両上肢の痛みを訴えているので頸部をチェックしてみても、頸椎由来の神経症状は見当たらない。
肩関節周囲の筋肉に圧痛が認められるのでマッサージをしても、その場だけ少し良くなって長続きはしない。
このようなケースの多くに筋膜性疼痛が関与しており、痛みに波があったり、根本的な改善には至らないことによく遭遇します。
両上肢に痛みが起きている場合は、上肢のみにアプローチするのではなく、頸部や体幹の筋膜ラインにまで目を向けることが必要です。
実際にどのような連結をしているかを、アナトミートレインを参考にして解説していきます。
肩関節前方に痛みを訴えるケース
臨床でよく遭遇する肩関節前方の痛みの原因として、ディープ・フロントアーム・ライン(DFAL)の問題があります。
筋筋膜の路線を通して圧痛が認められやすく、小胸筋や上腕二頭筋、母指球筋の硬さをチェックすることが重要です。
上肢の片側性筋膜性疼痛の場合は、このライン上の硬結部に筋膜リリースや筋膜マニピュレーションを施すことで効果を発揮します。
ただし、両側性に痛みがあるケースにおいては、これよりも中心部にある筋膜に問題がある可能性が高くなります。
DFALはディープ・フロント・ライン(DFL)に連結しますので、DFLに属する筋肉にも圧痛や硬結が認められます。
DFLは非常に多くの組織が繋がりを持ちますのでややこしいですが、この中で上肢痛の際にチェックすべきは「斜角筋群」です。
両側の肩関節前方に痛みを訴えるケースでは、斜角筋群が硬くなっていることが多いので、しっかりとリリースすることが大切です。
肩関節側方に痛みを訴えるケース
臨床でよく遭遇する肩関節側方の痛みの原因として、スーパーフィシャル・バックアーム・ライン(SBAL)の問題があります。
SBALにおいては、僧帽筋上部や三角筋、手根伸筋群(とくに短橈側手根伸筋)の硬さや圧痛をチェックすることが重要です。
上肢の両側性に痛みがあるケースにおいては、先ほどのように上肢の筋膜ラインよりも中心部にある筋膜に問題がある可能性が高くなります。
SBALはスーパーフィシャル・バック・ライン(SBL)に連結しますので、SBLに属する筋肉にも圧痛や硬結が認められます。
SBLは腰痛を引き起こす主要ラインなので、上肢の痛みを感じる以前から強い腰痛が生じていることも多いです。
治療においては、脊柱起立筋(腰背部)やハムストリングス、下腿三頭筋の筋膜リリースを行うことが有効となります。
筋膜性疼痛は治るのか
筋膜性疼痛の治療法はいくつも存在しており、その代表的な方法が筋膜リリースと筋膜マニピュレーションになります。
私は専門的に学んでいるわけではないので効果については保証できませんが、これらの方法で一定の効果が期待できると臨床で感じています。
ただし、筋膜性疼痛は痛みに波が起こりやすく、痛みの場所が移ったりと症状が安定しないことがほとんどです。
だからこそ病院では原因が特定できずに難治性の慢性疼痛として扱われることが多く、根本的な解決に至らないわけです。
それでも筋膜の連結上に問題があることは確かな事実だと思いますので、勉強することで臨床家は視野も広がると思います。
興味がある方は、ここで紹介した書籍を参考にして、是非とも勉強してみてください。