反射性交感神経ジストロフィー症/肩手症候群のリハビリ治療

反射性交感神経ジストロフィーのリハビリ治療に関する目次は以下になります。

反射性交感神経ジストロフィー症の概要

反射性交感神経ジストロフィー症(reflex sympathetic dystrophy:RSD)は、現在もその発症メカニズムが解明されていない難治性の疼痛症状とされています。

複合性局所疼痛症候群(complex regional pain syndrome:CRPS)の中で、神経損傷がなく、疼痛と自律神経症状を示すtypeⅠに分類されます。

整形領域ではSudeck骨萎縮、リハビリ領域では肩手症候群と呼称される場合もあります。

反射性交感神経ジストロフィー症/肩手症候群

RSDの原因

外傷後の異常な交感神経亢進状態により、局所血流が低下していることが主な原因と考えられています。

誘因として最も多いのは外傷で、骨折・脱臼や打撲・捻挫、医療行為としての注射・手術、ギプス固定、関節可動域運動によるインピンジメントなども誘因となります。

その他に心筋梗塞、脳血管障害、帯状疱疹などの疾患に伴って発症することがあり、誘因から1カ月遅れて発症することが多いとされています。

交感神経が原因と考えられていますが、必ずしも交感神経ブロックなどの治療が有効とは限りません。

帯状疱疹から二週間後に発生した例

帯状疱疹は、単純ヘルペスウイルスが原因で起こるものであり、子供の頃に水疱瘡にかかった事のある人ならウイルスを保持し続けています。

それがストレスや体力の低下など、何かしらのきっかけで再発してしまいます。私が担当した患者では、帯状疱疹の発生から二週間後にRSDが発生しました。

その原因として、帯状疱疹は神経が集合している場所に多発することから、ウイルスによって神経に損傷が起こり、それが一定値を超えたときにRSDとして出現発生したのではないかと考えています。

RSDの経過・予後について

Lankfordの病期分類は以下になります。

時期 期間 症状
初期 0-3カ月 外傷部位局所の疼痛、灼熱痛、感覚過敏、皮膚発赤、発汗増加、局所腫脹、抜き打ち様骨萎縮
中期 3-9カ月 痛みが強く広範化、硬い腫脹と関節拘縮、皮膚・爪・体毛変化、骨萎縮均一化、筋委縮
末期 9-24カ月 関節拘縮と皮膚委縮・爪変化進行、患肢全体の廃用化

反射性交感神経ジストロフィー症の主な症状

炎症症状

  • 強い疼痛、浮腫、皮膚色変化

神経症状

  • 異常知覚、アロディニア

異栄養症状

  • 皮膚、爪、骨、筋肉の委縮性変化

交感神経症状(血管運動障害)

  • 皮膚音の異常、発汗の異常

運動機能障害

  • ROM制限、機能的動作制限

心理・精神面への影響

  • 抑うつ、痛みに対する予測防御的反応

重症度分類(Gibbson)

項目 状態
なし 若干あり あり
①異常知覚(アロディニア)又は痛覚過敏 0 0.5 1
②灼熱痛 0 0.5 1
③浮腫 0 0.5 1
④皮膚・体毛変化 0 0.5 1
⑤発汗異常 0 0.5 1
⑥皮膚温上昇 0 0.5 1
⑦X線上の脱灰像 0 0.5 1
⑧血管運動障害の定量的測定 0 0.5 1
⑨骨シンチグラフィー所見 0 0.5 1

※3から4.5点でRSD疑い、5点以上でRSDとする。

治療について

薬物療法では、早期ステロイド療法や交感神経遮断薬、抗うつ薬などが処方されます。また、星状神経節ブロックや硬膜外ブロック、交感神経切除術なども状態に応じて実施します。

理学療法としては、ホットパックや交代浴などの物理療法、拘縮を予防するための運動療法、疼痛緩和のための認知行動療法などが一般的に行われています。

しかし、どれも対症療法に過ぎず、根本的な解決とはなりません。

リハビリテーション

病期分類について前述しましたが、具体的に時期別の有効なリハビリテーションは確立されていないのが現状です。ここでは、現場で実際に行われているRDSに対するリハビリ方法について、紹介していきたいと思います。

ポジショニング

疼痛のために肩関節が内転・内旋位に拘縮していく傾向がありますので、なるべく肩関節は外転させるように保持します。

アームスリングや外転装具などを用いて、亜脱臼の防止につとめることも大切です。三角巾では、肩関節の内転・内旋を強制してしまうため、できる限りはアームスリング等を使用してください。

物理療法

一般的にホットパックや交代浴、経皮的電気刺激(TENS)、レーザー光線などを用いることが多いです。レーザー光線では、星状神経節に対して照射することでブロック作用が期待できます。

浮腫の予防

ポジショニングした状態から求心性マッサージや弾性包帯、ひも巻き法などを利用することで浮腫の予防につとめます。

また、日常生活でも可能な限りに使用することで血流の状態を良くします。疼痛のために全身が屈曲・内転方向に縮こまろうとする傾向があるので、脊柱伸展や肩甲骨上方回旋も実施していくことが大切です。

関節可動域運動

運動を実施する際は、痛みや過緊張を誘発しないようにマイルドに行うことが鉄則です。

とくに関節制限を作りやすい肩関節外転・外旋、肩甲骨上方回旋、前腕回内、手関節背屈、手指の屈伸を行うことが大切です。

徐々に自動運動を引き出していき、日常生活での使用を目的とした練習を実施します。

おわりに

RSDは現在も有効な治療法が確立されておらず、臨床でも難渋する疾患のひとつです。

しかしながら、経過に伴って拘縮や骨萎縮が進行していくことは明白で、対症療法としてのリハビリテーションは必要不可欠です。

激痛のために手の使用を控えて、浮腫が増大するような悪循環を断つためにも、心理的な部分までを含めた細やかなケアを実施していくことが大切です。

参考文献

反射性交感神経性ジストロフィーの標準的治療法ガイドライン第3版

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The Author

中尾 浩之

中尾 浩之

1986年生まれの長崎県出身及び在住。理学療法士でブロガー。現在は整形外科クリニックで働いています。詳細はコチラ
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