上腕二頭筋長頭腱炎のリハビリ治療について解説します。
上腕二頭筋長頭腱炎の概要
上腕二頭筋は2つの頭(起始)を持っており、肩甲骨の関節上結節に起始する部分を長頭、肩甲骨の烏口突起に起始する部分を短頭といいます。
上腕二頭筋は肘関節屈曲と前腕回外の動きに関与する筋肉であり、長頭は肩関節屈曲に、短頭は肩関節水平内転にも貢献します。
長頭のみに炎症が起きやすい理由ですが、長頭腱は小転子の上を滑車のように角度をなして走行しているため、摩擦を受けやすくなっています。
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また、上腕二頭筋長頭腱炎は腱板断裂を伴っていることがほとんどで、上腕骨頭が前方に変位していることが多いです。
上腕骨頭が前方変位している原因としては、肩甲骨の外転(プロトラクション)と棘下筋の硬さがあります。
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上腕骨頭が前方に変位していると、上腕二頭筋長頭腱と小結節の摩擦力が強まることにつながります。
上腕二頭筋長頭腱炎の症状としては、結節間溝部の圧痛と収縮時痛(ドアノブをひねる動作など)になります。
炎症が強い時期は、食べ物を口に運ぶ動作でも痛みが出現します。
筋肉が弱化してきた中年以降の男性に好発し、重いモノを持ち上げて運ぶ動作などを繰り返すことで損傷します。
そのため、仕事については必ず聴取しておくようにし、治療を進めていくうえで患部に負担がかからないように調整することが大切です。
基本的に保存療法で治癒しますが、難治例かつ著しい不全断裂(50%以上)を伴う症例に対しては手術が適応される場合もあります。
SLAP損傷について
上腕二頭筋長頭炎の検査法
1.ヤーガソンテスト |
意義)上腕二頭筋長頭腱炎の判定 |
方法)座位にて肩関節軽度伸展・肘関節90度屈曲・前腕回内位に保持し、患者に前腕回外運動を指示し、検査者は運動を止めるように抵抗をかける |
判定)肩関節前面(結節間溝)に痛みが生じた場合に陽性 |
2.スピードテスト |
意義)上腕二頭筋長頭腱炎の判定 |
方法)座位にて肩関節軽度屈曲・肘関節伸展・前腕回外位に保持し、患者にその位置で上肢を保持させ、検査者は肩関節伸展方向に抵抗をかける |
判定)肩関節前面(結節間溝)に痛みが生じた場合に陽性 |
患部の安静
炎症にて痛みが生じている間は患部の安静が重要ですが、仕事をしている人などは難しい場合も少なくありません。
上腕二頭筋長頭は肩関節外旋位での屈曲運動で最も負荷が加わるため、物を持つ動作などでは手が開かないように指導が必要です。
なるべく痛みのない動きを身につけてもらい、今後の再発予防にも結びつけていくことがセラピストには求められます。
上腕二頭筋のリラクゼーション
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上腕二頭筋はアナトミートレイン(筋膜連結)におけるDFALに属しており、このラインは非常に硬くなりやすい傾向にあります。
上腕二頭筋は小胸筋と繋がりを持つため、まずは小胸筋からリラクゼーションしていくほうがよいです。
上腕骨頭の前方変位を矯正
前述したように肩甲骨の外転は上腕骨頭を前方変位させるため、外転に作用する小胸筋はできる限りに緩めておくようします。
他にも、棘下筋の短縮や肩甲下筋の筋力低下、大胸筋の過緊張なども前方変位に働くので問題がないかを確認していきます。