リハビリテーションの評価でも多用されているファンクショナルリーチテスト(FRT)についてまとめてみましたので、ご参考にしてください。
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ファンクショナルリーチテストの概要
FRTは、Duncanらによって考案された高齢者のバランスを測定する方法のひとつです。
このテストでは、立位にて上肢を90度挙上した状態から、できる限りに上肢を前方に伸ばしていき、倒れないギリギリで止めてからまた元の位置に戻ります。
ファンクショナルリーチテストでは、支持基底面内でどれだけ動的な姿勢調整をできるかを検査しており、抗重力伸展活動や筋の協調的活動を観察することができます。
この測定法の信頼性は、テストと再テスト間でICC=0.92、観察者間でICC=0.98とされています。
【ICCとは?】級内相関係数の略で、評価者が対象に対する評価を行った際、評価者内もしくは評価者間における評価の一致度や安定性(=信頼性)を示すための指標です。 |
実施方法の詳細
- 測定用メジャー・バーを肩峰の高さで固定する
- 被験者は測定用メジャー・バーに沿って立ち、足の幅は踵部で10㎝を目安とする
- 手を握って拳を作り、上肢を水平に挙上し、この時の第3中手骨遠位端を計測する
- バランスを崩すことなくできるだけ水平前方に手を伸ばすよう指示し、この時の第3中手骨遠位端の到達点を計測する
- 測定は3回実施し、ポジション1と2の差よりリーチ距離を算出し、3回の平均をFRT値とする
被験者がバランスを崩してステップした場合はやり直しとします。また、リーチをコントロールするような練習は控えるようにしてください。
【メジャー・バーとは?】いわゆる定規のことです。計測する方法はいくつか存在しますが、簡単な方法としては壁にメジャーを貼り付けると容易です。 |
ちなみにアマゾンにもファンクショナルリーチ測定器は売られています。さすがアマゾン。
FRTの参考値について
Duncanらが217人の高齢者を対象として、FRTと転倒リスクの関係性を調査した結果では、6ヶ月以内に転倒する確率は以下のオッズ比であったと報告しています。
FRT | ||||
不可 | ~15㎝以下 | 15~25㎝ | 25㎝~ | |
オッズ比 | 8.07 | 4.00 | 2.00 | 1.00 |
この値から考えるなら、FRT値が25㎝未満では転倒リスクが2倍になり、15㎝以下では4倍、不可の場合は8倍になるといえます。
前述したように、ファンクショナルリーチテストは支持基底面内での重心調整能力を評価しているので、それが難しい場合は補助具を使用して支持基底面を広げるなどの対策が必要となります。