介護保険制度における住環境整備の対象や限度額などについて解説していきます。
この記事の目次はコチラ
住宅改修費に関する支給限度額
支給限度額は、住宅改修が被保険者の資産形成につながらないことを考慮し、改修範囲も比較的小規模のものを対象としています。
そのため、これらに通常要する費用を勘案して、支給限度基準額は20万円と定められています。介護保険であるため、自己負担額は1割(又は2割)です。
そのため実際の支給額は20万円の1-2割なので16-18万円が上限になります。介護保険が2割負担になる人の条件はこちらの記事で詳しく解説しています。
給付方法は、被保険者が事業者に費用を支払った後、市町村から被保険者へ費用の8-9割が支給される償還払い形式をとっています。
市町村によっては受領委任払い(自己負担額のみの支払い)を認めている場合もあるので確認が必要です。
支給は1回の住宅改修のみで適用されるわけではなく、限度額内なら何度でも申請することができるのも特徴のひとつです。
住宅改修費の支給を受けられる対象
介護保険法に基づいて住宅改修費は支給されており、通常は要支援や要介護認定を受けている方々が対象となります。
しかし、認定を受けていなくても改修が必要と認められる場合には、市町村から被保険者に対して住宅改修費が支給されます。
要介護認定の申請から決定までは1カ月以上はかかってしまうので、転倒の危険性があり、すぐにでも改修に取りかかりたいときは使える知識かと思います。
基本的に支給限度基準額は20万円までですが、二つほど再度支給を受けられる(リセットして20万円に戻る)方法があります。
ひとつは急激な状態の悪化(要支援・要介護状態区分で3段階上昇)が認められた場合です。(限度1回)
もうひとつは転居した場合であり、こちらも改めて支給限度基準額までの住宅改修費の支給を受けることができます。(何度でも)
住宅改修の対象範囲及び対象行為
住宅改修の対象外となる場合として、住宅を新築する場合や、増築に伴う新たな居室に対しては支給対象とはなりません。
住宅改修に合わせて支給対象外の工事が行われた場合は、対象部分のみを適切に抽出し、支給対象となる費用を算出する必要があります。
住宅内に複数の被保険者が居住する場合は、被保険者ごとに住宅改修費を支給申請を行うことが可能です。
家族などで住宅改修を行う場合は、材料の購入費などは支給対象となります。ただし、その場合も支給申請手続きの書類は提出が必要となります。
住宅改修ができる部分について
住宅改修における対象は、①手すり、②段差、③床面、④ドア、⑤トイレ、⑥1-5の改修に付帯して必要となる工事の六項目となります。
一部では、これだけの項目では対応しきれない部分もあることが指摘されており、今後は変更していく可能性もあります。
下記の表で改修部位を簡単にまとめてみましたが、実際には細かく条件が付けられていますので、具体的なところはケアマネージャーなどに相談してみてください。
改修部位 | 対象場所 | 内容 |
手すり | 自宅内から道路までの通路 | 手すりの設置 |
腰掛け台などへの手すり設置も含む | ||
取り外し可能な手すりは福祉用具なので対象外 | ||
段差の解消 | 自宅内から道路までの通路 | 敷居を低くする工事、スロープの設置など |
階段昇降機や住宅用エレベータは含まない | ||
取り外し可能なタイプは福祉用具なので対象外 | ||
滑り防止 | 自宅内から道路までの通路 | 滑りにくい床材への変更 |
床材変更のための下地補修なども含む | ||
取り外し可能なタイプでも滑り防止目的なら可 | ||
扉の取り換え | 開き戸 | 引き戸・折れ戸・アコーディオンドアに変更 |
取り換えに伴う壁や柱の改修工事も含む | ||
ドアの新設や自動ドアの動力部分は対象外 | ||
便器 | 和式便所 | 洋式便器(洗浄機能を含む)への取り換え |
すでに洋式便座の機能付加は認めない | ||
取り換えに伴う給排水工事は含む |
実際の申請までの流れ(住宅改修費)
①担当のケアマネジャーなどに相談する |
②利用者が住宅改修の申請書類を提出する
|
③保険者(市町村)が適正な改修と認めて開始となる |
④利用者が住宅改修費の支給申請書類を提出する
|
⑤保険者(市町村)が適正な改修と認めて住宅改修費の支給が決定する |
基本的な流れについては以上になりますが、やむを得ない事情がある場合に限りは、②の段階で提出べきだった書類を④の段階で提出することもできます。
なお、保険者(市町村)によって申請方法の流れや必要書類が若干違ってくる場合がありますので、必ず確認しておくことをお勧めします。
申請書についてはお住いの市町村のホームページよりダウンロードができますので、そちらで取得するようにお願い致します。
福祉用具のレンタルで補う場合
工事を伴わない取り外し可能な手すりやスロープは福祉用具貸与に該当するため、住宅改修の対象とはならないことは説明してきました。
しかし、福祉用具といっても全てがレンタル可能なわけではなく、その介護度によっても利用できるものとできないものが明確に区別されています。
そのことについては、一般社団法人全国福祉用具専門相談員協会のサイトに詳しく書かれていたので、そちらを参考にしてみてください。
ちなみに手すりやスロープに関しては介護度区分に関係なく、要支援者でもレンタルが可能となります。
介護保険にて自己負担額は1割(又は2割)で利用できますが、実際はその他のサービスとの利用額を計算しながら、支給額内で収まるように調整します。
介護保険適用にて購入できる福祉用具
トイレや入浴のように直接的に身体の素肌が触れて、レンタルに適さないものに関しては購入の対象となります。
こちらも住宅改修費と同様に支給を受けることができ、その限度額は市町村によって異なりますが、基本的には1年間(4月1日から3月31日)10万円です。
購入費支給に関しては、ケアマネや保険者(市町村)に問い合わせて、適用できるものかを判断してもらってからの購入となります。
実際の申請までの流れ(福祉用具購入費)
①担当のケアマネジャーなどに相談する |
②利用者が保険者(市町村)に申請書類を提出する
|
③保険者が適正な購入と認めて福祉用具購入費の支給が決定する |
なお、こちらも保険者(市町村)によって申請方法の流れや必要書類が若干違ってくる場合がありますので、必ず確認しておくことをお勧めします。
申請書についてはお住いの市町村のホームページよりダウンロードができますので、そちらで取得するようにお願い致します。