大殿筋(gluteus maximus)

大殿筋の概要

大殿筋の起始停止

ヒトの二足歩行・立位安定に特化して発達した最大の単一筋股関節伸展・外旋が主作用。上方筋束外転に寄与下方筋束内転に寄与しやすい(肢位依存)。
立ち上がり、階段昇段、ダッシュや坂道走行など高出力の伸展課題で強く活動。

基本データ

項目 内容
支配神経 下殿神経
髄節 L5-S2
起始 ①浅部:腸骨稜、上後腸骨棘、仙骨、尾骨
②深部:腸骨翼の殿筋面、仙結節靱帯
停止 ①上部:大腿筋膜の外側部で腸脛靭帯に移行
②下部:大腿骨の殿筋粗面
栄養血管 下殿動脈、上殿動脈
動作 股関節の伸展,外旋
上方筋束)股関節の外転
下方筋束)股関節の内
筋体積 864
筋線維長 14.5
速筋:遅筋(%) 47.652.4

運動貢献度(順位)

貢献度 股関節伸展 股関節外転 <股関節外旋
1 大殿筋 中殿筋 大殿筋
2 大腿二頭筋(長頭) 大殿筋(上部) 大腿方形筋
3 大内転筋 大腿筋膜張筋 内閉鎖筋
4 半膜様筋 小殿筋 中殿筋(後部)

構造と機能(上方/下方筋束)

  • 上方筋束(ITB移行が多い):股関節の伸展+外旋に加え、外転安定化に寄与。TFLと拮抗・協調して骨盤の前額面安定膝外側安定を補助。

  • 下方筋束(大腿骨付着が多い)伸展+外旋に加え、肢位により内転補助。深い屈曲位からの立ち上がりで寄与が増える。

ITBは大殿筋とTFLの張力ベクトルで荷重受け皿を作り、股・膝の側方安定に寄与します。

日常・スポーツ動作での役割

  • 強い伸展が要る場面(椅子からの立ち上がり、階段上り、ジャンプ、ダッシュ)で求心性(コンセントリック)収縮が顕著。

  • 平地歩行では、遊脚終期~荷重応答期遠心性で骨盤前傾・股屈曲モーメントを制動し、立脚中期まで上方筋束が骨盤・膝外側の安定を補助。

  • レベル歩行では強い求心性は少なめだが、速度上昇・坂道・負荷増で求心性活動が増大。


触診のコツ

  • 表層筋のため容易に触知

  • 股関節伸展で全体の収縮を確認。

    • 外転+伸展を軽く加えると上方筋束の張り出しが明瞭。

    • 内転+伸展を軽く加えると下方筋束の収縮が分かりやすい。

  • ITB連結は大腿外側遠位で滑走感を確認(過圧は避ける)。


ストレッチ

  • 仰臥位・膝屈曲患側膝を対側肩方向へ引き寄せ屈曲+内転)、股を軽く内旋して張りを探る。

  • 座位ピジョン/仰臥位Figure-4も有効。痛みを残さない強度30–60秒×2–3回


トレーニング(“殿筋に入る”フォーム)

  • ヒップヒンジ系ヒップスラスト/ブリッジ、ルーマニアンDL、デッドリフト系

  • ステップ系ステップアップ、ランジ、スプリットスクワット前傾を少し入れて股伸展モーメントを確保)。

  • スクワット:殿筋バイアスには

    • 足幅は肩幅~やや広め(狭すぎると大腿四頭筋バイアスになりやすい)股関節主導のヒンジ(脛が前に出すぎない)深めの可動域を狙う。

  • 外旋運動:貝殻(クラム)などは中殿筋後部の関与が大きく、最大筋力狙いなら伸展課題を主に。

トリガーポイント(TP)

  • 主訴:殿部中央〜後外側大腿への鈍い痛み・張り、長く座ると坐骨周囲に響く感じ、階段や立ち上がりでのお尻のだるさ。

  • 誘因:反り腰での立位保持、深い前屈の繰り返し、坂道や階段昇降・スクワットなどの股伸展負荷のオーバーワーク、長時間の座位での殿部圧迫。


歩行時の筋活動

大殿筋は遊脚終期(TSw)の後期から荷重応答期(LR)にかけて遠心性収縮に働くことが特徴です。

引き伸ばしたゴムから手を離すと短縮する方向に強く動きますが、歩行時も同様の現象(伸張短縮サイクル)が起きており、求心性収縮することはほとんどありません。

大殿筋の上方筋束に関しては立脚中期(MSt)まで働きますが、大腿筋膜張筋とともに腸脛靭帯を緊張させて、股関節と膝関節を安定させています。


関連しやすい症状・疾患

  • 筋・筋膜性殿部痛仙腸関節機能障害

  • 腸脛靱帯痛症候群(ITB過緊張)

  • 変形性股関節症の代償パターン

  • 腰椎伸展過多/分離症と関連する過前傾姿勢


よくある質問(Q&A)

Q1. 大殿筋は外転筋?内転筋?
A. どちらにも働き得ます上方筋束(ITB移行)は外転寄り下方筋束(大腿骨付着)は内転寄り。いずれも主作用は伸展・外旋です。

Q2. 歩行では殿筋はほとんど使わない?
A. レベル歩行では求心性は小さめですが、遠心性荷重応答の制動骨盤安定に働きます。スピード・坂・荷重で活動は大きく増えます。

Q3. スクワットで殿筋に効かせるコツは?
A. ヒップヒンジを優先し、やや広めの足幅深めの可動域脛は過度に前へ出さない。必要に応じて前傾を少し入れると股関節伸展モーメントが増えます。

Q4. ITBの張りと膝外側痛は大殿筋が原因?
A. 大殿筋とTFLの張力バランスが崩れるとITB張力が上がり症状に関与。殿筋の機能最適化+TFL過活性の抑制が有効です。

Q5. 伸張短縮サイクル(SSC)は殿筋でも起こる?
A. はい。遊脚終期~荷重応答遠心→求心の切り替えが起こります。高強度課題ほどSSCの寄与が大きいです。


最終更新:2025-10-02