維持期のリハビリが消える日~デイケアの個別リハの廃止~

平成27年度の介護報酬改定で、通所リハビリの個別リハ加算が廃止となりました。

しかし、いまだに個別リハはやるべき派が存在しており、むしろ多数派を占めているような気がします。ここでは、廃止された原因と介護保険でのリハビリの未来について考察していきます。

通所リハビリの個別リハ加算が廃止

平成27年度の介護報酬改定により、個別リハビリテーション実施加算が廃止になりました。これは、デイケアでリハビリをすることは当たり前だから通所リハビリテーション費に入れてしまおうといった考え方からきています。

ですので、従来の個別リハは20分といった制約がなくなり、今後は時間にとらわれることなく、自由にリハビリを提供できるようなりました。現場の人間としては、非常に有難い改定だと思います。

個別リハビリテーション実施加算が消えた本当の理由

しかし、上記で述べた理由は実は建て前であると私は考えております。実際は包括化されたといっても単位はガッツリ削られており、維持期のリハビリはもうやめろと言われているような気がしてなりません。

今回の報酬改定の目的は、「マンネリ化したリハビリの排除」です。個別に対応していようがいまいが、リハビリをしていようがいまいが、これからはデイケアを卒業できない施設は評価しませんよってのが本当の理由です。

ですので、その前処置として「生活行為向上リハビリテーション実施加算」なるものができたのだと思います。

個別リハはもうしなくていいの?

下記に掲載する画像は、平成27年3月5日に医師研修会で使用された厚労省の資料からの抜粋になるのですが、今回の改定で「個別リハ実施加算」は廃止になり、「リハビリテーション基本部分(個別、集団含む)」だけになることがわかります。

個別リハビリテーション実施加算は包括化されたなんて言ってるから解釈がわかりにくいのですが、実質は廃止になりました。もちろん通所リハビリですのでリハビリを提供しなくてはならないのですが、個別である必要はなく、集団リハのみでも構わないようです。

リハビリが廃止になる

なぜ個別リハビリは毎回やるべき派がいるのか

ここまで書いてあることだけを見ると、なぜ毎回やるべき派がいるのかって気になると思いますが、彼らにもちゃんとした根拠があります。

それは、厚労省が個別リハに関するQ&Aで、「必須ではないが、通所のリハビリは個別で20分することが望ましい」みたいなことを書いたからです。

これで余計にややこしくなっています。「望ましいってなんだよ!」って感じです。

法律にないことは違反しても罰せられない

極論になるかもしれませんが、法律に書いてないことって罰せられないんですよね。だから合法ドラッグなるものが出てきて、法律の穴をくぐり抜けてきたんです。

これを根拠にいうと、個別リハ加算は廃止されてしまったので、毎回個別で20分のリハビリをしないと監査で引っかかるなんてことは絶対にありません。

だって法律に書いてないんですからね。ないものは罰せられないんですよ。

毎回やるべき派を論破するための方法

私のブログでは介護保険のこともかなり書いているので、時々ですが個別リハに関しての質問がくることがあります。そして、私は個別リハはする必要がないと伝えています。

それに加えて、以下のようなことを付け加えています。もしも監査で指摘されたときの反論としても使えるので、是非とも覚えておいてください(監査は来る人のレベルや考え方でかなり差がありますので、その対策として)。

”いまだに必須でやるべきだと訴える人たちに言いたいのですが、あくまで通所リハは社会復帰を目的とした卒業型の施設です。

なので、最終的には患者自身が自己管理できるように持っていくべきであり、個別リハがなくても状態を維持できるようにしなければなりません。いきなり卒業と同時に個別リハを切るよりも、徐々に個別リハを減らしていき、自主練習でやっていくほうがリスクも少ないはずです。

このように考えると、個別リハが毎回必須であると考えている人たちは、本当に在宅復帰を目指しているのかと疑問が沸いてきます。

どうでしょうか。かなり正論を言っているように感じますよね。穴が絶対にないわけではありませんが、普通の人たちはこれでまず反論することはできなくなります。

相手を論破するためには、絶対的に知識が必要です。そのためには、加算の算定要件やQ&Aの内容などはキッチリ頭に入れておきましょう。

維持期のリハビリは消えていく

医療保険の維持期リハをなくしますので、今後は介護保険で維持期リハをしてくださいってのが従来の政府の方針でしたが、今回の改定を見る限りは介護保険でも維持期はリハビリをやめろって言ってるような気がしてなりません。

リハビリを受けるために来ているであろう要支援の方の利用料はこれでもかってぐらい削られましたし、ずっと維持期リハを提供しているような施設は加算もとれずに経営難に追い込まれるんじゃないでしょうか。

「これからの外来リハは短時間型デイケアだ!」なんて思ってた時期が私にもありましたが(実際に医院で開設しましたし)、どうやら勘違いだったようです。これは本当につらい。騙されたって感じです。

これが自然の流れだと納得するしかない

もちろん、慢性的に無意味な個別リハを続けていても結果が出ていないのであれば、それはやっていないのと同じだと思います。

そんなリハビリが横行しているのは周知の事実であり、利用者に言われるがままにマッサージをして、「こんなことしても意味ないのにな…」と感じているセラピストも結構いるのではないでしょうか。

日本にはもう財源がないですし、これからもどんどん削られていくことになります。そこでいじめられるのは、間違いなくリハビリテーションの部分でしょう。

我々が職を失わないためにも、国会議員であり理学療法士の山口和之議員を応援していきましょう!


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The Author

中尾 浩之

中尾 浩之

1986年生まれの長崎県出身及び在住。理学療法士でブロガー。現在は整形外科クリニックで働いています。詳細はコチラ
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