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筋筋膜性腰痛症のリハビリ治療

腰痛を起こしている原因が筋肉や筋膜に由来している場合の評価法と、そのリハビリ治療について解説していきます。

筋筋膜性腰痛症の概要

筋膜性の腰痛はコンパートメント症候群と呼ばれることもあり、組織内圧が上昇することで血行障害を起こし、患部に痛みや疲労感を起こします。

腰椎の後彎変形がある高齢者ほど起こりやすく、筋肉の過緊張や浮腫、筋肉を包んでいる筋膜の硬さなどが影響しています。

また、腰の手術を受けて筋肉などが侵襲を受けている人に発生しやすく、後遺症として筋肉が瘢痕化を起こしている場合が多いです。

筋筋膜性腰痛症の症状

立位姿勢で痛みが起こりやすく、体幹を真っ直ぐに保持すると筋内圧が上昇するため、長く立てない、長く歩けないと訴えられます。

一度立ち止まって腰を反らすことで痛みが楽になるため、間欠性跛行に似た症状をとります。(脊柱管狭窄症の場合は腰を曲げたら楽になる)

体幹前屈時に疼痛は出現し、座位では腰が曲がった姿勢を続けることで腰痛は徐々に増加していきます。

患部をマッサージすることで血行が改善するため、一時的に腰が楽になった感じがしますが、すぐに元に戻るといった特徴があります。

筋肉のみを揉んでも筋膜の問題は解消されないため、完治を目指すためには筋膜に対してもアプローチしていくことが必要です。

トリガーポイントに由来した腰痛

筋筋膜性の腰痛には、コンパートメント症候群の他にも、トリガーポイント(TP)と呼ばれる硬結部の形成による痛みがあります。

筋肉の中でも筋腱移行部が最も硬結が発生しやすい箇所であり、とくに停止部付近が好発部位になります。

筋腱移行部は筋肉の収縮や伸張時に負荷がかかるポイントであり、引き寄せられる側である停止部はその傾向が顕著です。

そのため、トリガーポイントなどは筋腱移行部に発生しやすい傾向にあり、臨床上もとくに注目すべき部分になります。

また、硬結部は抗重力筋に出現しやすいため、脊柱起立筋や多裂筋、腸腰筋といった腰部周囲に発生することで腰痛を引き起こします。

痛みがトリガーポイントに由来している場合は、引き金となっている部位を指圧することで普段感じている痛みを再現できます。

腰部に関連痛を引き起こす筋肉は、①脊柱起立筋群、②多裂筋、③腰方形筋、④大腰筋、⑤梨状筋、⑥大殿筋があります。

筋肉の問題を取り除く方法

原因が過度な緊張にある場合は、軽い筋収縮や圧迫刺激(マッサージなど)を加えることで緊張は容易に緩みます。

緊張による痛みは筋内の血流障害に関係していますので、筋肉を緩めることで即時的に痛みを解消することができます。

攣縮についてはまず最初にアプローチすべきポイントであり、ここを解決しないことには硬結部や筋膜への問題に取りかかることはできません。

緊張が緩んだら筋肉を触診していき、硬結部や圧痛点がないかを丁寧に確認していき、硬結を発見したら漸増加圧法にて治療していきます。

漸増加圧法とは、硬結部を100-800gの力で30-120秒ほど圧迫し、抵抗が消失するのを感じたら、そこから更に中心に向かって圧を加えていきます。

また抵抗が感じられる部位まできたら、その位置で同様に圧迫を加えながらしばらく止め、効果が得られなくなるまで続ける方法です。

硬結を効率的に見つけていくためには、各筋肉のどこに発生しやすく、どのような関連痛パターンを有するかを知っておく必要があります。

①脊柱起立筋群

脊柱起立筋群は、①頸腸肋筋、②胸腸肋筋、③腰腸肋筋、④頭最長筋、⑤頸最長筋、⑥胸最長筋、⑦頸棘筋、⑧胸棘筋の8つの筋肉から構成されます。

その中でも、骨盤に付着している腰腸肋筋と胸最長筋が腰痛の原因となりやすい筋肉になります。(下図は腰腸肋筋)

腰腸肋筋|後面

腰腸肋筋におけるTPの好発部位は赤バツ部分(停止部付近)で、関連痛領域は筋腹から殿部にまで生じます。

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腰腸肋筋と並んで重要なのが胸最長筋で、これらの筋肉の浅層には広背筋が走行しているため、アプローチする際は広背筋の上からになります。

胸最長筋|後面

胸最長筋のTPは下図で、赤バツはTh11、青バツはL1付近にあり、殿部後方から仙腸関節あたりに痛みを引き起こします。

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②多裂筋

多裂筋は脊柱起立筋の深層に位置する長い筋肉で、細かい筋が重なって回旋筋を覆うように走行しています。

腰椎下部では多裂筋の占める割合のほうが大きく、椎間関節や仙腸関節との付着を持つことから、腰痛の原因として最も多い筋肉になります。

多裂筋|後面

慢性腰痛患者では多裂筋が有意に萎縮しており、臥床時の萎縮傾向も脊柱起立筋群と比較して起こりやすいことがわかっています。

多裂筋のTPは点在している場合が多く、あまり広範囲でないのが特徴です。

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③腰方形筋

腰方形筋は腰椎の両側にある長方形の深層筋で、後面は広背筋や脊柱起立筋に覆われています。

左右で骨盤の高さが違うという方が時々おられますが、腰方形筋が短縮している場合がしばしば認められます。

腰方形筋|正面

腰方形筋のTPはふたつあり、それぞれ圧痛部よりも下方の殿部に関連痛が生じるのが特徴です。

施術の際はベッドで側臥位となってもらい、下側の横腹に枕を置きます。

その状態からさらに下肢を伸展・内転、上肢を外転させていき、腰方形筋を触知しやすい状態に保持します。

腰方形筋は深い位置にあるため、グーを握った状態で指関節を用いて、ゆっくりと深く入れて押し込みながら確認していきます。

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④大腰筋

大腰筋は脊椎と下肢をつなげる唯一の筋肉で、腰椎前弯の保持にも貢献しています。

そのため、過度な緊張が存在すると腰椎前弯の増強が認められ、筋肉が萎縮すると腰椎の後彎変形が進行します。

腸腰筋①

腸腰筋のTPはいくつか存在しており、関連痛も腰部、臀部、仙腸関節、大腿前部から前内側までと幅広く出現します。

腸腰筋の中でも大腰筋は腰椎に付着部を持っており、腰痛を引きこしやすい部位です。

体幹の前側に位置する筋肉であるため、腰痛の原因としては見落とされやすい傾向にあるので、注意して観察しておく必要があります。

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⑤梨状筋

梨状筋は殿部深層に位置する筋肉で、しばしば過度な緊張によって下方を通過する坐骨神経を圧迫し、痛みやしびれを起こします。

梨状筋|後面

梨状筋のTPは起始付近と停止付近に2カ所あり、関連痛は仙骨の外側縁と殿部の下外側面、大腿後面に起こります。

人体最大の単一筋である大殿筋に表層が覆われていますので、触知していく際は大殿筋を緩めた状態で深く押圧しながら確認していきます。

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⑥大殿筋

大殿筋は単一筋としては人体最大であり、殿筋群はヒトが進化する過程で発達したとされています。

そのため、とくに歩行において重要な役割を担っており、片脚立ちでの貢献度が高くなっています。

大殿筋|後面

大殿筋のTPはいくつか存在しており、関連痛は殿部全体、場合によっては大腿後面にかけて拡がります。

腰痛ではなく殿部痛を引き起こしますが、殿部の痛みもしばしば「腰痛」と訴えられることが多いので含めています。

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後方筋膜のリリース

次に後方筋膜のねじれをリリースしていく方法ですが、実際にねじれているかは1㎜以下の世界なので触知は困難です。

客観的に評価をするなら体幹を前屈したり、回旋させる動作をしてもらい、運動方向の制限を確認していきます。

触診をすると筋肉の強い張りが感じられ、アキレス腱付近にまで硬さと圧痛を呈している場合も多くあります。

後方の深筋膜を障害部位と仮定した場合、制限がある方向へ軽い圧迫と伸張を加えていきます。

時間にして90-180秒ほどの伸張を加え、バターが溶けるような感覚を味わうことができたらリリースが完了です。

実際にその方向で痛みの緩和があるようなら、その方向での筋膜ストレッチを指導していき、効果を持続できるようにしていきます。

腰痛に対する筋膜ストレッチは主にふたつあり、ひとつは長坐位からの体幹前屈運動で、足底は壁などにつけて足関節が底屈しないようにします。

その状態から体幹を前屈していき、さらに頭部を屈曲することで背面全体を直行する筋膜を効果的に伸張することができます。

筋膜ストレッチは筋膜リリースと同様に90-180秒ほど無理のない範囲でじんわりと伸張することで効果を発揮できます。

おわりに

腰痛は筋肉や筋膜以外にも様々な原因によって起こっているため、これだけですべてが解決するというわけにはいきません。

ですが、原因部位を絞っていくためにも触診や動きを確認することは重要であり、実施前後の比較は有用です。

腰痛の多くは複合的に問題が絡み合って出現していますので、どこが主因かを見つけていき、根本的な解決と再発予防につとめてください。


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The Author

中尾 浩之

中尾 浩之

1986年生まれの長崎県出身及び在住。理学療法士でブロガー。現在はフリーランスとして活動しています。詳細はコチラ
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