筋・筋膜性腰痛症のリハビリ治療

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筋・筋膜性腰痛症のリハビリ治療について、わかりやすく解説していきます。

筋・筋膜性腰痛の概要

筋・筋膜が関与する腰痛は、①筋・筋膜性腰痛、②脊柱起立筋付着部症、③体幹筋肉離れの3つに大別されます。

筋は結合組織(筋膜)に包まれていますが、その役割は、各々の筋同士や周囲の組織との滑走性を保って独立した運動を行うためです。

筋膜は厳密にいうと、以下の5つが存在しています。

①浅筋膜 皮下組織の中に存在して全身を覆う最も浅層の筋膜
②深筋膜 浅筋膜の下に位置して筋を連結して全身を覆う膜
③筋外膜 複数の筋周膜を包んで筋肉を覆う膜
④筋周膜 複数の筋内膜を包む膜
⑤筋内膜 複数の筋原線維を包む膜

この中で最も重要なのが深筋膜で、直立位などの姿勢保持や動作を行う際に緊張力を全身に伝える働きを持ちます。

ある筋に局所的な損傷による炎症や不活動が生じると、筋は萎縮して筋膜周囲は線維化し、運動機能の低下を招きます。

線維化した筋膜に生じる圧痛点や硬結はMTPと呼ばれ、それで起こる疼痛(腰痛など)を総称して筋・筋膜性疼痛症候群(MPS)といいます。

筋肉が硬くなりやすい姿勢

胸腰部脊柱起立筋が硬くなりやすい不良姿勢として、ロードシス(軍隊姿勢)があります。

ロードシスは、①腰椎前弯の増強(骨盤前傾)、②下部体幹の後方変位となっている状態をいいます。

下部体幹が後方変位している場合は、胸腰部脊柱起立筋を緊張させることで姿勢を保つように働きます。

筋肉は緊張状態(短縮位)が続くと癒着することになり、滑走性障害を起こして筋・筋膜性腰痛が発症します。

筋・筋膜性腰痛の評価

画像所見において本障害に特異的なものはなく、前屈をしていく途中や、立ち上がり時などの動作開始時に腰痛が再現されます。

また、左側の脊柱起立筋に筋・筋膜性腰痛を呈する場合は、左斜めに後屈することで疼痛や詰まる感じを誘発できます。

圧痛は脊柱起立筋外側に生じることが多く、その部位によって他の腰部障害と鑑別していきます。

腰背筋優位に伴う腰痛

腹臥位で膝関節屈曲位で下肢を挙上してもらうと、脊柱起立筋の活動による骨盤前傾が発生し、脊柱起立筋の筋付着部に疼痛が再現されます。

また、腰椎の過剰モビリティ(分節的不安定性)が生じ、椎間関節障害を引き起こす原因にもなります。

背筋優位な状態を防ぐためには、体幹深部筋(腹横筋)と大殿筋が適切に働く必要があります。

具体的には、ドローインした状態でのバックブリッジ姿勢保持、股関節伸展可動性確保のための腸腰筋と大腿直筋のストレッチングを行います。

腰背筋の滑走性改善

胸最長筋胸部線維はT7-12の間で腰腸肋筋との境界、腰腸肋筋胸部はT10-L4の間で胸最長筋との境界に対してアプローチしていきます。

特にT12肋骨下端部付近は深部に大腰筋や腰方形筋が付着しているため、滑走不全を招きやすい場所になります。

なので、胸最長筋と腰腸肋筋をリリースすることは、腰背筋を治療するうえで非常に重要です。

深筋膜障害による関連痛

筋膜と関連痛

深筋膜は全身を包んでいる膜状組織であり、そのどこかに高密度化が発生すると、高密度化している場所または離れた場所に痛みを起こします。

筋膜性疼痛の発生原因

例えば、下腿三頭筋に高密度化が存在しており、腰部の椎間関節に関連痛を起こしている場合は、下腿に筋膜が引っ張られた状態になります。

筋膜リリースの効果

引っ張られている方向とは反対側に筋膜を伸張すると、椎間関節包への牽引ストレスが消えるため、痛みを軽減することができます。

効果を判定するためには運動検査が有用で、例えば、立位前屈時に腰痛が発生するなら、筋膜リリース後に疼痛や可動性がどう変化するかをみます。

筋膜リリースの逆効果

もしも筋膜リリースを高密度化が存在する方向に行なった場合は、椎間関節包への牽引ストレスが大きくなり、痛みを増強する可能性があります。

問題の根源となっている高密度化が存在している場所は、筋膜への伸張操作と運動検査を同時に行いながら検査していくとよいです。

疼痛や可動性が切り替わる場所が、高密度化が発生している場所として予測することができます。

筋膜の高密度化を治療

高密度化に対しては筋膜マニピュレーションが有効で、圧迫と振動刺激を加えることで、筋膜のねじれを解きほぐすことができます。

この治療が完結しないことには疼痛が消失することがなく、日によって波がある状態が続くことになります。

筋膜リリースの方法

筋膜リリースは前述したように検査に用いることも可能であり、筋膜マニピュレーション後の伸張操作(ストレッチ)としても有用です。

方法としては、手指や手根部で皮膚を軽く圧迫した状態から、筋膜が高密度化している部分とは反対方向に伸張していきます。

そこから90〜180秒(長くて5分間)ほど待つことで、粘っこいゲル状の感覚から、さらさらなゾル状の感覚に変化するまで待ちます。

その感覚が膠原線維がほどけた(リリースされた)状態であり、それが筋膜リリースを終了する合図になります。

筋膜マニピュレーションの方法

治療対象となる深筋膜の厚さは約1㎜で、斜め・縦・横方向の3層構造になっており、それぞれの方向へ柔軟に動きます。

しかし、高密度化(膠原線維と弾性線維がからみついた状態)が起きていると、その部位の筋膜に硬さと滑りにくさが感じられます。

その高密度化した部分を効果的に解きほぐすことができる方法が筋膜マニピュレーションであり、筋膜の構造に着目した治療法になります。

方法としては、硬くて圧痛のある部位に対して徒手圧迫を加えながら上下・左右・斜めに細かく動かしていきます。

痛みは10段階で7〜8ほどで訴える場合が多く、その痛みが半減するまで圧迫と振動刺激を継続していきます。

通常は約4分ほどで半減し、手にも筋膜が緩んだ感覚が伝わってくるので、それが筋膜マニピュレーションを終了する合図になります。

正しく治療できている場合は、治療直後に症状が一時的に改善し、そこから2日ほどの炎症が起きて痛みます。

4日後には炎症が落ち着いて筋膜の高密度化も解けた状態なので、以前よりもかなり軽くなっているのを実感できるはずです。

筋膜の主要ライン①:SBL

アナトミートレイン.001

SBL(スーパーフィシャル・バック・ライン)は身体の屈曲系を制限する筋膜で、立位前屈や後屈で痛みが発生する場合に異常が疑われます。

筋膜の主要ライン②:LL

アナトミートレイン.003

LL(ラテラル・ライン)は身体の側屈系を制限する筋膜で、立位側屈で痛みが発生する場合に異常が疑われます。

筋膜の主要ライン③:BFL

アナトミートレイン.004

BFL(ラテラル・ライン)は身体の回旋系を制限する筋膜で、体幹回旋で痛みが発生する場合に異常が疑われます。


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The Author

中尾 浩之

中尾 浩之

1986年生まれの長崎県出身及び在住。理学療法士でブロガー。現在は整形外科クリニックで働いています。詳細はコチラ
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