舟状骨骨折のリハビリ治療

舟状骨骨折の概要

手根骨の配列と構造|舟状骨骨折

  • 発生頻度:手根骨骨折の60%超。最も多い。

  • 見逃しやすい理由:関節内骨(表面の多くが軟骨)で血行が乏しい→初期X線で不明瞭、偽関節・壊死のリスクが高い。

  • 典型的機転:手関節背屈強制(転倒・スポーツの手つき)。

  • 後遺症:長期経過で変形性手関節症の原因に。

解剖と血行

  • 舟状骨は近位1/3・中央1/3・遠位1/3に区分。中央部が最も骨折しやすく、遠位部は比較的まれ。

  • 血行は遠位~背側からの逆行性が主体。近位1/3は特に虚血に脆弱→骨折で壊死・偽関節に陥りやすい。

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臨床所見

  • 解剖学的嗅ぎタバコ窩(橈骨茎状突起と母指伸筋腱間)の圧痛。

  • 母指軸圧痛、背側舟状骨圧痛、把持痛。

  • 腫脹は軽微なことも多く、疼痛のみで見逃されやすい。

画像診断

  • 初期X線では**正面・側面・斜位+尺屈位(スカフォイドビュー)**を推奨。

  • 初期陰性でも疼痛・圧痛が明確なら固定継続し、1–2週後再撮影またはMRI/CTで確認。

  • 骨折線の走行と転位の有無は治療方針の決定に直結。

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治療方針のめやす

  • 保存療法:転位なし・癒合が期待できる骨折。前腕〜母指を含むギプス(母指CM関節含める固定が一般的)。

  • 手術療法

    • 転位あり/偽関節リスクが高い症例(近位1/3、斜骨折、喫煙・遅延受診など)。

    • 経皮的スクリュー固定(低侵襲・血行温存)が第一選択。展開整復が必要なときは掌側(遠位)・背側(近位)からアプローチ。

    • 骨欠損や偽関節例は骨移植併用。

舟状骨骨折|舟状骨骨接合術|スクリュー固定

固定とおおまかな経過

  • 展開なし固定:ギプス1–2週 → 装具へ。

  • 展開あり整復:ギプス2–4週 → 装具へ。

  • 骨移植併用:ギプス4–6週。

  • いずれも癒合確認が最優先。無理な荷重・他動は禁物。

リハビリ(実践フロー)

固定期(〜6週前後)

  • RICE(冷却・挙上)。肩・肘・第2–5指の自動運動で浮腫・硬縮予防。

  • 手関節・母指は固定遵守。患部外トレ(握力は不可)。

移行期(6〜12週)

  • 医師の許可下で手関節・母指の自動介助→自動運動開始。

  • 関節モビライゼーション(痛み最小で滑走重視)、手浴+ROM、軟部組織のリラクセーション

  • 握力・ピンチは癒合確認後、軽負荷から。

機能期(12〜18週)

  • 把持・つまみの段階的負荷、前腕回内外・橈尺屈の協調練習。

  • 作業特異的課題(タイピング、工具操作、スポーツドリル)へ漸増。

  • 目安:**術後14週〜/保存18週〜**で握力強化本格化(主治医判断)。

ポイント:可動域の回復>筋力の順に。疼痛・腫脹の再燃は負荷オーバーのサイン。

合併症とフォロー

  • 遅延癒合・偽関節・近位極壊死、手関節可動域制限、母指MP・手関節周囲の腱滑走不全

  • 喫煙・糖尿病・遅延受診は癒合遅延のリスク。禁煙指導も重要。


よくある質問(Q&A)

Q1. 初期X線が陰性でも固定は必要?
A. 臨床所見が陽性なら必要です。舟状骨は見逃しが多く、MRI/CTでの精査または再撮影までの固定が偽関節防止につながります。

Q2. どれくらいでスポーツ復帰できますか?
A. 競技内容と骨折型によりますが、癒合確認後に段階的復帰が原則。非接触系で3〜4か月、手を強くつく競技は4〜6か月が目安です。

Q3. 保存と手術、回復の違いは?
A. 手術(経皮的スクリュー)は癒合促進・固定期間短縮が期待できます。保存は固定期間が長めになりやすい一方、侵襲がない利点があります。

Q4. リハ中に痛みが出たら?
A. 即座に負荷を下げる中止。腫脹・圧痛が増す場合は主治医へ報告して画像再評価を。


最終更新:2025-10-05