レビー小体型認知症の概要
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レビー小体型認知症(DLB)は、アルツハイマー型・脳血管性と並ぶ三大認知症の一つ。臨床・病理報告の割合は約10–20%(研究により幅あり)。
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認知症にパーキンソン病様の運動症状を併発しやすく、BPSD(行動・心理症状)が強く出やすいのが特徴です。
BPSD(行動・心理症状)
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抑うつ、不安、幻視・妄想、興奮、易刺激性、脱抑制、異常行動など。
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介護負担は中核症状よりBPSDの強さに左右されがち。
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原則は非薬物的介入を優先:身体・環境ストレスの低減、本人の意思尊重。薬物は十分な説明と同意、少量開始が基本。
診断のキーポイント(要旨)
中核症状(いずれもDLBで典型)
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繰り返し現れる具体的で鮮明な幻視
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自然発生のパーキンソニズム(寡動・筋強剛・姿勢反射障害など)
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注意・覚醒レベルの顕著な変動(日内での“良い・悪い”のゆらぎ)
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レム睡眠行動異常(RBD)(夢の内容通りに動く)
示唆的所見
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抗精神病薬への過敏性
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DAT-SPECT/PETで線条体取り込み低下
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心筋 MIBG シンチ低下
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自律神経障害(起立性低血圧、便秘、排尿障害 等)
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原因不明の一過性意識障害
中核症状2つ以上でDLB、1つ+示唆的所見1つ以上でDLB疑い。
ADとの違い
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AD:病初期から近時記憶障害が目立つ。
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DLB:記憶障害が軽い/遅れることがあり、先行して便秘・抑うつ・RBDなど身体症状が出やすい。
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画像では側頭・頭頂の変化は共通し得るが、海馬萎縮はADほど強くない傾向。MIBG低下はDLBの鑑別に有用。
PDDとの区別(“1年ルール”)
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パーキンソニズム出現から1年以内に認知症:DLB
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長くPDが先行し、その後に認知症:PDD
(本質的病態は連続スペクトラムと考えられ、厳密な線引きが困難な例も)
BPSDの評価
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NPI(Neuropsychiatric Inventory):頻度×重症度で10領域を採点(最大120点)。
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阿部式BPSDスコア(ABS):短時間・簡便でNPIと良好に相関。日常の定期チェックに向く。
疼痛はBPSDを悪化させやすい(不安・攻撃性など)。痛みの拾い上げとコントロールが重要。
治療の概略
薬物療法(要・専門医管理)
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認知機能/BPSD:コリンエステラーゼ阻害薬(ドネペジル、リバスチグミン等)、NMDA受容体拮抗薬(メマンチン)の有効性報告。
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パーキンソニズム:レボドパを慎重に(効果はPDより控えめ、幻覚悪化に注意)。
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抗精神病薬:過敏性が強く、定型や高D2遮断(リスペリドン、オランザピン等)は原則回避。やむを得ず用いる場合はごく少量で厳重モニタリング。
非薬物療法(まずこちらを最大化)
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環境調整:照度・コントラスト・見通しの良い動線、刺激過多回避、安心できるルーティン。
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運動療法:歩行・バランス・筋力の個別プログラム。**外部キュー(メトロノーム等の聴覚刺激)**で歩行改善が見込める。
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自律神経対策:起立性低血圧への体位・弾性ストッキング、便秘対策(水分・食物繊維・活動量)。
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社会的交流の確保:孤立はBPSDを増悪。
リハビリの実務Tips
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歩行凍結・小刻み歩行:リズム刺激、床マーカー、ターンの分割。転倒リスク評価は反復的に。
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幻視への対応:否定でなく安心を提供(照明調整、影の軽減、説明と合意)。
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注意変動:短時間・こまめなセッション設計。良い時間帯に介入を集中。
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家族/介護者支援:BPSDの引き金(疲労・痛み・便秘・環境変化)を予防リスト化し、対応手順を見える化。
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抗精神病薬過敏の啓発:新規導入時は転倒・錐体外路・意識変動を重点観察。
Q&A
Q. 物忘れが軽くてもDLBの可能性はありますか?
A. あります。注意変動・幻視・RBD・自律神経症状が先に出ることが少なくありません。
Q. 幻視への「正しい声かけ」は?
A. まず安心させる(安全確認・照明調整)。頭ごなしの否定はNG。転帰に影響するのは関わりの質です。
Q. リハの最優先は?
A. 安全+自立度の維持。転倒予防、歩行・バランス、便秘や起立性低血圧など全身管理とセットで。
Q. どの評価票を使えば?
A. ABSは短時間で回せ、定期追跡に向きます。詳細把握や研究用途ならNPI。
最終更新:2025-10-05