五十肩はリハビリをしても治りません。

五十肩は医療用語で肩関節周囲炎と言いますが、名前の通りに肩関節周囲に原因不明の炎症が起きる症状をいいます。

炎症とは怪我をしたあとに腫れて赤くなるような状態と同じですが、それが怪我をしてもいないのに理由なく肩周囲に生じるわけです。

五十肩がリハビリで治らない理由

怪我のように目に見えてるわけではないのでイメージしにくいですが、ぶつけて腫れたところがリハビリで治るかと尋ねられたら、それは難しいということは誰でも容易に想像できるはずです。

理学療法士などが行うリハビリというのは、拘縮や筋力低下、不良姿勢などが対象となっており、炎症を治す手段は存在しません。

炎症を抑えるためにはステロイド注射や抗炎症薬が有効ですが、これはあくまで一時的に痛みを軽減するだけです。

鍼治療やお灸、マッサージなども炎症には効果がありませんので、基本的には治るまで待つしかありません。

炎症が落ち着くまでの期間

五十肩の炎症期間

一般的に、発症から2〜3ヶ月で炎症はピークに達し、強度の炎症にて夜間や安静時にも痛みが伴うようになります。

その後は徐々に炎症は落ち着いていき、6〜8ヶ月ほどで痛みは落ち着く傾向にあります。

ただし、炎症がなくなるのと五十肩が治癒するのはイコールではなく、そこからは肩関節に生じた拘縮が痛みを引き起こします。

肩関節に拘縮が起きる原因

正常な関節包

怪我をしたあとの皮膚をイメージしていただくとわかりやすいですが、治ったあともしばらくは皮膚が硬くなっています。

それと似たようなもので、肩周囲の炎症が落ち着いたあとは、肩関節を覆っている関節包に短縮が生じた状態となります。

そうなると肩を動かした際に上腕骨頭の軌道がずれて、周囲の組織と衝突して痛みや拘縮(可動域制限)を引き起こします。

短縮した関節包

五十肩に有効なリハビリ方法

タイトルで「五十肩はリハビリをしても治らない」と書いたのは以上の理由からですが、厳密に書くと有効な場面もあります。

それは炎症が落ち着いた後の時期であり、短縮した関節包を押し広げるようなストレッチが効果的といえます。

これを専門用語で関節モビライゼーションといいますが、短縮が存在する方向に骨頭を施術者が押し込む治療法となります。

肩関節周囲炎の関節モビライゼーション

拘縮の原因が関節包の短縮である場合は、関節モビライゼーションを加えることで即時に動きを改善させることができます。

ただし、これだけで完全に動きが元に戻るわけではなく、炎症が完全に消失して症状が安定していないことには完治とはなりません。

完治までは1年以上かかる

どんなゴッドハンドでも五十肩(肩関節周囲炎)を治せないことは、これで理解できたかと思います。

平均で1〜2年ほどをかけて関節包の肥厚や癒着が改善していき、自然にでも治癒していくことができます。

そのため、リハビリを効果的に受けたいなら、炎症のピークを過ぎて症状がある程度に落ち着いてからがよいでしょう。

もしもあなたが療法士なら、前述したような経過をたどることを理解し、炎症があるのに無理な運動をさせないように注意してください。


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The Author

中尾 浩之

中尾 浩之

1986年生まれの長崎県出身及び在住。理学療法士でブロガー。現在は整形外科クリニックで働いています。詳細はコチラ
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