骨盤の概要
骨盤(pelvis)は、中央にある仙骨・尾骨と、その左右に位置する寛骨から構成される強固な骨格です 。 骨盤の主な機能は、上半身と下半身を連結して体幹の重量を下肢に伝達すること(荷重伝達機能)と 、骨盤腔内にある生殖器や泌尿器などの内臓を保護することです 。
寛骨(hip bone)は、さらに以下の3つの骨が癒合してできています 。
- 腸骨(ilium)
- 坐骨(ischium)
- 恥骨(pubis)
これら3つの骨は、小児期には軟骨(Y軟骨)を介して結合していますが、成長に伴って骨化が進み(女子で11〜14歳、男子で14〜16歳頃)、完全に癒合して1つの寛骨となります。
骨盤が構成する関節
骨盤は以下の重要な関節を構成し、身体の安定性と可動性に寄与しています。
- 仙腸関節:仙骨と腸骨(左右の耳状面)で構成される関節です,。強靭な靱帯群(仙結節靱帯、仙棘靱帯など)によって強固に補強されており、可動域は数ミリ程度と小さいですが、体重を支え、歩行時の衝撃を緩和する重要な役割を持っています,。
- 腰仙関節:第5腰椎と仙骨の間の関節で、脊柱と骨盤をつなぎます,。
- 股関節:寛骨臼と大腿骨頭からなる、人体で最大の球関節(臼状関節)です,。寛骨臼が大腿骨頭を深く包み込むことで、高い安定性と広い可動域を両立しています。
- 恥骨結合:左右の恥骨が線維軟骨板(恥骨間円板)によって連結されている部分です,。
骨盤の男女差
骨盤の形態には明らかな男女差があります。女性の骨盤は妊娠・出産に適応するため、全体的に幅広で浅い形状をしています。
- 分界線(骨盤入口縁):女性は円形または楕円形に近く、男性はハート型をしています。
- 恥骨下角:女性は広く(鈍角)、男性は狭い(鋭角)のが特徴です。
- また、女性の方が男性に比べて大腿骨の前捻角がやや大きい(3〜5度程度)といった骨盤周辺の性差もみられます。
各部位の名称と役割について
骨盤の各部位は、多数の筋肉の起始・停止部となり、靱帯が付着する重要なランドマークです。
| 1.前面から見た骨盤 |
![]() |
| 2.後面から見た骨盤 |
![]() |
| 3.外側面から見た骨盤 |
![]() |
| 4.内側面から見た腸骨 |
![]() |

|
部位
|
機能・特徴
|
主な付着・通過構造
|
|---|---|---|
|
腸骨稜
|
腸骨翼の上縁。
|
外腹斜筋、内腹斜筋、腹横筋などが付着。頂点を結ぶ線(ヤコビー線)は第4腰椎棘突起を通る。
|
|
上前腸骨棘(ASIS)
|
腸骨稜の前端。
|
縫工筋、大腿筋膜張筋が起始。鼠径靱帯が付着する。
|
|
下前腸骨棘(AIIS)
|
ASISの下方に位置。
|
大腿直筋(直頭)が起始。
|
|
上後腸骨棘(PSIS)
|
腸骨稜の後端。
|
多裂筋が起始。第2仙椎の高さにあり、仙腸関節の指標となる。
|
|
寛骨臼
|
腸骨、坐骨、恥骨の癒合部。
|
半球状の関節窩であり、大腿骨頭と股関節を構成する,。
|
|
閉鎖孔
|
寛骨前下方にある大孔。
|
閉鎖膜で覆われ、閉鎖神経や閉鎖動静脈が通過する,。内閉鎖筋・外閉鎖筋が起始,。
|
|
坐骨結節
|
坐骨の後下方にある隆起。
|
座位時に体重を支持する(座面に接地する)部位,。ハムストリングス、大内転筋、大腿方形筋、下双子筋が起始し、仙結節靱帯が付着する。
|
|
坐骨棘
|
坐骨後縁の突起。
|
上双子筋が起始。仙棘靱帯が付着。
|
|
恥骨結節
|
恥骨上縁の突起。
|
腹直筋や長内転筋が起始。鼠径靱帯が付着,。
|
|
恥骨櫛
|
恥骨上縁。
|
恥骨筋が起始。
|
|
恥骨下枝
|
恥骨の下方部分。
|
大内転筋、短内転筋、薄筋などが起始,。
|
|
寛骨臼切痕
|
寛骨臼の下縁。
|
寛骨臼横靱帯が張り、大腿骨頭靱帯や血管、神経が通過する。
|
|
分界線
|
骨盤腔の境界線。
|
大骨盤(上部)と小骨盤(下部)を分ける。
|
|
岬角
|
仙骨の最前上端。
|
男性は鋭角、女性は鈍角。
|
骨盤の運動とアライメント
骨盤は、隣接する腰椎や股関節と密接に連動して動きます。
- 前傾と後傾:骨盤が前傾すると腰椎は前弯(反り腰)を強め、股関節は相対的に屈曲位となります,。逆に、骨盤が後傾すると腰椎は後弯(丸まる)し、股関節は相対的に伸展位となります,。
- 仙腸関節の固有運動:仙骨が腸骨に対して前傾するような動きを「ニューテーション(うなずき運動)」、後傾する動きを「カウンターニューテーション」と呼びます,。この微細な動きが荷重時の衝撃吸収や関節の安定化に不可欠です。
Q&A
Q. 骨盤は何の骨からできている?
A. 中央にある仙骨・尾骨と、その左右にある寛骨(腸骨・坐骨・恥骨が癒合したもの)で構成されています 。
Q. 骨盤の男女差は?
A. 出産に適応するため、女性の骨盤は男性に比べて全体的に幅広で浅い形状をしています 。上から見た分界線は女性が円形(楕円形)で男性がハート型、恥骨下角は女性が広く(鈍角)、男性が狭い(鋭角)という特徴があります。
Q. 骨盤の主要な関節は?
A. 寛骨と仙骨をつなぐ「仙腸関節」、第5腰椎と仙骨をつなぐ「腰仙関節」、寛骨と大腿骨をつなぐ「股関節」、左右の恥骨をつなぐ「恥骨結合」の4つが主要な関節です 。
最終更新:2026-07-23




