筋・筋膜性腰痛症のリハビリ治療

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筋・筋膜性腰痛症のリハビリ治療について、わかりやすく解説していきます。

腰痛について

腰痛の原因は大きく分けると、①筋・筋膜性腰痛症、②椎間板症、③椎間関節障害、④仙腸関節障害の4つに分類できます。

筋肉が関与している腰痛を考えていく場合は、筋実質の問題か、筋肉を覆っている深筋膜の問題かを区別して考える必要があります。

筋膜は厳密にいうと、以下の5つが存在しています。

名称 備考
浅筋膜 皮下組織の中に存在して全身を覆う最も浅層の筋膜
深筋膜 浅筋膜の下に位置して筋を連結して全身を覆う膜
筋外膜 複数の筋周膜を包んで筋肉を覆う膜
筋周膜 複数の筋内膜を包む膜
筋内膜 複数の筋原線維を包む膜

一般的には筋外膜までを「筋肉」としており、それより浅層の深筋膜や浅筋膜は筋肉の図には描かれていません。

基本的に筋肉というのは感受性が乏しい組織ですが、深筋膜は感受性が非常に高く、激痛を引き起こす原因となります。

組織別の疼痛感受性の強さを覚えておくことにより、疼痛の原因組織が特定しやすくなるので知っておいて損はありません。

名称 備考
皮膚 感受性は高い
皮下組織 皮膚ほどに感受性は強くない
骨膜 人体で最も感受性が高い、鋭利痛
骨組織 海綿質は感受性が高い、骨皮質と骨髄は感受性はない
関節軟骨 感受性はない
関節包 感受性は高い
深筋膜 感受性は非常に高い
骨格筋 感受性は低い
靱帯 感受性は高い
黄色靭帯 基本的に感受性なし、表層のみ神経終末あり
椎間板 髄核に感受性なし、線維輪には神経終末あり
血管 動脈は感受性がある

腰痛の原因となりやすい筋肉

腰痛を起こす可能性の高い筋肉について、以下に掲載していきます。

①腰方形筋

腰痛の原因として、腰方形筋のトリガーポイントが非常に多くみられます。

トリガーポイントは停止部付近(第12肋骨の下方)に出現しやすく、痛みは股関節や殿部・大腿に放散することもあります。

②腰腸肋筋

腰腸肋筋は脊柱起立筋群のひとつであり、腰痛の原因となりやすい筋肉のひとつです。

トリガーポイントの尾側に痛みが放散しやすく、殿部痛として感じられることもあります。

③胸最長筋

胸最長筋は脊柱起立筋群のひとつであり、腰痛の原因となりやすい筋肉のひとつです。

トリガーポイントの位置により痛みが変化し、胸腰椎移行部の頭側では背部方向に放散し、尾側では腰臀部に放散します。

④多裂筋

多裂筋は脊柱起立筋群の浅層に位置する筋肉であり、腰背部痛の原因として一般的なものになります。

トリガーポイントが下位腰部や仙骨部に出現すると、仙骨・尾骨部の痛みとして感じられます。

⑤中殿筋

中殿筋のトリガーポイントは起始付近に発生しやすく、腰痛(腸骨稜上方の痛み)の原因としては非常にポピュラーです。

大殿筋のトリガーポイントでは主に殿部痛が、小殿筋のトリガーポイントでは大腿から下腿の外側に痛みが生じます。

そのため、殿筋群の中で筋・筋膜性腰痛を起こすのは中殿筋となります。

筋肉が硬くなりやすい姿勢

胸腰部脊柱起立筋が硬くなりやすい不良姿勢として、ロードシス(軍隊姿勢)があります。

ロードシスは、①腰椎前弯の増強(骨盤前傾)、②下部体幹の後方変位となっている状態をいいます。

下部体幹が後方変位している場合は、胸腰部脊柱起立筋を緊張させることで姿勢を保つように働きます。

筋肉は緊張状態(低強度・長時間の筋収縮)が続くと、アセチルコリンの放出増加・筋の虚血状態・低酸素症・ATP産生不足を引き起こします。

その結果、筋節の拘縮が発生し、さらに拘縮状態が侵害受容器を興奮させることで疼痛を発生させます。

腰背筋の滑走性改善

胸最長筋胸部線維はT7-12の間で腰腸肋筋との境界、腰腸肋筋胸部はT10-L4の間で胸最長筋との境界に対してアプローチしていきます。

特にT12肋骨下端部付近は深部に大腰筋や腰方形筋が付着しているため、滑走不全を招きやすい場所になります。

なので、胸最長筋と腰腸肋筋をリリースすることは、腰背筋を治療するうえで非常に重要です。

胸腰筋膜(深筋膜)が原因の腰痛

冒頭で筋・筋膜性腰痛症は、筋実質の問題か、筋肉を覆っている深筋膜の問題かを区別して考える必要があると書きました。

ただし、両者は深く関わり合っているので完全に区別することはできず、どちらにもアプローチしていくことが求められます。

深筋膜が原因の腰痛は胸腰筋膜が深く関与しているため、胸腰筋膜の浅葉と深葉を意識しながらリリースしていくことが必要です。

また、深筋膜というのは筋肉同士を連結しながら全身を覆うように伸びていきますので、どのような繋がりを持つかを知ることも重要となります。

脊柱起立筋はアナトミー・トレインにおけるSBL(スーパーフィシャル・バック・ライン)に属しています。

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SBLは身体の屈曲系を制限する筋膜で、立位前屈や後屈で痛みが発生する場合に異常が疑われます。

後屈(短縮位)で痛みが起こる原因としては、フィラメントの滑走不全でたわむことができないことが理由として考えられます。

深筋膜障害による関連痛

筋膜と関連痛

深筋膜は全身を包んでいる膜状組織であり、そのどこかに高密度化が発生すると、高密度化している場所または離れた場所に痛みを起こします。

筋膜性疼痛の発生原因

例えば、下腿三頭筋に高密度化が存在しており、腰部に関連痛を起こしている場合は、下腿に筋膜が引っ張られた状態になります。

筋膜リリースの効果

引っ張られている方向とは反対側に筋膜を伸張すると、腰部の牽引ストレスが消えるため、痛みを軽減することができます。

効果を判定するためには運動検査が有用で、例えば、立位前屈時に腰痛が発生するなら、筋膜リリース後に疼痛や可動性がどう変化するかをみます。

筋膜リリースの逆効果

もしも筋膜リリースを高密度化が存在する方向に行なった場合は、腰部への牽引ストレスが大きくなり、痛みを増強する可能性があります。

問題の根源となっている高密度化が存在している場所は、筋膜への伸張操作と運動検査を同時に行いながら検査していくとよいです。

疼痛や可動性が切り替わる場所が、高密度化が発生している場所として予測することができます。

筋膜の高密度化を治療

高密度化に対しては筋膜マニピュレーションが有効で、圧迫と振動刺激を加えることで、筋膜のねじれを解きほぐすことができます。

筋膜リリースの方法

筋膜リリースは前述したように検査に用いることも可能であり、筋膜マニピュレーション後の伸張操作(ストレッチ)としても有用です。

方法としては、手指や手根部で皮膚を軽く圧迫した状態から、筋膜が高密度化している部分とは反対方向に伸張していきます。

そこから90〜180秒(長くて5分間)ほど待つことで、粘っこいゲル状の感覚から、さらさらなゾル状の感覚に変化するまで待ちます。

その感覚が膠原線維がほどけた(リリースされた)状態であり、それが筋膜リリースを終了する合図になります。

筋膜マニピュレーションの方法

治療対象となる深筋膜の厚さは約1㎜で、斜め・縦・横方向の3層構造になっており、それぞれの方向へ柔軟に動きます。

しかし、高密度化(膠原線維と弾性線維がからみついた状態)が起きていると、その部位の筋膜に硬さと滑りにくさが感じられます。

その高密度化した部分を効果的に解きほぐすことができる方法が筋膜マニピュレーションであり、筋膜の構造に着目した治療法になります。

方法としては、硬くて圧痛のある部位に対して徒手圧迫を加えながら上下・左右・斜めに細かく動かしていきます。

痛みは10段階で7〜8ほどで訴える場合が多く、その痛みが半減するまで圧迫と振動刺激を継続していきます。

通常は約4分ほどで半減し、手にも筋膜が緩んだ感覚が伝わってくるので、それが筋膜マニピュレーションを終了する合図になります。

正しく治療できている場合は、治療直後に症状が一時的に改善し、そこから2日ほどの炎症が起きて痛みます。

4日後には炎症が落ち着いて筋膜の高密度化も解けた状態なので、以前よりもかなり軽くなっているのを実感できるはずです。


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The Author

中尾 浩之

中尾 浩之

1986年生まれの長崎県出身及び在住。理学療法士でブロガー。現在は整形外科クリニックで働いています。詳細はコチラ
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