変形性膝関節症はスウェイバック(不良姿勢)が原因

変形性膝関節症と深く関わっている不良姿勢「スウェイバック」について解説していきます。

スウェイバックとは

スウェイバックは中高年者に多い姿勢であり、姿勢保持を非収縮要素(筋肉の緊張以外)に依存していることが特徴です。

どうしてスウェイバックが変形性膝関節症を起こすのかを説明すると、その根本にあるのは大殿筋の弱化だと考えています。

スウェイバックでは大殿筋が萎縮していますが、大殿筋の股関節伸展機能を代償するために大腿二頭筋が緊張状態を保っています。

緊張状態が続くと筋肉は疲労し、押すと圧痛を認めることになり、さらにいくつかの弊害を招くことになります。

大腿二頭筋の疲労による影響

大腿二頭筋に疲労が蓄積すると、膝関節を深く曲げた際に攣縮を起こし、正座などの動きが困難となります。

また、慢性的に緊張状態にあるので徐々に筋肉は短縮していき、膝関節の屈曲拘縮(伸展制限)や下腿外旋位をきたします。

大殿筋の筋力トレーニング(股関節伸展運動)を実施すると、大腿二頭筋が代償的に働いて攣ってしまうという現象もしばしば認められます。

腸脛靭帯の硬結による影響

大殿筋の上部線維は腸脛靭帯に移行しますが、大殿筋が弱化していると腸脛靭帯を緊張させることができず、負担が増加することになります。

その状態が続くと徐々に腸脛靭帯は硬くなっていき、大腿二頭筋と同様に押すと強い痛みを訴えます。

腸脛靭帯には外側広筋の一部が起始しているため、硬結すると外側広筋が硬くなり、さらに外側広筋が停止する外側膝蓋支帯も硬くなります。

そうすると膝蓋骨は外側上方に偏位し、いわゆる膝蓋大腿関節症(変形性膝関節症の初期)をきたすことになるわけです。

変形性膝関節症に進展していく

腸脛靭帯の硬結から膝蓋骨の動きを制限することは説明しましたが、外上方に偏位すると徐々に内側広筋も弱化していきます。

内側広筋には下腿の内旋作用があるため、弱化すると下腿は外旋していき、さらに大腿二頭筋の緊張と併せて下腿外旋を加速させます。

その状態を下腿外旋症候群といい、下腿が外旋すると膝蓋下脂肪体は内側に押し寄せられ、摩擦力が高まって痛みを訴えることになります。

筋収縮に頼らない歩行が持続すると、骨や靱帯、半月板の負担が増加し、結果的に膝関節の変形を進行させることにつながります。

変形性膝関節症の治療

スウェイバックの治し方については、別記事「スウェイバックの原因と治し方」にて詳しく解説しています。

ここでは変形性膝関節症に影響している部分について書きますが、痛みは主に、①膝関節内側、②膝蓋骨外側、③膝窩部の3つに分けられます。

膝関節内側の痛みは主に膝蓋下脂肪体が原因組織で、膝蓋骨の外上方偏位や下腿外旋症候群が影響しています。

そのため、治療では膝蓋骨モビライゼーションや内側広筋の収縮運動、膝蓋下脂肪体のマッサージが有効となります。

膝蓋骨外側の痛みは主に外側広筋や腸脛靭帯が原因組織で、大殿筋の弱化や腸脛靭帯の硬結が影響しています。

そのため、治療では大殿筋の筋力トレーニングや腸脛靭帯のマッサージ、膝蓋骨モビライゼーションが有効となります。

膝窩部の痛みは主に大腿二頭筋が原因組織で、大殿筋の弱化による代償的な緊張状態(疲労)が影響しています。

そのため、治療では大殿筋の筋力トレーニングや大腿二頭筋のマッサージが有効であり、同時に膝関節の深屈曲を改善させていきます。

スウェイバックの確認方法

姿勢を評価するときに、視診や触診だけで分類しても、実際にそこに問題が存在するかはわかりません。

疼痛を回避するために姿勢を調節しているかもしれませんし、姿勢をみられるとわかると患者が意識しすぎてしまう可能性もあります。

なので、わたしは圧痛が存在するかを最大のポイントにしています。

スウェイバックが疑われる場合は、①腸脛靭帯、②ハムストリングス、③内腹斜筋の3つを中心にを押圧し、痛みがあるかを確認します。

そこで痛みがある筋肉は、普段から緊張状態を強いられていることが予測され、問題を引き起こしている可能性が極めて高いです。

しかしながら、スウェイバックで圧痛が認められる部位は、あくまで二次的に疲労しているだけに過ぎません。

痛みがあるからといってマッサージを続けても、一時的に軽くなるだけで根本的な解決にはつながらないわけです。

スウェイバックの本質は筋収縮に頼らない姿勢保持であるため、姿勢矯正には筋力トレーニングと意識的な姿勢調整を要します。

そのためには治療者による適切な運動療法が必須であり、継続して実施していくことが大切になってきます。


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The Author

中尾 浩之

中尾 浩之

1986年生まれの長崎県出身及び在住。理学療法士でブロガー。現在は整形外科クリニックで働いています。詳細はコチラ
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