下肢の筋膜の硬さを簡単に調べる方法

1) なぜ膝蓋骨で“筋膜の硬さ”が分かるのか

  • 膝蓋骨の周囲には内・外側膝蓋支帯(パテラ・レティナキュラム)が広がり、これは広筋腱・膝蓋腱・大腿筋膜(筋膜 lata)の連続から成る線維性組織(筋膜性)

  • したがって、膝蓋骨の滑走方向に対応する支帯の硬さ同側の筋膜連結の硬さのヒントになる。


2) 自他覚でできる簡易テスト(臨床版)

起始肢位:仰臥位・膝伸展近位(軽度屈曲可)。大腿四頭筋はできるだけリラックス。
操作:膝蓋骨を外側/内側へ優しくグライド。痛みがある場合は中止。
目安:膝蓋骨幅の1/4〜1/2程度の可動が一般的な目安(粗い指標)。

① 外側への滑りが“硬い”

  • 示唆内側膝蓋支帯〜内側構造の緊張↑(=内側の筋膜連結の硬さ

  • 関連しやすい部位内側広筋(VM/VMO)股関節内転筋群後脛骨筋(DFL経路)

  • 随伴所見:大腿内側の圧痛、膝内側/足底内側痛、VMの遅発・低出力 など

② 内側への滑りが“硬い”

  • 示唆外側膝蓋支帯〜外側構造の緊張↑(=外側の筋膜連結の硬さ

  • 関連しやすい部位腸脛靱帯(ITB)/外側広筋腓骨筋群(LL経路)

  • 随伴所見外側縁荷重、外側大腿の張り、スウェイバック傾向、殿筋群・コアの弱化

注意:術後・急性期・顕著な膝蓋大腿痛では過度な動員は禁忌。まずは痛みを誘発しない評価に留める。


3) 介入の流れ(“緩める→動かす→鍛える→統合”)

A. 外側滑りが硬い=内側の硬さが主体

  1. 抑制/リリース

    • 側臥位:患側を下、膝軽度屈曲。大腿内側(内転筋群)を近位→遠位へ穏やかにスライド/牽引して筋膜の滑走性を改善。

    • 足部後脛骨筋の過緊張があれば軽いストレッチ/足内在筋の活性化で内側過緊張の分散

  2. モビライゼーション

    • 仰臥位膝蓋骨の外側グライド(痛みなし・微小〜中等度、反跳なし)。

  3. 賦活

    • クワドセッティング〜末伸展位TKEで**内側広筋(VM)**のタイミング再学習。

    • **股関節外旋・外転筋(大殿筋/中殿筋後部)**を併行で賦活(膝蓋骨を第2趾方向へ導く下地作り)。

  4. 統合

    • ステップダウン/スクワットで膝が内側に入らないラインを反復。足圧は三点(踵・母趾球・小趾球)

B. 内側滑りが硬い=外側の硬さが主体

  1. 抑制/リリース

    • ITB—外側広筋—腓骨筋群過度に緩めすぎない範囲でスライド/スクラブ。

  2. モビライゼーション

    • 膝蓋骨の内側グライド(痛みなしの範囲、反跳なし)。

  3. 賦活

    • コア(フロントプランク)/側方安定化(サイドプランク)/片脚ブリッジ骨盤のスウェイ抑制

    • 中殿筋・大殿筋をセットで強化し、外側構造への受動依存を低減。

  4. 統合

    • 片脚立位→ランジ→歩行で骨盤正中+膝は第2趾方向を維持。必要に応じシューズ/インソール併用。


4) 再評価と記録(短時間でOK)

  • 膝蓋骨可動(外側/内側:易・普通・やや硬い・硬い)

  • 圧痛(大腿内側/外側、ITB、VM、腓骨筋 など):NRSや部位図で

  • 機能片脚立位のブレスクワット時の膝ライン歩行時の膝蓋骨方向

  • 主観:痛み・違和感・重さの変化


よくあるQ&A

Q1. どのくらい動かせれば正常?
A. 目安は膝蓋骨幅の1/4〜1/2ですが個体差あり。左右差・痛みの有無・反跳を総合で判断。

Q2. リリースは毎回どれくらい?
A. 1部位1〜2分/痛みなしを原則。直後に目的筋の賦活動作統合を必ずセットで。

Q3. ITBは“緩めすぎる”と良くない?
A. はい。ITBは外側安定化に寄与。過度のリリースで**動揺性↑**の懸念。コア・殿筋賦活と併用が安全。

Q4. VMOだけを狙って鍛えられる?
A. 厳密な“隔離”は困難。末伸展域のTKE+足部/骨盤ライン制御相対的に内側広筋のタイミングを整えるのが実用的。

Q5. どんなときに中止・受診?
A. 強い膝蓋大腿痛、急性腫脹、ロッキング、術後早期、明確な外傷歴があるときは評価のみとし、整形外科へ


まとめ

  • 膝蓋骨の“外/内”滑りの硬さは、内外の筋膜連結の過緊張の簡易指標。

  • 介入は**“緩める→動かす→鍛える→統合”**をワンセットにし、その場で再評価

  • 外側依存(スウェイバック)にはコア+殿筋内側過緊張にはVMタイミング+股外旋外転の組み合わせが要点。


最終更新:2025-10-08