失語症の分類と障害部位による症状のまとめ

失語症の分類と症状を図や表を用いてわかりやすくまとめています。

脳葉のエリアと役割

大脳皮質|前頭葉、頭頂葉、後頭葉、側頭葉|ウェルニッケ野|ブローカ野

前頭葉

前頭葉には、運動中枢の一次運動野と言語中枢のひとつであるブローカ野が存在しています。

また、前頭前野と呼ばれる最も高度な知的活動(思考・判断・計画立案など)を支配する領域があります。

側頭葉

側頭葉には、聴覚中枢である一次聴覚野と言語中枢のひとつであるウェルニッケ野が存在しています。

さらに内側には海馬(記憶)や扁桃体(情動)などがあります。

頭頂葉

頭頂葉には、感覚中枢である一次感覚野が存在しています。また、角回(読み書きに関与)や縁上回(一部の失語症に関与)があります。

後頭葉

後頭葉には、視覚中枢である一次視覚野が存在しています。

失語症のタイプを鑑別する

失語症の分類に関しては、リヒトハイムとウェルニッケの失語モデルの図が有名であり、とても理解しやすいです。

リヒトハイムとウェルニッケの失語モデル

会話の流れとして考えていくと、まずは相手の言葉を耳で聞き(聴覚入力)、ウェルニッケ中枢で言葉の意味を理解します。

次に概念中枢を経由してブローカ中枢に送られ(一部は直接伝達)、応答するための言葉をまとめます。

脳の図をみていただくとわかりやすいですが、一次聴覚野とウェルニッケ野は隣接しており、入力された言葉は最初に理解が必要になります。

そこから前頭前野といった思考を司る部分(概念中枢)にいき、最終的に言葉としてブローカ野でまとめられています。

タイプ別の障害像をまとめた表

  発語 復唱 理解
ブローカ失語 非流暢 不良 良好
ウェルニッケ失語 流暢 不良 不良
伝導失語 流暢 不良 良好
超皮質性感覚失語 流暢 良好 不良
超皮質性運動失語 非流暢 良好 良好
混合型超皮質性失語 非流暢 良好 不良
全失語 非流暢 不良 不良
健忘失語 流暢 良好 良好

ウェルニッケ中枢が障害されると、言葉の意味が理解できないために、発言している内容が意味不明なものとなってしまいます。

ブローカ中枢が障害されると、応答するための言葉をまとめることができないため、復唱や言葉の流暢さが障害されます。

超皮質性運動失語では、概念中枢からの指令が途絶えるので、まとめた思考結果を言葉に変換することができなくなります。

概念中枢は別名で意味中枢とも呼ばれており、意味を理解してまとめる役割があります。

そのため、概念中枢が障害されても意味の理解を必要としない復唱などは障害されません。

全失語は大脳が広範囲に障害された場合に起こることが多いため、身体状態としても非常に重度な場合が多いです。

健忘失語は症状が非常に軽い失語であり、その大半は喚語障害(物の名前が出てこない)や迂言(まわりくどい言い回し)になります。


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The Author

中尾 浩之

中尾 浩之

1986年生まれの長崎県出身及び在住。理学療法士でブロガー。現在は整形外科クリニックで働いています。詳細はコチラ
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