股関節の構造と関節可動域の測定方法

股関節の構造や関節可動域について解説していきます。

股関節の概要

股関節は、寛骨臼と大腿骨頭で構成される球関節です。寛骨は腸骨・坐骨・恥骨で形成され、股関節のソケットの役割を担います。

臼蓋は骨頭の75%を入れたうえに線維性の関節唇で補われており、同じ肩関節と比較して安定性に優れているといえます。

大腿骨は人体の中で最も長い骨で、近位端は大腿骨頭と呼ばれ、内側に突出して大腿骨頸部によって大腿骨骨幹部につながります。

股関節
1.前面から見た股関節
股関節前面
2.後面から見た股関節
股関節後面
3.側面から見た股関節
股関節側面

股関節の関節可動域と測定方法

運動方向 参考角度 基本軸 移動軸 参考図
屈曲 125 体幹と平行な線 大腿骨 股関節屈曲の関節可動域(参考値)
伸展 15
外転 45 両側の上前腸骨棘を結ぶ線への垂直線 大腿中央線 股関節伸展の関節可動域(参考値)
内転 20
外旋 45 膝蓋骨より下ろした垂直線 膝蓋中央線 股関節内転・外転の関節可動域(参考値)
内旋 45

股関節屈曲では骨盤後傾(腰椎後彎)、股関節伸展では骨盤前傾(腰椎前彎)の代償が発生しますので注意して観察します。

内外転では、股関節屈曲及び外内旋を防止し、最終域では骨盤の側方傾斜(腰椎側屈)に注意をしながら測定します。

内外旋では、坐骨の挙上や体幹の側屈などに注意し、股関節と膝関節は90度屈曲位にて測定します。

作用する筋肉(貢献度順)

方向 筋肉
屈曲 大腰筋、腸骨筋、大腿直筋、大腿筋膜張筋、恥骨筋、長内転筋
伸展 大殿筋、大腿二頭筋(長頭)、大内転筋、半膜様筋、半腱腰筋、中殿筋(後部)、梨状筋
外転 中殿筋、大殿筋(上部)、大腿筋膜張筋、小殿筋
内転 大内転筋、大殿筋(下部)、長内転筋、短内転筋、薄筋、恥骨筋
外旋 大殿筋、大腿方形筋、内閉鎖筋、中殿筋(後部)、小殿筋(後部)、腸腰筋、外閉鎖筋、梨状筋
内旋 中殿筋(前部)、小殿筋(前部)、大内転筋、恥骨筋、長内転筋、大腿筋膜張筋

足関節周囲の靱帯

足関節は内果と外果の高さの違いから、内反捻挫によって外側靭帯を損傷しやすい状態にあります。

1.股関節の靱帯(斜前面)
股関節の靭帯|前面
 2.股関節の靱帯(斜後面)
股関節の靭帯|後面
3.股関節の靱帯(深部)
股関節の靭帯|内面|大腿骨頭靭帯
靱帯 機能
腸脛靭帯 大殿筋と大腿筋膜張筋の停止腱が腸脛靭帯へ移行、膝関節の安定化
腸骨大腿靭帯 股関節伸展の制御、人体最強の靭帯
坐骨大腿靱帯 股関節の安定化
恥骨大腿靱帯 股関節の安定化
大腿骨頭靱帯 股関節の安定化

頚体角と前捻角

大腿骨頸部は骨幹部に対して前額面上で120-130度となっており、これを「頚体角」と呼びます。頚体角が小さい場合を内反股、大きい場合を外反股といいます。

また、水平面上では骨頭がやや前方を向いており、この大腿骨頚部のねじれを「前捻角」と呼びます。正常では10-30度で、小児期ではこの角度より大きくなります。

頚体角や前捻角の異常は、股関節でのアライメントを不良にし、結果的に股関節の摩耗や脱臼を起こすリスクとなります。

 頚体角

前捻角

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引用元:股関節痛い.com


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The Author

中尾 浩之

中尾 浩之

1986年生まれの長崎県出身及び在住。理学療法士でブロガー。現在は整形外科クリニックで働いています。詳細はコチラ
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