中足骨骨折のリハビリ治療

中足骨骨折のリハビリ治療について、わかりやすく解説していきます。

中足骨骨折の概要

中足骨骨折は第2-4指と第5指で大きく経過が異なるため、ここでは区別しながら記述していきます。

ちなみに、第1指の中足骨骨折は非常に稀なので除外します。

足部の構造|中足骨骨折

第2-4指の中足骨骨折

受傷機転として、重量物が足背部に落下した場合や過剰使用による疲労骨折によって多くは発症します。

疲労骨折では、ランニングやジャンプ動作による過度な体重負荷が足部アーチに繰り返し加わることで起こります。

発生率は第3中足骨が半数を占め、第2、第4の順に続きます。

中足骨骨折|第三中足骨

第5指の中足骨骨折

受傷機転として、重量物が足背部に落下した場合や足関節内反を強制された場合に多くは発症します。

第5中足骨粗面には短腓骨筋(外反に作用)が停止しており、この筋肉が内反外力に対抗して強く収縮することで中足骨の近位部が剥離骨折を起こします。

下駄を履いて歩くと起こりやすいため、下駄履き骨折とも呼ばれており、最初に症例報告をしたJones氏の名前をとってジョーンズ骨折とも呼ばれます。

強い痛みにて歩行困難例には、ギプス固定にて1〜2週間の完全免荷とし、その後は足底板を使用して疼痛のない範囲で部分荷重を実施します。

疼痛は2〜3週間でほぼ消失しますが、前足部にみられる骨折の中では難治性であり、骨癒合までには6〜10週間を要します。

中足骨骨折|第五中足骨

疲労骨折における治療のポイント

過用症候群(オーバーユース)にて疲労骨折を発症している場合は、まずは安静にすることが第一です。

そのまま運動を続けてしまうと骨折の状態が悪化していき、難治性骨折に移行する場合も少なくありません。

治療中はランニングなどの中足骨に負荷がかかる動作は一切禁止して、免荷歩行の指導や物理療法による癒合促進を中心に実施していきます。

骨癒合には、①骨折部の接合、②固定、③血流、④適度な圧迫刺激といった癒合の四条件が必要となります。

リハビリテーション

1.完全免荷期(発症から約0-2週間)

方法 内容
生活指導 松葉杖の指導
装具療法 ギプス固定
癒合促進 超音波、TENS、患部外トレーニング

2.部分荷重期(2-6週間)

方法 内容
徒手療法 足趾のストレッチ、足底部のマッサージ
運動療法 エアロバイク、神経筋協調運動
生活指導 踵部歩行の指導、足底板の作成
物理療法 超音波

電気刺激療法(TENS)

TENSを仮骨形成の前段階である炎症期より実施することで、痛みや骨形成に対して比較的良好な結果が得られることが報告されています。

また、末梢血液循環の改善や周囲筋の萎縮予防にも効果が期待できます。

出力は感覚閾値前後で使用することが重要で、それ以上では短腓骨筋が収縮して骨離開を起こしてしまうリスクがあるので注意が必要です。

頻度は1日2回、毎回30分、3日間続けます。

超音波による非温熱効果

超音波はコラーゲン含有量が高い組織ほど吸収率が高く、その中でも骨は最も吸収しやすい部位に属しています。

治療効果として、細胞内カルシウムの増加や線維芽細胞による蛋白合成率を高める働きがあるため、修復期の仮骨形成を促進する効果が期待できます。

通常、骨折に対する超音波は深達性があって温熱効果の少ない1MHzが使用されますが、中足骨は皮下なので3MHzの低出力でも構いません。

頻度は1日1回、毎回20分、骨癒合が完了するまで実施します。

とくにジョーンズ骨折は難治性骨折なので、癒合への積極的な介入が必要です。

中足部骨折の超音波治療

引用元:http://kotoseikeigeka.life.coocan.jp

患部外トレーニング

骨折部の癒合には接合や固定が不可欠ですが、これらは癒合に必要な血流を阻害してしまう方向に働いてしまいます。

その対策として、患部の動きに影響を与えない周囲の筋肉をトレーニングすることにより、患部への血行を促進するように働きかけていきます。

ここに関してはリスクも伴いますので、骨折部が離開する方向に働く筋肉が収縮しないように最善の注意をはらっていく必要があります。

以下に中足骨に起始停止を持つ筋肉を列挙します。

中足骨に起始がある筋肉

筋肉 起始部
母趾内転筋斜頭 立方骨,外側楔状骨,第2・3中足骨底(長足底靱帯,長腓骨筋の腱,第4中足骨底にも起始部が広がる場合も)
短小趾屈筋 第5中足骨底,長足底靱帯,長腓骨筋の腱鞘
小趾対立筋 第5中足骨の骨底および長足底靱帯
底側骨間筋F 第3-5中足骨の内側
背側骨間筋F 中足骨の相対する面,長足底靱帯

※母趾内転筋斜頭は起始の一部を中足骨に持つ

中足骨に停止がある筋肉

筋肉 停止部
前脛骨筋 内側楔状骨,第1中足骨底
長腓骨筋 内側楔状骨,第1中足骨底
短腓骨筋 第5中足骨粗面
第三腓骨筋 第5中足骨底の背面

第5中足骨は動きのある停止側の付着部を持つ筋肉を2つも有しているため、骨離開には注意を要します。

足底挿板療法

第5中足骨骨折に対する足底板の目的は、足部を内側荷重に誘導することと、短腓骨筋腱の収縮力を弱める目的があります。

そのため、どの足底板も足の外側が高くなったものを使用し、さらにヒールサポートによって骨折部への圧を逃がしています。

中足骨折の免荷装具|足底挿板

踵部歩行について

名前の通りに踵部分で歩く方法で、つま先から踏み込むをなくすことによって骨折部への負担を軽減することができます。

通常なら仮骨形成後は癒合を促進するために患部へ負荷をかけるのですが、中足骨の場合は長軸方向へ負荷をかけるのが難しい状態にあります。

歩行時の荷重は横軸方向(離開方向)に負荷がかかってしまうため、踵部歩行のような方法を身につける必要があります。

踵部歩行では足関節の背屈が必要ですが、過剰な努力性となる場合は短腓骨筋の収縮が加わるため、力が入らないように注意が必要です。

難しい場合は松葉杖などの補助具を使用した免荷歩行にて、骨癒合の完成までは過ごす必要があります。

踵部歩行

神経筋協調運動

足部の損傷や固定では、足底の感覚機能低下を及ぼす原因となり、歩行時の障害を招くことになります。

そのため、術後早期より感覚入力トレーニングやタオルギャザーといった神経筋協調運動の実施が推奨されています。

歩行のように骨折部に離開が生じるような負荷はないため、医師の指示のもと、努力性の少ない範囲で行っていきます。


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The Author

中尾 浩之

中尾 浩之

1986年生まれの長崎県出身及び在住。理学療法士でブロガー。現在は整形外科クリニックで働いています。詳細はコチラ
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