股関節の構造と関節可動域の測定方法

股関節の概要

股関節は、寛骨(腸骨・坐骨・恥骨が癒合)の寛骨臼と、大腿骨頭で構成される**人体最大の球関節(臼状関節)**です 。 上体の荷重をしっかり支えるため、以下のような強固なつくりになっています 。

  • 寛骨臼(臼蓋):大腿骨頭を深く包み込むソケットの役割を果たします
  • 関節唇:寛骨臼の辺縁を縁取る線維軟骨で、関節の深さを補います。陰圧(suction効果)と密閉(sealing効果)によって関節の安定性を高め、関節軟骨に効率よく栄養を届ける役割も担っています
  • 大腿骨:人体で最も長い骨であり、近位端の球状の大腿骨頭は、大腿骨頸部を介して骨幹部へとつながります

股関節前面

股関節後面

股関節側面


股関節の関節可動域と測定方法

運動方向
参考角度
基本軸
移動軸
屈曲
125°
体幹と平行な線
大腿骨
伸展
15°
体幹と平行な線
大腿骨
外転
45°
両側の上前腸骨棘を結ぶ線への垂直線
大腿中央線
内転
20°
両側の上前腸骨棘を結ぶ線への垂直線
大腿中央線
外旋
45°
膝蓋骨より下ろした垂直線
下腿中央線
内旋
45°
膝蓋骨より下ろした垂直線
下腿中央線

股関節屈曲の関節可動域(参考値)股関節伸展の関節可動域(参考値)股関節内転・外転の関節可動域(参考値)

測定時は代償動作に注意することが重要です。 屈曲時には骨盤の後傾・後方回旋、伸展時には骨盤の前傾・同側回旋、外転時には骨盤の挙上などの代償が起こりやすいため、骨盤をしっかり固定して測定する必要があります。


股関節周囲の靱帯

股関節の関節包は非常に強靭な靱帯によって外側から補強されており、伸展位で雑巾のように捻じれて大腿骨頭を白蓋に引きつけることで安定性を高めます。

  • 腸骨大腿靱帯:前面に位置する人体で最も強靭な靭帯です(Y字靭帯とも呼ばれます)。股関節の伸展と外旋(下部は内転)を制限します
  • 恥骨大腿靱帯:前面内側にあり、股関節の伸展、外転、外旋を制限します
  • 坐骨大腿靱帯:後面にあり、股関節の伸展と内旋を制限します
  • 大腿骨頭靱帯:関節内部にある靭帯です。幼少期は大腿骨頭へ血液を供給する役割を持ちますが、成人ではその役割を終え、関節の安定性への関与は低いとされています

股関節の靭帯|前面

股関節の靭帯|後面

股関節の靭帯|内面|大腿骨頭靭帯


頚体角と前捻角

  • 頚体角:大腿骨頸部と骨幹部のなす角度です。成人の正常値は125°〜130°程度です。これより小さいものを内反股(coxa vara)、大きいものを外反股(coxa valga)と呼びます

1

  • 前捻角:大腿骨を上方から見たとき、大腿骨頸部が前方へねじれている角度です。成人の正常値はおよそ15°〜20°(文献により10〜30°)です。出生時は30〜40°と大きいですが、成長に伴って減少します

2

頚体角や前捻角の異常は、股関節の適合性(アライメント)を崩し、関節への力学的ストレスを増大させます。これが変形性股関節症や脱臼リスクを高める要因となります。


よくある質問(FAQ)

Q. 股関節はなぜ肩関節より安定しているのですか?
A. 股関節は、丸い大腿骨頭が寛骨臼の深いくぼみにはまり込む「臼状関節」構造であり 、さらに関節縁を覆う関節唇や、人体最強である腸骨大腿靭帯などの強力な靱帯群によって強固に補強されているためです 。

Q. 股関節の可動域は日常生活にどのくらい必要ですか?
A. 日常生活活動(ADL)を円滑に行うためには、屈曲120°〜130°、外転20°、内旋・外旋はそれぞれ20°〜30°程度の可動域が必要とされています(例:和式トイレで屈曲130〜160°、足の爪切りで屈曲120°など) 。股関節の可動域制限が生じると、骨盤や腰椎が代わりに動くことになり(代償動作)、腰痛などの原因にもなります 。

Q. 頚体角や前捻角の異常、骨の適合性はどうやって分かりますか?
A. レントゲン(X線)やCTなどの画像診断で評価します 。臨床的には、**CE角(正常25°以上)やSharp角(正常33〜38°)**などのX線指標を用いて、寛骨臼が骨頭をしっかり覆えているか(臼蓋形成不全の有無など)を判定します 。

Q. 股関節を守るためのトレーニングは?
A. 歩行や立ち上がり時の骨盤の安定性を保つ中殿筋や大殿筋の筋力強化が有効です 。また、腸腰筋や大腿直筋など股関節周囲筋の柔軟性が低下すると関節へのストレスが増すため、適切なストレッチングを行い可動域を保つことも重要です 。


最終更新:2026-07-16