ヒトが立位や座位などの姿勢を保つためには、抗重力筋(姿勢保持筋)が適度に緊張している必要があります。
体幹の主な抗重力筋は脊柱起立筋群となっていますが、厳密に書くと「多裂筋」と「最長筋」が働いている状態が理想です。
しかし、中には脊柱起立筋のひとつである「腰腸肋筋」が過度に緊張して、姿勢を保っている場合があります。
そういったケースでは慢性的に腰痛を抱えていることが多く、コアトレで片脚ブリッジなどを行うとハムストリングスが攣りやすいです。
脊柱起立筋群と一口に言っても、多裂筋などの深層筋は遅筋線維が豊富で非常に疲労しにくい構造となっています。
それに対して、腰腸肋筋などの表層筋は速筋線維が豊富で瞬発力に優れてはいますが、常に緊張が必要な姿勢保持には不向きです。
そんな腰腸肋筋が立位の保持で動員されている場合は、膨隆して硬くなってしまい、虚血状態となって痛みを起こすことにつながります。
どうして腰痛持ちのヒトは下肢が攣りやすいかというと、脊柱起立筋は筋膜を通じてハムストリングスや腓腹筋と連結しているからです。
そのため、腰腸肋筋に緊張が入らないようにするためには、立位で腓腹筋が緊張しないように調整することが必要となります。
正常の場合は、腓腹筋の表層にあるヒラメ筋が歩行や立位の保持に貢献していますが、それが前方重心となると腓腹筋まで緊張します。
実際に脊柱起立筋が膨隆している患者に立位をとってもらい、下腿を触診してみると表層(腓腹筋)まで硬くなっていることがわかります。
前方重心となる原因は様々ありますが、①腸腰筋の短縮、②深層筋の筋力低下、③脊椎の変形などが挙げられます。
問題となっている部分を調整して、SBLの過剰な緊張を抑制することができたら、脊柱起立筋の膨隆や腰痛が軽減できます。
姿勢の矯正は簡単ではありませんが、地道に正しい努力を積み重ねることで結果も少しずつ感じることができるはずです。
ここでの考察はあくまで個人的な見解ですが、慢性腰痛を改善するための一案として活用してみてください。