アキレス腱の解剖と特徴
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別名:踵骨腱。下腿三頭筋(腓腹筋・ヒラメ筋)が合流して踵骨隆起に停止する強靭な腱。
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長さ:およそ15 cm。人体最大級の腱で、跳躍・走行の推進力(ストレッチショートニング)に重要。
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血行:踵骨付着部から2–6 cm近位は血行が乏しいウォーターシェッドゾーンで、断裂の好発部位。
アキレス腱断裂
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典型的訴え:後方で「バチッ」という感覚/音、鋭い疼痛、つま先立ち不能。
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理学所見:Thompson(Simmonds)テスト陽性、欠損部の陥凹触知、底屈トルク低下。
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好発:30–40代のレクリエーションスポーツ(テニス、バドミントン、バレー等)。中高年では軽外傷・日常動作でも。
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リスク因子:既往の部分断裂/腱障害、フルオロキノロン系や全身・局所ステロイド使用、代謝性疾患(糖尿病、脂質異常)など。
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断裂部位の頻度:中間部(2–6 cm)>筋腱移行部>付着部(稀)。
診断のポイント
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視触診・徒手テストで診断可能なことが多い。超音波やMRIは不明瞭例/部分断裂や再断裂疑いで有用。
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鑑別:腓腹筋肉ばなれ、後脛骨筋腱障害、S1根症など。
治療(保存 vs 手術)
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近年:**機能的保存療法(早期装具・早期荷重・早期可動化)**で再断裂率は改善。
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手術:活動性が高い、明らかな断端離開、職業・競技上の要請、保存不適応などで選択。
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利点:再断裂の抑制傾向。欠点:創合併症・感染・腓腹神経障害のリスク。
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保存:装具(ブーツ+ヒールリフト)で底屈位固定し、段階的に背屈を許可。
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いずれも早期機能的リハの質が予後を左右。
術後(または機能的保存)リハビリの段階
代表例。**背屈は早期に“入れ過ぎない”**ことが肝。医師の許可条件に必ず従う。
0–2週:保護期(炎症・疼痛コントロール)
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固定:**底屈20–30°**を基本とするギプス/ウォーキングブーツ(ウェッジ併用)。
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実施:挙上・圧迫で浮腫管理、足趾ポンピング、非荷重下での股・膝ROM。
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禁忌:他動背屈や腱に伸張ストレスは回避。
2–6週:早期機能化(瘢痕安定化初期)
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部分荷重開始(術者指示量、ブーツ+ヒールウェッジ)。
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能動範囲内の足関節運動(中間位まで。背屈は中間位超えない)。
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軟部組織:縫合部皮下の滑走性改善、腓腹・ヒラメの“直接ストレッチはまだ行わない”。
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低負荷有酸素:エアロバイク(つま先立ち不可・背屈制限を守る)。
6–8(~10)週:全荷重移行(再構築初期)
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全荷重へ、ウェッジを段階的に減量(例:2 cm → 1 cm → 0)。
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立位課題:重心移動、ヒールレイズ**(まず両脚、痛みなし・腫脹増悪なしを確認)**。
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ROM:痛みのない範囲で中間位→軽度背屈へ。強い背屈ストレッチはまだ回避。
10–12週以降:筋力・持久・協調(再構築)
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単脚ヒールレイズへ段階的移行、エキセントリック(下ろし)重視のカーフレイズ。
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プライオ前段階:スモールジャンプ、ランジ、階段昇降。
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ジョグ復帰:3–4か月目安(疼痛・腫脹なし、単脚ヒールレイズ10–15回可能などを基準に)。
6か月以降:競技復帰
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競技特異的ドリル、変向・加減速、片脚着地、反復スプリント等。
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完全復帰目安:6–12か月。痛み・腫脹ゼロ、左右カーフ筋力・筋持久・跳躍の客観指標で判断。
再断裂が多いのは“早すぎる伸張・強すぎる負荷”。腱は形は戻っても強度回復は遅い(数か月~年単位)。
よくある質問(Q&A)
Q1. 早く可動域を出した方が治りが良い?
A. 早期“機能化”は有利ですが、背屈の入れ過ぎは再断裂リスク。段階を守ることが最重要です。
Q2. いつからつま先立ちできますか?
A. まず両脚で6–8週頃を目安(痛み・腫脹なし)。単脚は10–12週以降が目安です。
Q3. 保存と手術、スポーツ復帰はどちらが早い?
A. 症例により差があります。機能的保存でも良好な成績が得られますが、高活動度や明らかな離開では手術が選択されがちです。
Q4. ストレッチはいつ始める?
A. 前半は避ける。等尺→等張→エキセントリックと進み、十分な瘢痕強度が得られてから軽度背屈域の伸張を導入。
Q5. 再断裂を防ぐコツは?
A. ウェッジ段階の遵守、背屈の入れ過ぎ回避、痛みや腫脹が出たら戻す、負荷を“前日反応”で調整。靴はヒールリフトを暫時併用。
最終更新:2025-10-04

