リンパ性浮腫の概要
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リンパ性浮腫は、リンパ管・リンパ節の障害でリンパ液の回収が滞り、慢性的なむくみが出る状態。
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子宮がん・乳がん術後や感染後に多く、女性に好発。完治は難しいため、悪化予防とコントロールが治療目標です。
リンパ系のしくみ(要点だけ)

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組織へしみ出た水分の大半は静脈へ、残りがリンパ管に取り込まれリンパ液として静脈角へ戻る。
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リンパ節は濾過・免疫の要所。リンパ流は遅く、**弁と外からの圧(筋ポンプ・呼吸・圧迫)**で前進します。
むくみが起こる理由
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しみ出る水分 > 吸収される水分 → 組織間に液が残り浮腫。
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静脈うっ滞やリンパ流低下で吸収が落ちると悪化。リンパは押し出す力が弱く滞りやすい。
鑑別の視点(まず原因を見極める)
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全身性:心不全・腎疾患・肝硬変・甲状腺機能低下・薬剤・栄養障害など。
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局所性:静脈性(下肢静脈瘤・深部静脈血栓)、リンパ性浮腫、麻痺性、炎症性など。
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左右差:非対称(片側>対側)なら局所障害を疑う。太さ差2–3cm以上は精査を。
代表的な臨床サイン
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Stemmer徴候:足趾/手指背の皮膚がつまみにくい(肥厚・硬化)。
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圧痕徴候:圧して跡が戻りにくい。
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確定には造影検査(医療機関)。
よくある自覚症状
重だるさ、易疲労、皮膚の乾燥・硬化、衣類の跡が残る。発症部位は下肢が最多(重力の影響)。
リハビリ・保存療法の柱(複合的理学療法)
基本は「浮腫を減らす→維持する」サイクル作り
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徒手的リンパドレナージ(MLD)
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皮下リンパをやさしい圧で、末梢→中枢リンパ節へ誘導。
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強圧は禁物(深部リンパは対象外・損傷リスク)。
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セルフの例:座位で鼠径・膝窩を10秒優しくさする→足首から殿部へ一息でスィープ(片脚3分目安)。
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圧迫療法(弾性着衣・包帯)
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外圧で再貯留を抑え、流れを維持。専門家の採寸・段階圧が安全。
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目安:軽~中等度は20–30mmHg、重度は30–40mmHgを医師と相談。
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皮膚トラブルや動脈疾患がある場合は必ず医療者に確認。
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運動療法(筋・関節ポンプ)
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カーフレイズ、足関節の底背屈、ゆるいエアロバイク、腹式呼吸。
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圧迫着用下での短時間反復が効率的。猫背の矯正で胸郭ポンプも改善。
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スキンケア
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乾燥・傷は感染(蜂窩織炎)リスク。保湿・清潔・爪管理は毎日。
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教育・自己管理
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体重管理、長時間立位・暑熱環境の回避、同側の採血・注射・血圧測定の回避(術後上肢など)。
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水分・塩分のコントロール
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過剰水分・塩分は再貯留を助長。腎・心疾患がある場合は主治医の指示で調整。
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注意すべき禁忌・要注意
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急性蜂窩織炎・発熱・創部感染、急性DVT、増悪する心不全・腎不全、重度動脈閉塞は圧迫やMLDを中止・医師相談。
かんたんセルフルーティン(例:下肢)
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保湿→軽いMLD(足背→下腿→膝窩→大腿→鼠径)
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弾性ストッキング着用(しわ・食い込みゼロに調整)
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足首ポンピング 30–60回/数セット+カーフレイズ 10回×3
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休憩時は下肢挙上(心臓より高く、10–15分)
よくある質問(Q&A)
Q. リンパ性浮腫は治る?
A. 完全寛解は難しいことが多いですが、適切な圧迫・運動・MLDでサイズと症状のコントロールは十分可能です。
Q. 強いマッサージの方が効きますか?
A. いいえ。やさしい圧が原則。強圧はリンパ管・皮膚障害の原因になります。
Q. フライトやサウナは?
A. 長時間座位・機内は悪化要因。着圧+こまめな足首運動を。サウナ等の高温は悪化しやすく短時間・水分適正で。
Q. どんな時に受診すべき?
A. 赤み・熱感・発熱・急な痛み・急速な腫れは蜂窩織炎疑い。すぐに医療機関へ。左右差が急に拡大したらDVT除外も必要です。
Q. どの圧迫圧を選べばいい?
A. 病期・部位で異なります。採寸・処方に基づく段階圧を専門家と決めましょう。
最終更新:2025-10-05
