反射性交感神経ジストロフィーの概要
CRPS(complex regional pain syndrome)type I は、明らかな主要神経損傷を伴わないのに強い疼痛と自律神経症状が出現・遷延する疾患です(旧名:RSD)。
整形ではSudeck(ズデック)骨萎縮、脳卒中後などの上肢例では肩手症候群と呼ばれることもあります。
原因・誘因(何が引き金?)
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外傷・医療行為:骨折・脱臼、捻挫、打撲、ギプス固定、注射・手術、可動域運動中のインピンジメントなど
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疾患関連:心筋梗塞、脳血管障害、帯状疱疹 など
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※帯状疱疹の原因は水痘帯状疱疹ウイルス(VZV)です(単純ヘルペスではありません)。発症数週後にCRPSが立ち上がることがあります。
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機序の仮説:交感神経亢進→血流低下、中枢・末梢性感作、免疫・炎症反応の関与などが示唆(症例差が大きく、交感神経ブロックが万能というわけではない)。
経過と病期(Lankford)
| 時期 | 目安 | 主な所見 |
|---|---|---|
| 初期 | 0–3か月 | 強い疼痛・灼熱痛、アロディニア、発赤、発汗↑、腫脹、抜き打ち様骨萎縮 |
| 中期 | 3–9か月 | 痛みの広範化、硬い腫脹、関節拘縮、皮膚・爪・体毛変化、骨萎縮の均一化、筋萎縮 |
| 末期 | 9–24か月 | 拘縮進行、皮膚・爪の萎縮、患肢全体の廃用 |
典型症状(まとめ)
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炎症/自律神経:疼痛、腫脹、皮膚温の異常、発汗異常、皮膚色変化
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感覚:異常知覚、アロディニア(軽触で痛い)
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栄養障害:皮膚・爪・骨萎縮(Sudeck)、筋萎縮
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運動:ROM制限、機能的動作低下
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心理:抑うつ、不安、恐怖回避行動(使わない→悪化のスパイラル)
重症度の目安(Gibbson)
9項目を0/0.5/1で加点。3–4.5点:疑い、5点以上:CRPS とする一法。
①アロディニア/痛覚過敏 ②灼熱痛 ③浮腫 ④皮膚・体毛変化 ⑤発汗異常 ⑥皮膚温上昇 ⑦X線脱灰 ⑧血管運動障害の定量 ⑨骨シンチ所見
診断の足場:Budapest基準(簡略)
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痛みが侵害刺激を超えて不釣り合い
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4領域(感覚/血管運動/発汗・浮腫/運動・栄養)中**3領域以上で“症状”**を報告
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同4領域中**2領域以上で“徴候”**を診察時に確認
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他疾患で十分説明できない
※type Iは明らかな神経損傷なし(type IIは神経損傷あり)
治療の概観(多職種で“早く・少しずつ・切らさず”)
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薬物:早期のステロイド短期投与、鎮痛薬、神経障害性疼痛薬、一部でビスホスホネートやカルシトニンなど
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ブロック/介入:星状神経節ブロック、硬膜外、交感神経遮断など(反応は個体差)
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心理・教育:ペーシング(配分)、恐怖回避の是正、認知行動療法(CBT)、痛み教育(Pain neuroscience education)
リハビリテーション(実践のコツ)
原則:「痛みを煽らず、使わなさすぎも避ける」。低負荷・高頻度で“成功体験”を重ね、浮腫と恐怖回避の連鎖を切る。
1) ポジショニング
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肩は内転・内旋拘縮になりがち→外転位を基本に保持。
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三角巾の長期固定は避ける(内転・内旋を助長)。必要時はアームスリング/外転装具を選択。
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亜脱臼予防と浮腫肢位(挙上)を意識。
2) 浮腫管理
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挙上位、求心性軽圧マッサージ、弾性包帯/グローブ、ひも巻き法など。
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可能な範囲で**“使う”=筋ポンプ**を働かせる。
3) 物理療法
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ホットパック/交代浴/TENS/レーザー(星状神経節近傍照射を含む)を症状に合わせて。
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皮膚が冷え/多汗の揺れが強い時は、短時間・段階的に。
4) 関節可動域(ROM)と運動
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痛み・過緊張を誘発しない強度でこまめに。
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重点:肩外転・外旋/肩甲骨上方回旋/前腕回内/手関節背屈/手指屈伸。
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目安は痛み0–10のうち3–4以下で反復。
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ミラーセラピー/段階的イメージ運動(GMI)/脱感作訓練(ブラシ・布・米粒など刺激を短時間から)も有用。
5) 生活・心理
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ペーシング(活動と休息の計画)、睡眠・栄養の是正。
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「痛くない範囲で毎日少し」を続ける。我慢勝負の運動は逆効果。
予後とフォロー
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早期介入ほど拘縮・骨萎縮の進展を抑えやすい。
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長期化するほど廃用・感作が固定化。継続支援と多職種連携(整形・麻酔ペイン・リハ・心理)が鍵。
よくある質問(Q&A)
Q1. CRPS type I(旧RSD)と type II の違いは?
A. type I は明らかな神経損傷なし、type II は特定神経の損傷あり(カウザルギー)。
Q2. 温める?冷やす?
A. 個々で反応が逆のことも。交代浴や軽い温罨法を短時間から試し、症状が楽になるほうを採用。
Q3. リハは“痛みを我慢”したほうが効きますか?
A. No。痛みを強く増悪させる運動は逆効果。目安は痛み3–4/10以下で回数と頻度を稼ぐ。
Q4. どれくらいで良くなりますか?
A. 個人差大。初期〜中期に適切介入で改善しやすい一方、遷延すると年単位。続けられる処方が大切。
Q5. ブロックは必ず効きますか?
A. 反応はさまざま。反応の良い例もあるが、ブロック単独での根治は稀。運動・心理・教育と併走が基本。
Q6. 仕事や家事は休むべき?
A. 全部止めると悪循環。痛みを増やさない負荷でペーシングしつつ継続。必要に応じ就労調整を。
Q7. 画像は何を撮る?
A. X線で脱灰(Sudeck)が出ることあり。骨シンチは感度高め。Budapest基準に基づく臨床診断が中心です。
最終更新:2025-09-08
