マッケンジー体操とは、ニュージーランドの理学療法士であるロビン・マッケンジー氏によって、1960年代に考案された腰痛体操です。
この記事の目次はコチラ
マッケンジー体操の発見
1956年の当時、腰痛患者に対する脊椎伸展の姿勢は最も悪い姿勢であるというのが通説でした。
その日、マッケンジー氏は来院された患者にベッドでうつ伏せになって待っておくように指示し、しばらく経ってから患者のもとを訪れました。
すると、その治療台は傾斜がつけられており、前の患者が使用したままで放置されていたのです。
これは危ないと急いで患者のもとへ駆け寄り、痛みはないかと尋ねたところ、「この3週間で今が一番いい状態ですよ」と患者は言いました。
これはまさに偶然の発見であり、これまでの通説は間違っているのではないかとマッケンジー氏が考えるようになった要因でもあります。
マッケンジー体操の優れていた点
マッケンジー体操については、その効果よりも、自主的に行えるというのが最大の利点だと私は考えています。
従来はセラピストなどの手によって徒手療法を施術していましたが、それらと同等以上の効果を自主練習で実現できたのです。
経済的な効率を重視するアメリカでは、これほどの有意義な情報はなかったと思います。
だからこそ、米国理学療法士協会から評価されるようになり、世界的に広めることができたのだと考えられます。
すべてが脊椎伸展運動で解決するワケではない
確かにマッケンジー体操で症状が軽減する患者は多いですが、一概にすべての症例に対して有効というワケではありません。
効果を出すためには、どうして腰痛が起きているのかを考え、どのようにアプローチしていくべきかを考える必要があります。
やみくもにマッケンジー体操を指導しても、すべての患者に効果を出し続けることはできません。
以下に、実際に私が使用している評価方法と運動の選択基準について記述していきます。
立位から運動内容を決定する
私が臨床で運動の基準とするのは、腰椎の彎曲の度合いです。
通常よりも前彎が乏しい場合は、脊椎伸展運動(マッケンジー体操)を選択しますが、前彎が強い場合は脊椎屈曲運動を選択します。
前彎が強いのに伸展運動を行うと、症状を助長してしまう可能性もあります。
また、私も腰椎前弯が強くて腰痛持ちなのですが、マッケンジー体操を実施すると明らかに痛みが増します。
反対に、身体を丸めるような屈曲運動を実施すると調子がよくなります。
正しい姿勢に調整するという意味では、これが簡単な選択基準だと思います。
腰椎前弯の減少 | 腰椎前弯の増強 |
痛みの中央化現象
エクササイズの効果判定として、痛みが軽減するかどうかは重要な指標になります。
それに加えて、痛みが中央化していくことも改善の予兆とされています。
中央化とは、下肢にまで痛みが広がっている状態から、徐々に痛みがお尻付近まで移動してくる現象をいいます。
この傾向が現れている場合は、エクササイズは有効であると考えられ、継続していくべき指標となります。
下肢症状あり | 中央化している | 中央化の完了 |
なぜ中央化が起こるのか
痛みが中央部に移動していく理由について、個人的に推察するなら、椎間板の移動によって神経の圧迫部位が変化していると考えられます。
圧迫部が脊髄の正中部から外側部に移行していると考えるなら中央化を説明できますが、ちょっと厳しい気もしますね。
なぜなら、運動による椎間板の移動に関しては議論の余地があるのが現状ですので、あくまでひとつの指標として捉えるようにしてください。
マッケンジー体操の方法
ステップ①
うつ伏せになり、深呼吸をして完全に力を抜き、2〜3分間この姿勢のままでいます。
ステップ②
両肘が肩の下に来るようにして、前腕で上半身を支える姿勢をとります。
この姿勢をとったら深呼吸をして完全に力を抜き、2〜3分間この姿勢のままでいます。
ステップ③
両手を肩の下に置き、手は腕立て伏せをするときの位置に置きます。
そこから両肘を伸ばして上半身を持ち上げていきます。
その際に骨盤やお尻に力が入らないように注意し、痛みに耐えられるところまで上げて1〜2秒保持してから最初の姿勢に戻ります。
ステップ④
両腕をまっすぐに伸ばすことができるようになったら、腰がたわんだ状態を確認しながら1〜2秒保持します。
ここが最大のポイントで、この姿勢で骨盤とお尻、下肢をリラックスさせて息を大きく吐くと、より効果的に腰がたわみます。
このたわみで痛みの軽減や中央化があれば、この姿勢をもっと長く保っておくようにしていきます。
これらの運動を10回1セット、1日6〜8セットで実施していきます。
エクササイズの実施後に運動内容を再検討
指導した運動方法で痛みが増す場合、または痛みが中央から末梢に移動する場合は、運動方法が間違っている可能性があります。
なので、運動を中止するか、運動方向を反対にする必要があります。(脊椎伸展運動を実施していた場合は脊椎屈曲運動へ)
腰痛の原因には多種多様なものが存在しており、特定が困難である場合が多いです。
なので、対症療法にはなりますが、効果的だと考えうる方法から選択していき、効果判定を随時に行っていくことも大切です。