肩コリを治すためには、①凝りとはなにか、②どこが凝っているか、③どうして凝ったのかの3つを知る必要があります。
この記事の目次はコチラ
凝りとはなにか
わかりやすく書くと、凝りの正体は筋肉の疲労であり、常に緊張(収縮)した状態を強いられることが原因です。
筋力トレーニングをしたことがある人なら理解もしやすいですが、筋肉に疲労が蓄積すると徐々にだるくなっていきます。
そこで運動をやめるとすぐに「だるさ」はとれますが、肩コリの場合は慢性的に緊張している状態にありますのでだるさが抜けにくくなります。
さらに書くと、だるくなりやすい筋肉には特徴があって、普段から日常的に使われる筋肉は疲労しにくい傾向にあります。
例えば、歩くときに使用されるふくらはぎの筋肉(ヒラメ筋)は疲れにくい構造をしており、遅筋線維(赤筋線維)が非常に豊富です。
反対にヒラメ筋の表層にある腓腹筋は速筋線維(白筋線維)が非常に豊富で、歩くときよりも走るときに使用されるため、強い筋力を発揮できますが持久力に乏しいのが特徴です。
どこが凝っているのか
肩コリを起こしやすい筋肉の代表格は、肩甲挙筋と僧帽筋上部線維の2つになります。
マッサージ店では主にこれらの筋肉を揉んでほぐすと思いますが、それで一時的に緊張が緩んで軽くなったとしても、また緊張が強いられる状態に置かれたら同じことです。
大切なのは「どうして肩甲挙筋や僧帽筋上部が凝ったのか」であり、その原因を突き止めることにあります。
どうして凝ったのか
最初に書いたように筋肉の疲労が凝りの大きな原因なので、仕事などで負担が加わることは重大な問題のひとつです。
ただし、それが問題だからといって簡単に仕事を変えられるわけもなく、そこに焦点を当てると解決は困難となります。
ここからは私見も交えての話になりますが、そもそも肩甲挙筋の負担が増加しているのは、周囲に問題があるからだと考えています。
上の画像は、代表的な筋肉の連結を示したものですが、肩甲挙筋は首から手にかけて伸びる後方深層の経路に属します。
この経路の中で、腱板筋(棘上筋腱)が最も損傷しやすい部位で、高齢者では半数が棘上筋腱に部分的な断裂をきたしています。
もしも棘上筋腱に断裂が存在している場合は、その筋出力を代償するために連結を持つ肩甲挙筋が過剰に働きます。
ここが最大の問題であり、いかにして棘上筋の出力を発揮できるようにして肩甲挙筋の負担を減らすかが、肩コリを根本的に解決するために重要ではないかと私は考えています。
次に、もうひとつの凝りやすい筋肉である僧帽筋ですが、こちらは先ほどのラインよりも表層の連結に属しています。
僧帽筋は棘上筋の問題とは一見関係がなさそうにみえますが、僧帽筋の緊張も棘上筋の出力低下が大きく関与していると考えています。
理由として、深層筋(棘上筋)が使えていないと表層筋(僧帽筋や三角筋)が代償的に働くことになり、それがさらに腱板断裂を助長するからです。
上の画像は、肩関節を挙上するための主力筋である棘上筋と三角筋の関係性を示したものです。
棘上筋は上腕骨頭を関節窩に押し付ける作用があり、それによって三角筋が働いても骨頭が上方に偏位しないような構造をとっています。
しかし、なにかしらの理由で棘上筋の働きが悪くなると、三角筋の作用で骨頭が上方に偏位して棘上筋腱が肩峰に挟み込まれて損傷します。
深層筋が使えていないと表層筋が代償的に働くことは前述しましたが、重度の場合は三角筋までコリが起こることにつながります。
表層筋は速筋線維が豊富で疲れやすい筋肉ですので、DBALが使えていないことは、結果的にSBALの問題に波及することになるわけです。
おわりに
僧帽筋上部や肩甲挙筋が肩コリの原因であることは多くの本に載っていますが、どうして疲労しているかまでは書かれていません。
それを私なりに考えて、実際に臨床で患者の状態を確認しながら辿り着いた答えが「棘上筋の出力低下」でした。
肩コリはいくらマッサージをしても根本的には改善しませんし、筋肉は日によっても状態が変化するので効果にムラがあります。
そこを理解してアプローチしていくことが、根本的に肩コリを治すためには必要であることを理解してもらえると幸いです。