底側趾神経の上位概念と走行
- 坐骨神経(L4–S3)から分岐する脛骨神経(L4–S3)が主体となります。
- 分岐: 脛骨神経は足関節内側で**屈筋支帯(足根管)**を通過後、**内側足底神経(MPN)と外側足底神経(LPN)**に分かれます。
- 底側趾神経: MPN/LPNから出る総底側趾神経(common)が趾間で固有底側趾神経(proper)に分かれ、各趾の足底皮膚に分布します。
運動・筋支配(代表)
- 内側足底神経(MPN): 母趾外転筋、短母趾屈筋、短趾屈筋、第1虫様筋。
- 外側足底神経(LPN):
- 浅枝: 短小趾屈筋、しばしば第3虫様筋、総底側趾神経(4趾間へ1本)と小趾の固有底側趾神経。
- 深枝: 母趾内転筋、骨間筋(背側・底側の全て)、第2–4虫様筋(外側3つ)。
知覚支配(足底)
- 内側足底神経: 母趾〜第4趾内側までの“3.5趾”足底。
- 外側足底神経: 第4趾外側〜小趾(“1.5趾”)足底。
- 解剖学的特記事項: 内側足底神経と外側足底神経の連絡枝が第3・4中足骨間に存在しており、この解剖学的関係が後述のモートン病の発生に深く関与しています。
モートン病の病態
- 好発部位: 80〜85%という高確率で第3・4中足骨間(内側縦アーチと外側縦アーチが合流する部位)に生じます。残りの15〜20%が第2・3中足骨間に発生します。
- 発症メカニズム:
- コンパートメントの狭小化: 前足部横アーチが低下(開張足など)すると、中足骨頭、深横中足靱帯(DTML)、足底腱膜で構成されるトンネルが狭小化します。
- 圧迫と牽引ストレス: 歩行時の踵離地期(ヒールオフ)において、前足部に荷重が移動し足趾が伸展することで、総底側趾神経が深横中足靱帯に押し付けられ、強く牽引・圧迫されます。
- 捻転ストレス: さらに、歩行時に踵が内側に回転する「内側ホイップ」が生じると前足部が捻じれ、神経に捻転ストレスが加わります。これら圧迫・牽引・捻転の複合的ストレスが発症の引き金となります。
- 組織学的変化: 反復する機械的刺激により、中足骨間分枝の神経周膜(外面の結合組織層)の線維が肥厚し、いわゆる「神経腫」を形成します。MRI画像では、T1強調像で低信号、T2強調像で等〜低信号を示す結節状の腫瘤として確認でき、中足骨間の滑液包炎を伴うことも多いです。
臨床症状と評価
- 症状: 荷重時や歩行時の足趾への放散痛、灼熱痛、電撃痛、趾間の限局したしびれが特徴です。
- 理学所見・評価テスト:
- Mulderクリック: 前足部に対し両側から横軸圧(スクイーズ)を加えることで、「ポップ」というクリック感とともに疼痛が誘発されます。
- Tinel(チネル)徴候: 第3・4中足骨頭間などに限局した圧痛を確認します。指で圧迫しながら前足部を捻る、あるいは「つま先立ち肢位でツイスト(内側ホイップを再現)」して疼痛が誘発されるかを確認する評価も有効です。
保存療法の要点
- 除圧(足底挿板/インソール): 痛点の「近位(踵側)」に中足骨パッド(メタタルサルパッド)や舟状骨パッドを貼付し、横アーチを高く持ち上げて中足骨頭間のスペースを広げ、神経を除圧します。
- 荷重線・アライメントの是正: 前足部横アーチの低下は、後足部の過回内(扁平足)や過回外(凹足)と強く関連しているため、前足部だけでなく中・後足部のアライメントを評価し、個々の症例に応じたインソールを作製することが不可欠です。
- 履物指導: トウボックス(つま先部分)が狭い靴による側方からの圧迫は疼痛を増悪させるため、ゆとりのある靴を選択します。
- 難治例への対応: 保存療法に抵抗する場合は、MRIや超音波で病変を確認し、局所注射や外科的な神経腫切除術などを医師と検討します。
リハビリの実際(理学療法アプローチ)
- 足関節背屈制限の改善(最重要): 足関節の背屈可動域に制限があると、歩行時に前足部への早期の荷重移動(過荷重)を招き、神経への圧迫ストレスを増強させます。そのため、足関節の背屈可動域を拡大するための運動療法(下腿三頭筋のストレッチやモビライゼーションなど)が第一選択として重要になります。
- 軟部組織と足部内在筋のコントロール:
- 母趾外転筋、短趾屈筋などの足部内在筋の強化を図り、アーチの支持機能を高めます。
- 中足骨間隙を徒手的に分離して圧迫を緩和するマニュアルセラピーや、神経周膜の結合組織線維の滑走性を促すアプローチも有効です。
- 歩行・動作指導: 内側ホイップを誘発するような歩行パターンを修正し、適切な荷重移動(ロールオフ)を再教育します。
よくある質問(Q&A)
Q. 痛む趾間の“真下”にパッドを貼る?
A. いいえ。痛点の近位(踵側)である中足骨頸部〜骨幹部付近にパッドを置き、横アーチを持ち上げることで、中足骨頭間のトンネルを広げ神経を除圧します 。
Q. モートン病は神経炎?滑液包炎?
A. 多くは総底側趾神経の神経周膜の線維化・肥厚(いわゆる神経腫)が主体です 。ただし、反復刺激により中足骨間の滑液包炎を併発しているケースも多く見られます 。
Q. どの趾間に多い?
A. **80〜85%が第3趾間(第3・4中足骨間)**に発生し最多です。次いで第2趾間(15〜20%)に多く見られます。これは第3・4中足骨間に内側・外側足底神経の連絡枝が存在するという解剖学的な特徴も関与しています 。
Q. 感覚障害が“足底全体”に出る?
A. いいえ。通常は責任趾間の底側趾神経領域に限局します。広汎に広がる場合は、より近位での脛骨神経の絞扼(足根管症候群など)や、糖尿病性神経障害などの糖代謝異常を鑑別する必要があります 。
Q. 回内足をどう評価・是正する?
A. 歩行時や片脚立位で後足部の過度な外反(回内)を確認します。インソール(足底挿板)を用いて後足部の直立化と内側縦アーチの保持を行い 、後脛骨筋や足部内在筋の賦活により距骨の内下方への落ち込み(アーチの低下)を防ぎます 。
最終更新:2026-07-06




