促通反復療法(川平法)の方法と効果

促通反復療法(川平法)による治療の考え方について解説していきます。

川平法の概要

医師の川平和美氏によって考案された脳卒中後遺症(片麻痺)に対する治療法です。

近年に脳の可塑性が明らかとなり、その可塑性を最大限に高めることを目的として川平法は考案されました。

従来の促通法と比較して、CI療法のような試行錯誤性やPNFのような努力性を排除しており、最大限に効率よく運動性下行路が強化できるとしています。

促通反復について

目的とする運動性下行路の再建及び強化には、目的とする動作の随意的な運動(自動または自動介助)の反復による刺激が必要となります。

また、促通はコントロールが比較的に可能な近位部から開始し、遠位筋へと移していくことが望まれます。

川平法では1セットの反復回数を100回としており、これは疲労感や集中力を加味しての回数になります。

さらにいくつかの促通手技を併用することで、より効率的に神経路が強化できるように実施していきます。

促通を高める手技

①意識を集中する

意識を集中させて随意運動を実施しようとすることで、下行性伝導路の刺激を高めることが可能となります。

また、麻痺肢を注視してフィードバックをかけることで、より痙縮のコントロールが容易になります。

②伸張反射

脊髄反射の一種で、筋肉が引き伸ばされることにより筋紡錘が刺激され、筋肉が収縮する反応のことを指します。

随意運動が障害されている場合は、伸張反射を用いることで動きを効果的に引き出すことが可能となります。

③共同運動

片麻痺では目的の筋のみでなく周囲の筋まで同時収縮してしまうため、分離した運動が難しくなります。

その場合は、共同運動を利用して目的の筋の近位部に抵抗をかけることにより、目的に筋に対して集中的に緊張を高めることができます。

④姿勢反射

姿勢の変化によって特定の筋肉が緊張することを姿勢反射と呼びます。促通手技では、目的の筋の収縮を促すために姿勢反射を利用していきます。

姿勢反射 姿勢 緊張が高まる筋肉
緊張性迷路反射 立位・背臥位 下肢体幹の伸筋
側臥位・腹臥位 下肢体幹の屈筋
緊張性頚反射 頚部回旋側 上肢の伸筋
非頚部回旋側 上肢の屈筋

⑤皮膚筋反射

目的の筋上の皮膚を擦る、またはタップすることで筋の収縮を促通する。筋力トレーニングで最大収縮を引き出す際にも利用されます。

⑥TES・FES

目的の筋の収縮を促すことで意図した運動を実現できることにより、運動性下行路の強化を図ることができます。

休息の効果

運動後の休息が必要とされるのは、不安定なシナプス結合が強固な結合に変わるために時間が必要となるからです。

その過程の別の運動が実施されると学習阻害が起きてしまい、運動学習が実施されなくなります。休憩時間と学習率の関係は以下になります。

間隔

学習率

4時間 70%
1時間 30%
5分 25%
0分 5%

上記を参考にすると5分ほど休憩時間を入れることが効率的と考えられます。

しかし実際は、治療時間が限られることや、運動阻害が起きるほどの内容でないことから、休憩時間は30-60秒ほどで十分とされています。

非麻痺側の強化

体幹や非麻痺側に弱化をきたしている場合、安定した姿勢バランスをとることができず、遠位筋の随意性を十分に発揮することができません。

そのため、麻痺側のコントロールのみにこだわるのではなく、非麻痺側のトレーニングも併行して実施することが望まれます。

実際のリハビリ時間のみでは必要量が確保できないため、家族に協力していただいたり、自主練習を指導することが必要となります。


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The Author

中尾 浩之

中尾 浩之

1986年生まれの長崎県出身及び在住。理学療法士でブロガー。現在は整形外科クリニックで働いています。詳細はコチラ
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