肩関節に関節可動域制限が起こる原因はなにか

要点サマリ

  • 肩は可動域が最大=不安定。制限の主因は①筋(痛みによる防御収縮/短縮)関節包・靱帯骨性インピンジメント/運動連鎖不全

  • 肩関節周囲炎(凍結肩)ではカプラーパターン(外旋>外転>屈曲>内旋)で制限しやすい。

  • **最終域の感触(エンドフィール)**で見立て:

    • 筋性=弾性・伸びる感覚、体位や収縮で改善しやすい

    • 関節包/靱帯性=しっかり硬い抵抗

    • 骨性/インピンジ=鋭い引っかかり・痛み

  • 治療の順序:痛み鎮静→関節包/滑走の回復→ローテーターカフ+肩甲帯の協調→動作再学習。

正常な肩関節の可動域

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肩関節は全関節の中で最も広い可動範囲を有しており、その代償として最も不安定で脱臼しやすい関節でもあります。

その欠点を補うために、肩関節はいくつもの筋肉に覆われており、関節包や靱帯で連結されています。

そのため、可動域制限を有している場合はそれらの筋肉や関節包、靱帯の短縮などが主な原因となる場合が多いです。

正常可動と制限の考え方

  • 肩甲上腕関節(GH)+肩甲胸郭関節の2:1で挙上(おおむね30°以降)。

  • 骨頭の求心化:三角筋の上方牽引を**カフ(棘上・棘下/小円・肩甲下)**が下方/後方へ釣り合いを取る。

  • このフォースカップルが崩れる(腱板損傷・肩甲骨運動不全・胸椎後弯)と、大結節が肩峰下に当たりやすくなり可動末で痛み・ロック。


痛みによる筋防御と“どの筋が怪しいか”

痛みで伸ばされる側が防御収縮→その反対方向が詰まるイメージ。例:棘下筋が硬い→内旋が出にくい

制限方向 短縮・過緊張が疑われる主筋
屈曲 大胸筋上部、広背筋、大円筋、後部三角筋(反対動作側)
伸展 大胸筋・前部三角筋、前鋸筋(反対動作側)
外転 大胸筋、大円筋、広背筋(内転群)
内転 三角筋中部・棘上筋(外転群)
外旋 肩甲下筋、大胸筋、広背筋(内旋群)
内旋 棘下筋・小円筋(外旋群)
水平内転 後部三角筋・棘下筋(水平外転群)

過緊張筋をリラクセーション(触圧刺激・呼吸併用)→即時的にROM改善が期待できます。


非収縮性(関節包・靱帯)による制限

最終域で硬い抵抗が特徴。代表例:

制限方向 主な非収縮性制限因子
屈曲 後下方関節包、下関節上腕靱帯(IGHL)
外転 前下方関節包、IGHL
内旋 後方関節包(投球肩のGIRDで典型)
外旋 前方関節包、上/中関節上腕靱帯(SGHL/MGHL)、烏口上腕靱帯

カプラーパターン(外旋>外転>屈曲>内旋)は周囲炎に多い所見です。


骨性/インピンジメント由来

  • GHは球関節で“理論上”骨性終末は少ないが、大結節—肩峰下の衝突で実質的にブロック。

  • 原因:上腕骨頭の上方偏位(腱板機能不全・三角筋優位)、肩甲骨の上方回旋不足/前傾増加/内転不全、胸椎後弯など。

  • 対応:下方/後方滑りの回復(関節モビ)カフ強化前鋸筋・下部僧帽筋で肩甲骨上方回旋を再学習。


現場の評価フロー(簡易)

  1. **痛みの相(夜間痛・安静時痛)**を確認。外傷直後や赤旗なら医療受診。

  2. 可動域(自動/他動)と最終域の感触痛みの角度(painful arc)。

  3. 外旋>外転>屈曲の順で硬い?→関節包パターン示唆。

  4. 内旋90°(90/90)・クロスボディで後方組織を判定(GIRDなら後方包/外旋筋群)。

  5. 肩甲骨運動(上方回旋・後傾・外旋)を視診、胸椎伸展も確認。

  6. 筋テスト:カフ(Jobe/ER/IR)、三角筋、前鋸・下部僧帽。


介入(段階的)

  1. 鎮痛・鎮静:アイソメトリック(痛み0–3/10)、触圧刺激、姿勢最適化。

  2. モビライゼーション

    • 外旋制限→前方組織保護しつつ前方包ストレッチ後方/下方滑りで骨頭求心化。

    • 内旋制限後方包へ:クロスボディストレッチ>スリーパー(疼痛誘発時は中止)。

  3. カフ強化(可動域が出てきたら)

    • 外旋(棘下/小円):肘脇締めチューブER、90/90 ERは後期。

    • 内旋(肩甲下):脇締めチューブIR。

    • 棘上:痛みがない範囲で30–60°外転の短可動域レイズ。

  4. 肩甲骨セット:前鋸筋パンチ、Y/T/W、壁スライド(後傾・上方回旋を意識)。

  5. 動作再学習:挙上時は肘軽外旋+胸椎伸展、頸部過緊張を抑える。

禁忌・注意:急性炎症期の強いエンドレンジストレッチ、痛みを我慢した反復、夜間痛の悪化、術後早期の過負荷。


よくある質問(Q&A)

Q1. 五十肩はストレッチすればするほど早く治りますか?
A. 急性期は痛み優先。痛み0–3/10での軽い可動とアイソメが基本。強いストレッチはかえって長引きます。

Q2. 外旋だけ特に固いのですが?
A. 周囲炎の典型。前方包の硬さ肩甲下筋の短縮が多い。下方/後方滑り+軽いERから段階的に。

Q3. 挙上時に肩の前が詰まります。
A. 肩峰下インピンジ傾向。骨頭下方化(カフ)と肩甲骨上方回旋を先に作り、挙上角度は痛みの出ない範囲で。

Q4. どれくらいで良くなりますか?
A. 周囲炎は数か月〜1年と個人差大。痛みの相に合わせ段階的に。腱板断裂疑い・夜間痛強い場合は受診を。

Q5. 骨性の制限はストレッチで改善しますか?
A. 衝突の多くは運動学の修正で軽減可能。純粋な骨棘や形状要因は医師評価と併用が安全。


最終更新:2025-09-27