棘上靭帯性腰痛の概要
-
腰痛は大別して①筋・筋膜性 ②椎間板性 ③椎間関節性 ④仙腸関節性。
-
棘上靱帯性腰痛は①に含まれ、**腰部正中(棘突起ライン)**の痛みを訴えやすいのが特徴。
-
伸張・圧縮・摩擦で靱帯やその周囲の深筋膜の滑走不全が起点。伸展での痛みが目立ち、屈曲末期でも痛むことがある(伸張痛)。
椎間板性との違い(簡易鑑別)
-
椎間板性:腰部中央の鈍い広がる痛み/屈曲末期で増悪、棘突起の一点圧痛は乏しい。
-
棘上靱帯性:正中の限局圧痛(棘突起間〜上)/伸展で増悪が典型、硬い背もたれにもたれると痛い。PAスプリング(棘突起への圧)で再現しやすい。
よく一緒にみる関連因子
-
下部体幹前方位・スウェイバック:椎間関節で支え、正中軟部組織に圧縮+せん断。
-
股関節内転筋群の過緊張(薄筋・大内転筋)や骨盤底筋群の過緊張:骨盤〜仙尾部の靱帯群・胸腰筋膜を介して正中軟部組織に張力伝達(機能的連鎖)。
-
長時間座位/硬い椅子の背もたれ圧、反復の過伸展、コルセット長期固定後の後方軟部組織の癒着。
評価の手順(臨床フロー)
-
圧痛点:L3–S1の棘突起上/間。片側優位より正中限局が多い。
-
動作誘発:軽い伸展で痛み↑、屈曲末期で伸張痛、硬い背もたれに当てても痛み。
-
滑走テスト:棘上部皮下〜深層を横剪断すると痛み・すべり低下。
-
連鎖評価:股関節内転筋・骨盤底近傍の圧痛、スウェイバック、片脚立位での体幹前方化。
-
除外:神経症状、夜間安静時痛、発熱・外傷(レッドフラッグ)は医師評価へ。
介入(優先順位)
1)局所の鎮痛・滑走回復
-
棘上靱帯直上を軽圧の持続圧+横方向の強擦(痛み<5/10、60–90秒×数セット)。
-
皮膚—浅筋膜—深筋膜の層別アプローチ(皮膚のシワを伸ばす方向に軽剪断→痛みが下がる方向を保持)。
-
仙尾部の不快が強い場合は**仙尾部(仙尾靱帯)**の横剪断・浮かしで滑走回復。
2)連鎖部位の緊張低減
-
股関節内転筋群:内側広筋外縁〜鵞足部の滑走改善→30–60秒ストレッチ。
-
骨盤底の過緊張に対し、腹式呼吸+骨盤底のエキセントリック弛緩(吸気で骨盤底を下に広げる意識)。
-
胸腰筋膜背側ラインの軽いスライド(皮膚牽引)で後方組織の張力を分散。
3)再発予防(運動再学習)
-
スウェイバック修正:みぞおち軽前方・骨盤やや後退を戻すニュートラル立位の練習。
-
多裂筋の穏やかな賦活:四つ這いで骨盤の微小前後揺らし、痛みゼロ域で。
-
**股外転・外旋群(中殿筋)**の低負荷活性(クラム、側方ステップ)で体幹前方化を抑制。
-
長座/座位では背もたれに直接正中を当てない(小タオルで左右に分散、または腰部やや前弯支持)。
4)セルフケア指示
-
1–2時間に一度、うつ伏せ→軽い胸上げを2–3回(無痛可動域内)で正中の除圧。
-
長時間座位は座面深く+骨盤前傾少し、背もたれへは正中を当てすぎない。
-
痛みが落ち着くまで過伸展系エクササイズは回避。
よくある誤り
-
正中痛=すべて椎間板と決め打ち。
-
強圧マッサージで炎症・高密度化を助長。
-
コルセットの漫然使用で後方軟部組織の滑走低下を固定化。
Q&A
Q1. 伸展で痛いのに屈曲末でも痛いのはなぜ?
A. 伸展では圧縮、屈曲末では靱帯が伸張され痛むためです。両方向で増悪し得ます。
Q2. テーピングは有効?
A. 正中への直接圧を避けるオフロード目的や皮膚牽引での滑走誘導として短期的に有効です。
Q3. コアトレは必要?
A. はい。とくに多裂筋の低負荷賦活と呼吸—骨盤底の協調で後方組織への過負荷を減らします。
Q4. どのくらいで改善する?
A. 個人差はありますが、局所滑走+姿勢再教育で数回〜数週で日常の痛みが軽減するケースが多いです。
最終更新:2025-10-08

