この記事では、中間広筋を治療するために必要な情報を掲載していきます。
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中間広筋の概要
中間広筋は大腿前面深層に位置しており、大腿四頭筋の中で膝関節伸展への貢献度が最も高い強力な筋肉になります。
大腿骨前面に幅広く起始することから、大腿骨骨折などの大腿部に生じる外傷により癒着や瘢痕化を起こしやすくなっています。
中間広筋の中央部深側からは膝関節筋が分岐しており、こちらは膝蓋骨ではなく膝蓋上包(膝蓋上嚢)に停止しています。
膝蓋骨に付着する筋線維束を中間広筋、膝蓋上包に付着する筋線維束を膝関節筋と覚えておくと理解しやすいです。
基本データ
項目 |
内容 |
支配神経 | 大腿神経 |
髄節 | L2-4 |
起始 | 大腿骨の前面および外側面 |
停止 | ①膝蓋骨の上縁
②膝蓋腱を介して脛骨粗面に付着 |
栄養血管 | 大腿動脈 |
動作 | 膝関節の伸展 |
筋体積 | 606㎤ |
筋線維長 | 7.4㎝ |
速筋:遅筋(%) | 50.0:50.0 |
運動貢献度(順位)
貢献度 |
膝関節伸展 |
1位 | 中間広筋 |
2位 | 外側広筋 |
3位 | 内側広筋 |
4位 | 大腿直筋 |
大腿の断面図
大腿中央を断面でみた場合、中間広筋は外側広筋の深層に位置しており、外側ではその境目は不明瞭となっています。
そのため、中間広筋と外側広筋の間での癒着は伸展拘縮(屈曲制限)の要因となり、治療ではこの解剖学的特性を考慮する必要があります。
筋力トレーニング
体幹が前傾してしまうと効果が弱くなるので、上体が曲がらないように意識しながらスクワット運動を行います。
トリガーポイントと関連痛領域
中間広筋の圧痛点(トリガーポイント)は起始付近に出現し、関連痛は大腿前面の深部に起こります。
ジムでの大腿四頭筋の酷使や過度のクライミングなど、大腿四頭筋に過度のストレスを与える運動は中間広筋にトリガーポイントを生じさせる原因となります。
歩行や階段の上りなどで痛みが悪化し、長時間座った後に立ち上がると膝を伸ばせなかったり、朝のこわばりがあると足を引きずることもあります。
中間広筋の歩行時の筋活動
中間広筋は遊脚終期(TSw)の後半より活動を開始し、荷重応答期(LR)には遠心性に働きながら膝関節をコントロールしていきます。
関連する疾患
- 膝関節拘縮
- 大腿骨骨幹部骨折
- 大腿骨顆上骨折
- 中間広筋挫傷 etc.
膝関節拘縮
中間広筋の瘢痕化(膝蓋上包の癒着)は、重度の膝関節屈曲制限をきたす原因となります。
理由として、膝蓋上包は前後方向に膜が存在していますが、膝関節を深く曲げた際は後方がキャタピラのように前方に移動していきます。
膝関節の炎症(関節水腫)が長期化して膝蓋上包が癒着すると、キャタピラのように移動することができずに重度の屈曲制限をきたします。
癒着すると手術以外で剥離することは難しいため、膝関節の炎症時は中間広筋の収縮を促して癒着の防止に努めることが大切です。
また、PFP(Prefemaral Fat Pad)は膝関節を屈曲すると内側と外側に拡がりながら扁平化するため、大腿四頭筋腱は大腿骨に近づいて走行する形となり、伸張距離が少なくてすみます。
PFPが機能的変形するだけの柔軟性を失い、自由に高さを変化できなくなると屈曲制限をきたすため、PFPの拘縮改善を目的とした表面への持ち上げ操作や扁平操作が必要となります。