腋窩神経麻痺(外側腋窩症候群)のリハビリ治療に関する目次は以下になります。
腋窩神経の概要
腋窩神経(C5-7)は、腕神経叢(C5-T1)の後神経束から起こり、後上腕回旋動脈とともに上腕骨外科頸を囲むように大円筋と小円筋の間隙を通過します。
上腕骨の後面で前枝と後枝に分かれ、前枝は三角筋に枝を出しながら前方に至り、後枝は小円筋に筋枝を出した後に上外側上腕皮神経【皮枝】に移行します。
上外側上腕皮神経は三角筋の後縁を回って皮下に出て、上腕上部外側の皮膚を支配します。
腋窩神経系の支配筋肉
腋窩神経が支配している筋肉は非常に少なく、以下のふたつになります。
前枝 | 後枝 |
三角筋 | 小円筋 |
三角筋は肩関節の運動に対して強力に作用するため、腋窩神経が障害されると外転筋力の低下と三角筋の萎縮が認められます。
小円筋も同時に障害されるために肩関節の外旋筋力も低下しますが、注意点としては90度屈曲位にて測定することです。
下垂位では棘下筋が主に働きますので、肩甲上神経支配の棘下筋に麻痺はなく、小円筋の障害を反映できないからです。
腋窩神経の知覚領域
腋窩神経の後枝は上外側上腕皮神経に分岐し、上腕上部外側の知覚を支配しています。下図の青色部分が支配領域になります。
腋窩神経の主な絞扼部と障害名
絞扼部 | 名称 |
外側腋窩隙(四角間隙) | 外側腋窩症候群 |
外側腋窩症候群
四角間隙は、上方を小円筋、下方を大円筋、内方を上腕三頭筋長頭、外方を上腕骨縁から構成されています。
これらの隙間を腋窩神経と後上腕回旋動脈が通過するため、四角間隙に関与する筋肉に問題が起きると腋窩神経麻痺を起こすことにつながります。
徒手的検査
腋窩神経麻痺の症状として、①三角筋と小円筋の筋力低下、②上腕近位外側の知覚障害が挙げられます。
これらの症状が認められる場合は、大円筋と小円筋の間に指先を押し入れるようにし、腋窩神経を圧迫するようにして疼痛の有無を確認します。
肘関節を伸展させることで上腕三頭筋長頭が収縮するので、そのすぐ内側で筋間に触れるとわかりやすいです。
また、四角間隙は肩関節を外転させることで最も狭まるので、他動的に外転強制していって疼痛を訴えるかも確認します。
さらに水平屈曲を加えることで神経に牽引ストレスを与えることができるので、症状の増悪を診ることも有用です。
リハビリテーション
腋窩神経麻痺の主症状は、肩が挙がらないといった三角筋の筋力低下と肩関節外側部の知覚障害になります。
その多くは外側腋窩隙での圧迫を受けている可能性があるため、間隙を構成している四つの筋肉の緊張をまずは触診していきます。
緊張が高い場合には問題となっている筋肉をリリースしていき、症状の変化があるかを確認します。
痛みや筋力低下の改善が認められるようなら、三角筋の筋力トレーニングを開始して、肩関節が挙上できるようにアプローチしていきます。