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上腕二頭筋長頭炎のリハビリ治療


上腕二頭筋長頭炎(長頭腱炎)のリハビリ治療に関する目次は以下になります。

上腕二頭筋長頭炎の概要

上腕二頭筋(biceps brachii)は名前の通りに二つの頭(起始)を持っており、肩甲骨の関節上結節に起始する部分を長頭、肩甲骨の烏口突起に起始する部分を短頭といいます。

上腕二頭筋は肘関節屈曲と前腕回外の動きで最も貢献する筋肉であり、機能的にも非常に重要な筋肉です。

なぜ長頭のみに炎症が起きやすいのかというと、長頭は上腕骨の大結節と小結節の間にある溝(結節間溝部)を通過しており、表層は上腕横靱帯によって浮き出るのを抑えられています。

結節間溝の上は小転子を滑車のようにして角度をなしているため、摩擦を受けやすい構造となっています。

また、投球動作などで急激な負荷が加わると、起始部の関節窩に付着する関節唇が剥離する場合があり、それをSLAP損傷と呼んでいます。

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症状としては、痛み(結節間溝部の圧痛)と関節可動域制限であり、肘関節屈曲や腕下垂時の外旋に軽度の制限が生じます。上腕二頭筋長頭炎は、一般的に50-70歳代の男性に好発します。発症の主な原因は、重いモノを持ち上げて運ぶ動作などを繰り返し、長頭腱に繰り返しの機械刺激が加わることで起こります。

また、高齢者などでは加齢に伴う筋萎縮が起こっており、そこに高負荷が加わることで損傷発症をきたしているケースもあります。炎症が強い時期では、食べ物を口に運ぶ動作でも痛みが出現します。

上腕二頭筋について

上腕二頭筋は上腕前面の表層を走行している筋肉で、いわゆる「力こぶ」を作っている部分です。短頭は力こぶの前面から、長頭は後面から触知できます。

肩甲骨の関節上結節と烏口突起から起始した筋は、上腕を下行前面しながら下行していき、前腕の橈骨粗面と前腕筋膜に停止します。

肩関節と肘関節をまたぐ二関節筋であるため、肩関節の屈曲(主に長頭)と水平内転(主に短頭)にも作用します。前述したように、主な作用は肘関節の屈曲と前腕の回外です。

上腕二頭筋

上腕二頭筋長頭炎の検査法

1.ヤーガソンテスト
肘関節90度屈曲位でドアノブを回すように内旋させ、検査者は外旋に抵抗をかける
肩関節前面(結節間溝)に痛みが生じた場合に陽性
2.スピードテスト
肘伸展回外位で肩関節を屈曲させていき、検査者は反対方向に抵抗をかける
肩関節前面(結節間溝)に痛みが生じた場合に陽性

リハビリテーション

1.安静期(強い疼痛が伴う期間で約1-2週間)
薬物療法 炎症鎮痛薬、ステロイド剤の注射
生活指導 安静指示
患部固定 三角巾、上着ポケットに手を入れる
物理療法 アイスパック、電気刺激、超音波
2.回復期(疼痛が落ち着いてきた約2週間以降)
ストレッチング 胸椎・胸郭、円回内筋、撓側手根屈筋
運動療法 腱板筋強化
生活指導 負荷の高い生活動作について指導
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薬物療法と生活指導

痛みは腱損傷に伴う炎症が原因であるため、治療の基本は安静にして損傷部位が治癒し、炎症が治まるのを待つことが第一です。

しかしながら、強い痛みは日常生活に支障をきたすことになるため、消炎鎮痛剤などを用いて痛みの緩和を図ることになります。

炎症を抑えることが目的の内服薬なら、ロキソプロフェンやイブプロフェンといったプロピオン酸系がとくに効果を発揮します。イブプロフェンは市販薬(イブA錠など)としてネットでも購入が可能です。

上腕二頭筋腱炎のように炎症部位が明白である場合は、湿布などの外用消炎鎮痛薬を使用することがお勧めです。

ジクロフェナクナトリウムやインドメタシン、フェルビナクなどの消炎成分がありますが、市販薬の中ではジクロフェナクナトリウム(商品名:ボルタレンEXテープなど)が最も鎮痛作用が強いです。

圧痛が認められる部位(結節間溝)に貼付することで痛みをやわらげることができます。

痛みや炎症が強い場合はステロイド注射が実施されますが、こちらは効果が高い反面に、腱を弱くしたり、回復を遅延させるような副作用があります。

再度書きますが、薬物療法はあくまで痛みを抑えるための対症療法(根本的な解決手段ではない)であり、それで痛みがなくなったところで治ったわけではありません。

しっかりと炎症が治まるまでは安静を保ち、薬を使用しなくても問題がない状態まで改善することが大切です。痛みが和らいできたらストレッチングの方法を指導し、自己管理しながら再発予防をはかるようにしていきます。

患部固定と物理療法

重度の場合は上腕二頭筋長頭へのストレスを最小限にするため、肘関節屈曲および前腕回外位にて固定します。

三角巾やアームホルダーを使用することでストレスを最小限に抑えられますが、生活にも大きく支障をきたすことになります。

炎症部位は触れると熱をおびていますので、冷やすことで痛みが楽になります。痛みが楽になる間は定期的に使用するようにし、とくに仕事などの都合で安静が保てない患者は使用後のアイシングを徹底します。

電気刺激や超音波治療などは除痛や組織の修復促進を期待できますので、使用が可能な場合は併用してもよいです。

効果的なストレッチ方法

1.上腕二頭筋の伸張

長頭腱への刺激を軽減するには、上腕二頭筋自身の柔軟性が必要となります。しかし、通常のストレッチでは腱部に負荷が加わるため推奨できません。

なので、筋腹に直接的な伸張を加えるダイレクトストレッチやストリッピングなどのマッサージが推奨されます。

ストリッピングとは筋の起始から停止まで圧を加えた指を筋線維の方向に沿って滑らせていく方法ですが、ここでは筋腹のみに実施し、痛みがないように注意して行います。

2.胸椎・胸郭の伸張

二関節筋である長頭の起始もしくは停止が拘束された状態では、筋や腱に伸張ストレスが加わりやすく、損傷の原因となります。

そのため、ストレスを軽減するためには、肩甲骨や前腕の柔軟性、胸椎・胸郭の可動性を確保しておく必要があります。

胸椎及び胸郭の柔軟性を向上させるために、背部の肩甲骨下角あたりに枕やクッションを置き、胸椎の前彎を強調するようにします。

その際に、施術者が肩上方から圧を加えることで、より強力的にストレッチすることも可能です。

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肩甲上腕関節のモビライゼーション

長頭腱の腱鞘内部での滑動は見かけ上のものであり、実際は上腕骨頭との相対的な位置関係の変化にすぎません。

ですので、関節上腕靭帯や烏口上腕靭帯の柔軟性が低下すると関節窩面上での骨頭の回転が阻害され、長頭腱の活動が障害されてストレスが加わります。

よって、肩関節にモビライゼーションを実施することにより、靱帯や軟部組織の柔軟性を確保しておくことが有用となります。

回旋腱板筋トレーニングの方法

上腕二頭筋は肘屈曲と前腕回外の主動作筋ですが、わずかながら肩関節を挙上する役割も担っています。

通常、肩関節の挙上は三角筋が担いますが、これが腱板断裂肩や外転筋力が低下した肩では、上腕二頭筋の筋活動が増大する傾向にあります。

このことから、腱板機能が低下している症例では、長頭炎の発生リスクが高くなる可能性があるのでアプローチが必要となります。

1.肩関節外旋(棘下筋/小円筋)
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【方法】肘を90度屈曲して脇にタオルを挟みます。タオルが落ちないように注意しながら、チューブを外側に引っ張り、肩関節を外旋させます。
2.肩関節内旋(肩甲下筋)
腱板筋,トレーニング,腱板断裂,方法,大円筋,肩甲下筋
【方法】肘を90度屈曲して脇にタオルを挟みます。タオルが落ちないように注意しながら、チューブを内側に引っ張り、肩関節を内旋させます。
3.肩関節外転(棘上筋)
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【方法】立位にて足でチューブの端を踏んで固定し、もう片方の先端を手でつかみます。その姿勢から肩関節の外転運動を実施します。

手術を要する難治例について

上腕二頭筋長頭腱炎の治療では、基本的に保存療法にて対応します。

しかしながら、3カ月以上の保存療法に抵抗する難治例かつ著しい不全断裂(50%以上)を伴う症例に対しては、手術が適応される場合もあります。


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The Author

中尾 浩之

中尾 浩之

1986年生まれの長崎県出身及び在住。理学療法士でブロガー。現在はフリーランスとして活動しています。詳細はコチラ
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