膝関節が外反変形(X脚)している膝OAのリハビリ治療について解説していきます。
変形性膝関節症の概要
変形の重症度にはK/L分類が用いられ、関節裂隙狭小化、骨棘、軟骨下骨骨硬化、辺縁の骨変形で評価します。
上の単純X線画像では、関節裂隙は狭小化していませんが、骨棘が認められるためにグレードⅡに該当すると考えられます。
発生機序として、歩行時などに膝関節が不安定となり、外反ストレスが加わり続けることで徐々に外反変形していきます。
膝痛の原因が大腿脛骨関節にある場合は、立ち上がり動作のみでなく歩行時にも痛みが現れます。
画像所見(MRI)
上のMRI画像では、T2*にて外側半月板(LM)の中節〜後節に縦断裂が確認できます。
LMが裂隙より外側に飛び出して亜脱臼となっているケースでは、脛骨外顆や大腿骨外顆に輝度変化が認められる場合もあります。
X脚と膝関節痛について
X脚のヒトに起こりやすい膝の障害として、①筋・筋膜性膝痛(内方型)、②外側半月板損傷、③膝蓋大腿関節症、④大腿脛骨関節症があります。
X脚が原因の筋・筋膜性膝痛は膝内側に起こりますが、理由として、膝関節外反を止めるために大腿内側の筋群が緊張するためです。
慢性的な緊張状態にあると、筋肉の停止部(膝関節内側)に牽引ストレスが原因の疼痛を引き起こします。
また、大腿内側の筋・筋膜は内側膝蓋支帯に繋がるため、結果的に膝蓋骨の外側モビリティを低下させることにも繋がります。
膝蓋骨の動きが悪くなると、膝蓋大腿関節症の原因にもなります。
X脚の原因
X脚(膝関節外反)となる原因は、膝の中心が片脚立位時に内側にあることが挙げられます。
例えば、股関節(大腿骨)が内転位にあると下腿骨は反対方向に傾くようにして正中位に戻そうとします。
足部で見た場合は、足部内反でも足部外反でもX脚は起こりますが、大事なのは先程と同じで、膝の中心が片脚立位時に内側にあるかどうかです。
膝関節外側痛の鑑別
膝関節外側に痛みがある場合は、外側半月板損傷や変形性膝関節症(X脚タイプ)が疑われます。
ただし、内反膝で膝関節外側に痛みがある場合は、内反を制御するために大腿外側の筋・筋膜が緊張している影響が考えられます。
リハビリテーション
最も簡単に外反を抑制する方法が膝関節の固定(サポーター利用)で、変形が軽度から中等度の場合は疼痛を軽減することが期待できます。
組織リリースでは大腿内側を中心にリリースしますが、前述したように大腿内側が硬くなる原因は外反を抑制するためです。
それにも関わらず大腿内側をリリースすべき理由は、鵞足などに筋連結する股関節内転筋群の滑走不全まで引き起こすためです。
股関節内転筋群の緊張が高まると拮抗筋である股関節外転筋群の筋出力が低下し、歩行時の膝外反動揺を助長することに繋がります。
そのため、股関節内転筋群および筋連結する組織をリリースし、股関節外転筋群の出力を高めることが必要となります。
具体的な運動としては、側臥位にて両膝を屈曲し、左右の踵を付けたままの状態で股関節を開くように動かす方法が簡単です。
定期的に少量頻回に行うことで運動パターンを促通し、身体の状態を整えておくことが推奨されます。
日常生活では、平らな道の歩行では痛みがなくても、階段の下りでは痛みを訴えるケースが多いです。
階段の下りは膝関節の負担が大きいため、上りは特に制限しなくても、下りはエレベーターはエスカレータを使うなどの工夫も有用です。
急激な変形は身体にとって悪いことがほとんどですが、緩やかな変形(主に骨棘の形成)は関節の安定化に繋がります。
そのため、痛みや変形の状態に合わせながら、運動量は徐々に増やすように調整していくことが求められます。