の異常(心臓反射)を引き起こすこともあります。典型的には労作で増悪し安静で軽快する(狭心症)、あるいは持続し冷汗・悪心を伴う(急性冠症候群)などの特徴があります。
- 圧痛点: T2棘突起の左側。
③ 肝臓
- 役割: 胆汁の生産、代謝、解毒など。
- 位置: 右季肋部中心。前面は右第5肋間あたりが上縁の目安で、下縁は吸気で右肋弓下まで可動します。後面はT10–L2相当です。
- 関連痛: 右肩・右上背部(横隔膜経由=横隔神経C3–5)。肝臓のうっ滞や機能障害は、右肩甲骨周辺(肩甲挙筋、菱形筋など)の過緊張や痛みを引き起こすことがあります。
- 圧痛点:
- 前面:右側の第6肋骨と第7肋骨の肋間隙(傍胸骨から乳頭線とぶつかる辺りの外側)。
- 後面:T6~T7の横突起の間の、棘突起と横突起の先端の中間(右側のみ)。
④ 胃
- 役割: 食物の貯蔵、攪拌、消化(胃液の分泌)。
- 位置: 立位で概ねT8–L1の高さ(個人差大)。噴門はT11付近、幽門は立位でL3付近と変動します。
- 関連痛: 心窩部(みぞおち)、背部上方。食後や空腹時で変化します。非典型的な症状として、左腕や首、肩甲骨間の痛みを引き起こすこともあります。
- 圧痛点(胃の酸過多など):
- 前面:左側の第5〜6肋骨の肋間隙。
- 後面:T5とT6の横突起の間の、棘突起と横突起の先端の中間(左側のみ)。
⑤ 小腸(空腸・回腸)
- 役割: 栄養素の吸収、腸内免疫の防御臓器。
- 位置: 臍周囲~下腹部広範。
- 関連痛: 臍周囲が目安。腸は心理的ストレスと関連が深く、過敏性腸症候群などにより下腹部の不調を引き起こすことがあります。
- 圧痛点:
- 前面:第8〜第11肋骨の肋間隙(両側)。
- 後面:T8〜T11の横突起の間の、棘突起と横突起の先端の中間(両側)。

⑥ 大腸(結腸)
- 役割: 水分と電解質の吸収、便の形成と貯蔵。
- 位置: 右下腹(盲腸)→上行→横行→下行→S状→直腸。
- 関連痛: 下腹部正中~やや左右(便通・ガスで変動)。
- 圧痛点:
- 前面:大転子から大腿前外側の膝蓋骨の約3cm上方までの領域(右側は上行結腸、左側は下行・S状結腸)。
- 後面:L2〜L4の横突起の先端と腸骨稜が作る三角形の領域(両側)。


⑦ 虫垂(盲腸)
- 役割: 腸内免疫・菌叢のリザーバー。「腸の扁桃腺」とも呼ばれ、免疫学的に重要な役割を担います。
- 関連痛の典型: 臍周囲の内臓痛で始まり、数時間~半日で右下腹部(マックバーネー点やランツ点)に移動します。発熱・悪心嘔吐を伴うことがあります。
- 圧痛点:
- 前面:第12肋骨の上縁、肋骨の先端付近(右側のみ)。
- 後面:第11肋間隙の内側縁(右側のみ)。
⑧ 膵臓
- 役割: 消化酵素(膵液)の外分泌と、血糖を調節するホルモン(インスリン、グルカゴンなど)の内分泌。
- 位置: 胃の後方、後腹膜。L1〜L2の高さの中線上にあります。
- 関連痛: 心窩部〜左寄り、背部へ放散。急性膵炎では上腹部の激痛が胴の周囲を左側に向かってベルト状に放散することがあります。脂肪食・飲酒後の増悪、前屈位で軽快することもあります。
- 圧痛点: 右側のT7とT8の横突起の間。
⑨ 胆嚢
- 役割: 胆汁の貯蔵・濃縮。総胆管を経て十二指腸へ排出します。
- 位置: 肝下面(右季肋部の奥)。
- 関連痛: 右上腹部痛が典型(マーフィー徴候)。胆石などが詰まると、右肩〜肩甲部へ放散する痛み(横隔膜刺激)が生じることがあります。虫垂炎とは痛みの開始部位や経過で見分けます。
- 圧痛点: 肝臓の圧痛点と同じ領域(前面:右第6-7肋間隙、後面:T6-T7横突起間)に現れます。位置が重なるため、後方からの圧迫や他の症状と併せて鑑別します。
⑩ 腎臓
- 役割: 尿生成、電解質・血圧の調節、造血ホルモンの分泌など。
- 位置: 後腹膜。T12–L3の高さにあり、右腎は肝臓があるため左腎よりも1〜1.5cm低い位置にあります。
- 関連痛: 側腹部〜鼠径部へ放散。腎臓のある領域(背部〜側腹部)を叩打した際に痛みが生じます。尿路結石では疝痛発作状の痛みとなります。
- 圧痛点: T12-L1の横突起の間の、棘突起と横突起の先端の中間(両側)。
内臓の関連痛領域まとめ

最終更新:2026-07-15


























