前十字靱帯の概要
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前十字靱帯(ACL):大腿骨外側顆内側 → 脛骨顆間隆起前方に付着する関節包内靱帯。
全長約3cm、幅約1cm。 -
主な役割
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脛骨の前方滑り抑制 2) 過伸展の抑制 3) 脛骨内旋の抑制
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側副靱帯と協働し内反・外反を制御
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角度別の前方引き出し抵抗:伸展位で約75%、**30°/90°屈曲位で約85%**をACLが担う。
二束構造
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前内側束(AMB):屈曲位で緊張
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後外側束(PLB):伸展位で緊張
→ 二束が補完し、全可動域で張力を維持。
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受傷メカニズム・疫学
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非接触型が約70%(減速・方向転換・着地)、接触型が約30%(後方からのタックル等)。
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再建術後の競技復帰目安:8–10か月。一部は復帰困難。
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女性は男性の2–8倍好発。半月板・MCL合併損傷が多い。
リスク形態
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大腿骨顆間窩が狭いと損傷リスク上昇(報告では5–66倍)。
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全身弛緩性や足部形状は一貫したエビデンスは限定的。
典型症状
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受傷時の「ポップ音」、膝崩れ、関節血腫(翌日に悪化し歩行困難)。
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ACLは血流が乏しく自然治癒しにくい。日常生活レベルは保存療法で可能な例も。
画像・徒手検査
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X線:靱帯自体は写らないが、ストレス撮影で前方動揺(30°屈曲で左右差≧2mmは断裂を示唆)。
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MRI:損傷の確定・合併損傷の把握に有用。
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徒手検査
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ラックマンテスト(膝30°屈曲):信頼性・陽性率が高い第一選択。
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前方引き出し徴候(膝90°屈曲):AMB評価に有利。
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変法:定量ストレス+レントゲンで再現性高く評価可。
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手術 or 保存の考え方
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競技復帰(カット・ジャンプ競技):再建術が基本。
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代表術式:STG(半腱様筋/薄筋)、BTB(骨付き膝蓋腱)、近年は解剖学的二重束も普及。
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STG→ハムストリングス筋力低下、BTB→膝前面痛が残りやすい。
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STは再生するが、付着位置が近位化し最大屈曲域で出力低下が残ることあり。
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保存療法:活動性が低い/高齢者などでは選択肢。装具+筋力強化でADLは十分可の例も。
ただし経時的に内側半月板・軟骨損傷リスク上昇に留意。
再建の“時期”が安定性に与える影響は小さいとされる一方、陳旧例は合併損傷が増え主観的成績がやや劣る傾向。
術後・保存のリハビリ戦略
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原則:移植腱・関節に過負荷をかけず、段階的に可動域・筋力・神経筋制御を回復。
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腱の再血行化/リモデリング:概ね**~3か月**。この時期は骨孔拡大リスクにも注意。
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早期:疼痛・腫脹管理(48hの寒冷療法で疼痛/出血減少の報告)、伸展可動域の回復、内側広筋の再活性化、膝蓋骨モビライゼーション。
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筋力
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OKC(非荷重・単関節):大腿四頭筋強化に有効だが、0–60°伸展域では脛骨前方シア↑ → 角度設定・負荷管理・脛骨前方変位抑制バンド等で安全化。
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CKC(荷重・多関節):スクワット、ランジ、レッグプレス等。膝外反/過伸展を回避し運動連鎖を統合。
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ハムストリングス強化:全角度で脛骨を後方引き→ACL負担軽減。
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固有感覚/協調:閉眼角度再現、スライドボード、不安定板、リズム着地ドリル等。
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復帰基準の例:痛み・腫脹なし、膝伸展完全、左右筋力比≧90%、片脚着地コントロール、機能スコア達成 等。
装具療法
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保存例では装具併用で不安定性の自覚軽減に3–6か月要する報告。ADL中心の患者では有用。症状残存なら手術再考。
予防(一次・二次)
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着地・切り返し指導:膝屈曲角度↑、膝外反モーメント↓、膝間距離↑。
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ジャンプ/着地トレーニング、バランス訓練、ハムストリングス強化。
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チームにはウォームアップ時に神経筋トレ(例:FIFA 11+)の組み込みを推奨。
よくある質問(Q&A)
Q1. 保存療法だけでランニングは可能?
A. 多くの例でジョギング程度は可。ただし膝崩れや二次損傷(半月板/軟骨)のリスク説明は必須。
Q2. STGとBTB、どちらが良い?
A. いずれも標準術式。STGは前面痛が少ないがハムストリングス低下に注意。BTBは骨-to-骨で固定性に利点がある一方、膝前面痛が課題。競技種目・既往・施設経験で選択。
Q3. いつから走れますか?
A. 個別差あり。一般的には3–4か月以降にジョグ、8–10か月で競技を検討。疼痛・腫脹、筋力左右差、動作品質の達成が前提。
Q4. OKCは危ない?
A. 使い方次第。角度・負荷・変位抑制を工夫すれば有効。CKCと併用して総合的に強化するのが現実的。
Q5. 再断裂を防ぐポイントは?
A. 膝外反コントロール、体幹安定、片脚着地の質、復帰判定の厳守。復帰後も予防プロトコルを継続。
最終更新:2025-10-05
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