大腰筋

この記事では、大腰筋(psoas major)に関する充実したデータを閲覧できます。

大腰筋の概要

大腰筋の起始停止

大腰筋は体幹と下肢をつなげる唯一の筋肉であり、股関節屈曲、腰椎前弯の形成、脊柱の安定化といった重要な役割を担います。

大腰筋は股関節屈曲の主力筋ですが、歩行時は強く脚を後方に蹴り出す動作でも働き、その作用でヒトは腰椎伸展位を保ちながら歩けます。

黒人男性は白人男性よりも大腰筋が大きいことが報告されており、それがスプリンターに黒人が多い理由と考えられています。

基本データ

支配神経 腰神経叢の前枝
髄節 L1-4
起始 ①浅頭:第12胸椎から第4腰椎の椎体側面および椎間円板側面

②深頭:全腰椎の肋骨突起

停止 大腿骨の小転子
栄養血管 腸腰動脈の腰枝
動作 股関節の屈曲、外旋(わずか)、腰椎前弯の形成、脊柱の安定化、骨盤前傾
筋体積 266
筋線維長 10.0
速筋:遅筋(%) 50.050.0
筋連結:腸骨筋、横隔膜、腰方形筋、最長筋、腸肋筋、(以下は股関節包を介して)腸骨筋、小腰筋、恥骨筋、小殿筋、梨状筋、外閉鎖筋

運動貢献度(順位)

貢献度

股関節屈曲

1 大腰筋
2 腸骨筋
3 大腿直筋
4 大腿筋膜張筋

腸腰筋の概要

鼠径部の通過組織

腸腰筋(iliopsoas)は、①大腰筋、②腸骨筋、③小腰筋の総称になります。

脚を付け根から振り出す動作が腸腰筋の主な働きであり、歩行や走行時に重要な役割を担います。

骨盤と鼡径靭帯の間隙には、大腰筋や腸骨筋、大腿神経、外腸骨動静脈といった重要な組織が通過しています。

大腰筋と脊柱弯曲の関係性

大腰筋が腰椎前弯の形成に働くことは前述しましたが、大腰筋は腰椎前弯を減少させる方向に作用する場合もあります。

具体的には、骨盤が前傾しすぎて腰椎の位置が前方にある場合は、反対に後方に押し戻すようなモーメントが発生します。

若い女性などでは骨盤の前傾が強すぎる人も多いので、大腰筋を鍛えることでアライメントを矯正できることもあります。

大腰筋の触診方法

大腰筋の触診場所

大腰筋は鼠径部(鼠径靭帯の下方)で触れることはできますが、停止部よりも起始部ちかくに硬結が発生しやすいです。

そのため、臨床では腹直筋の外側から親指を深部内側に向けて押し込むようにし、腹筋群の上から押圧する必要があります。

緊張が強い場合は腹部上からでも大腰筋を触知することができ、コリコリした筋肉に触れることができます。

大腰筋は非常に硬くなりやすいため、その場合は押圧することで強い痛みを訴えることになります。

ストレッチ方法

大腰筋のストレッチング3

片膝立ちの姿勢をとり、両手を大腿前面に置き、体重を前方下肢に移動していきます。

下肢を屈曲しながら腰椎を伸展、股関節を伸展・外転していきます。

似た作用を持つ腸骨筋のストレッチングとの違いは、腰椎伸展位と股関節外転位で伸張するところです。

筋力トレーニング

 Active-SLR|大腰筋の筋力トレーニング

背臥位にてお腹をへこませた状態で、鍛えたい側の下肢を70度前後に挙上して姿勢を保持します。

sit-up|大腰筋の筋力トレーニング

いわゆる腹筋運動のひとつですが、起き上がる角度が高くなるほどに大腰筋の活動が大きくなります。

そのため、後期に重点的な負荷をかけるようにして実施します。

アナトミートレイン:DFL

大腰筋:筋膜:DFL

大腰筋はアナトミートレインの中で、DFL(ディープ・フロント・ライン)に繋がっています。

DFLは身体の伸展系を制限する役割を担うため、体幹伸展の可動域が低下しているケースでは大腰筋の問題が考えられます。

大腰筋の圧痛点2

大腰筋の圧痛点(トリガーポイント)は起始部に出現し、腰痛や股関節前方の痛みを中心に起こします。

歩行時の筋活動

腸骨筋|腸腰筋の歩行時の筋活動

上の画像は歩行における腸骨筋の活動時期ですが、腸骨筋は遊脚初期(ISw)に働き、この時期は股関節を屈曲させて下肢を振り挙げる動作に働きます。

大腰筋も同様に作用しますが、さらにその手前の脚を後方に蹴り出す動作でも強く収縮し、腰椎伸展位を保ちながら歩くことを可能とします。

ここが崩れると歩行速度は低下し、骨盤は後傾して脚が振り出しにくくなり、少しの段差でつまずくといったことにつながります。

関連する疾患

  • 股関節屈曲拘縮
  • 慢性腰痛
  • 腰部脊柱管狭窄症
  • 思春期脊椎分離症
  • 変形性股関節症
  • 化膿性腸腰筋炎 etc.

股関節屈曲拘縮

背臥位で腰痛の関係:腸腰筋1

腸腰筋に短縮が存在すると、背臥位で対側の下肢を屈曲した際に、短縮側の下肢まで屈曲する反応がみられます。

これをトーマス検査といい、股関節が屈曲することで骨盤後傾と腰椎前彎が減少し、対側の腸腰筋が伸張されます。

短縮していない場合は伸びたままですが、短縮していると股関節が屈曲したり、腰椎前彎が増強するなどの代償運動が生じます。

腰痛患者で下肢伸展位での背臥位がきついと訴える場合は、腸腰筋の短縮や攣縮を疑うようにしてみてください。

慢性腰痛

慢性腰痛と腸腰筋の短縮

腸腰筋に短縮が存在すると、腰椎の代償的前彎を引き起こします。

前彎の増強が必ずしも腰痛に直結するわけではありませんが、椎間関節障害や腰部脊柱管狭窄症などのリスクを高めることにつながります。

思春期脊椎分離症を発症するケースでは、その9割以上で腸腰筋や大腿筋膜張筋といった股関節屈筋群拘縮が認められます。


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The Author

中尾 浩之

中尾 浩之

1986年生まれの長崎県出身及び在住。理学療法士でブロガー。現在は整形外科クリニックで働いています。詳細はコチラ
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