ゲートコントロール理論をわかりやすく解説

電気刺激が痛みの治療として使えるという理論的根拠をはじめて示したのは、1965年にMelzackとWallによって紹介された門制御理論(ゲートコントロール理論)です。

この理論は現在では一部修正されており、抑制介在ニューロンが中枢に痛みを伝達するT細胞を直接的に抑制する働きがあるとされています。

ごちゃごちゃと難しい言葉を並べるとわからなくなるので、とりあえず下の図をみながら話を進めていきます。

ゲートコントロール理論

この抑制介在ニューロンってのを促進させたら、痛みを伝えるT細胞ってのを抑制できるというわけです。たったこれだけです。

抑制介在ニューロンを促進させる方法は、太い神経を刺激することです。

太い神経は「Aα」や「Aβ」、「Aγ」などがありますが、覚えるのはAβだけです。Aβってのは触覚を伝える神経です。

痛い部位を手でさすることで痛みが和らぐのはこの機序によるものです。

反対に、細い神経であるAδ(皮膚温感覚)やC線維(交感神経)を刺激すると、抑制介在ニューロンは抑制されるので、痛みが強くなってしまいます。

皮膚が冷たいときや交感神経が優位なときに痛みを感じやすいのは、この機序によるものです。なるほどー、わかりやすい。

次は、この理論がTENSにどのような関係があるのかを説明していきます。

TENSは経皮的電気刺激という意味ですが、要するに皮膚を電気で刺激するよってことです。なので、その方法も簡単で、痛いところに電気が流れるパッドを貼り付けて流すだけです。

先ほども書いたように、皮膚には触覚(Aβ)がありますので、電気が流れることで太い神経が刺激されることになります。

そうすると、抑制介在ニューロンが促進されて痛みが治まるわけです。ゲートコントロール理論ってたったこれだけです。

現在、TENSは家庭用低周波治療器として5,000円前後で購入することも可能となっており、一般家庭にも広く普及しています。

例えば、アマゾンでベストセラーとなっているOMRONのエレパレスなんかは私も持ってますが、即効性も高いために腰が痛いときは重宝しています。

しかし、その効果は短時間であり、腰痛の根本的な解決にはいたりません。なので、セルフコントロールの一環として使用していくことが大切です。

ゲートコントロール理論について理解はできたでしょうか。最後におまけで、神経の分類表を貼っておきます。太い神経は「Aγ」まで、それより下は細い神経ですよ。

分類 直径(μm) 役割
15(13-22) 筋・腱感覚,骨格筋運動
8 (8-13) 皮膚の触圧覚
8 (4-8) 錘内筋
3 (1-4) 皮膚温痛覚(体性痛)
B 3 (1-3) 交感神経節前線維
somatic C 0.5(0.2-1) 交感神経節後線維
dorsal root C 0.5(<1) 皮膚温痛覚(内臓痛)

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The Author

中尾 浩之

中尾 浩之

1986年生まれの長崎県出身及び在住。理学療法士でブロガー。現在は整形外科クリニックで働いています。詳細はコチラ
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